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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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相実


 相実の街へとやって来たディルは、自分が滞在していた相良の街との違いに驚いていた。

 けれどそれは期待外れというよりは、想像以上だという良い方の驚きだ。


 ――良く言えば自然に溢れナチュラルヒーリングが期待できるような場所、悪く言えば自然しかない田舎町。


 なんでも物事を良い方向に考えるディルからすると、この街の捉え方は前者の方に近い。


 どこか自分が長いこと暮らしてきたトカ村を彷彿とさせる風景。

 広がっているのは麦畑ではなく水田だったが、のどかで緑の多い光景を見て、少しだけ懐かしい気分になる。


(おっと、そんなことを考えてる場合じゃなかったか)


 ディルはとりあえず相実の街で過ごせる宿を探すことにした。

 ちなみにソラル達とは既に別れている。


 彼らはどうやらキャンプ道具を持ってきていたらしく、街に入る最中に見たいくつかのパーティーのように、泊まり込みでグリフォンを狙いに行くらしい。


 どうやら似た考えの者もいるようで、ちらと見ると張られているテントの数は通ってきた時よりも多くなっていた。


 ディルはそこまでするつもりはなかった。


 そんな風に無理をして身体を壊しては元も子もないし、夜目が利かない自分が松明やかがり火だけを頼りにしてグリフォンを倒せるとは、到底思えなかったからだ。


 基本的に魔物はほとんど睡眠がいらず一昼夜活動することが可能だ。

 だが人間はそうではないし、特に老い先短い老人は言わずもがな。


 ディルは急いては事をし損じると、老人らしく焦らずゆっくりと宿を探すことにした。



「ふわあぁ……なんだか肩が痛い気がする」


 ヤポンに来て慣れないことはいくつもあるが、ディルとして一番大きいと思っているのは寝具の違いである。

 ジガ王国ではベッドで眠るスタイルが基本だが、ヤポンで主流の寝具は布団である。

 ヤポンは大陸の国と比べれば領土がかなり狭い。

 その分空間を有効活用しようとして生まれたものなのだろう。


 別に寝苦しいわけではないのだが、やはりベッドよりもクッション性に乏しいためか身体がバキバキになっていた。


「ちょっとおじいちゃん、もう歳なんだからあんまり無理しちゃダメだよ」


 肩をぐりぐりと回しながら階段を下りると、恰幅のいい宿屋のおばちゃんが声をかけてくれる。

 渡されるのはおにぎり――ヤポンの主食である米を握った携行食だ。


「朝飯に持っていきな」

「ほほっ、ありがとの」


 ディルは葉で巻かれたおにぎりを背嚢に入れると歩き出す。

 その背中に声がかかった。

 じいさんはいったい、何をしに来たんだいと。


 女将さんからすれば、ディルがいったい何をしにきたのかわかっていないらしい。

 いや、もしかしたら考えこそ浮かんだものの、そんなはずはないとそれを打ち消したのかもしれない。


 くるりと振り返りながらディルは言う。


「狩りに来たんじゃよ……グリフォンを」


 ほっほっほっと笑うおじいちゃんは、あんぐりと口を開けるおかみに手を振りながら、宿を後にするのだった――。



 街を出て、朝日を浴びながらとりあえず歩いていく。

 自分と同様しっかりと宿を取って休んでいる者も多いらしく、近場にも遠くにもたくさんの人影が見えた。


 餌代わりに肉を置いてみたり、グリフォンが気付くように空に魔法を打ち出したり、皆色々なアプローチでグリフォンを呼び出そうと必死になっていた。


 ディルはそんなんでいいんじゃろうか、と少しあきれ顔をする。

 魔物をおびきよせるということは、近くにある相実の街を危険にさらすということだ。

 街を見ていた感じ、衛兵の数も乏しく、領主兵などもいない。

 もしグリフォンが街に入ってしまえば、ひとたまりもないだろう。


 危険を呼び寄せるようなことをしている者達を見て、眉をしかめていると――。


「我々の目的は害獣駆除であって、街を危険に晒してまで魔物を討伐することではないはずです、困ったものですよね」

「よっ、おじいちゃん、また会ったね」


 ディルは行きの馬車で一緒だったソラルとリンダと再会したのだった――。


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― 新着の感想 ―
[一言] トカ村で思い出したが、その後、ディルはマリルに仕送りをしているのだろうか。
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