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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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昇級


 昇級バトル――というのは、ヤポンの冒険者ギルドに特有のルールだった。

 これは簡単に言えば、一気に等級を上げるために行われる実力試験だ。


 本来であれば誰もがと級から始め、看板に貼り出されている依頼を達成していくことでギルドに貢献を行い、上げていかなければならない。


 けれど魔物の被害も多く、国同士で戦争が行われることが日常茶飯事であるヤポンにおいてもっとも必要なものとは腕っ節。

 強い力を持つ人間を遊ばせておく余裕などはないと、実力さえあれば上の等級から冒険者ライフを始めることができる制度が生まれた。


 それこそが昇級バトル――本来始めるところよりも高い等級の冒険者と戦うことで、己の実力をギルドに見せることのできる戦いだ。


 この制度は、例えば政争に負けて別の国へとやってくることになった流れのサムライのような、理由を持つ力ある者が、冒険者としての有意義なセカンドライフを一足飛びで送るためのものである。


 故に相良支部の受付嬢であるイナミは言葉を失っていた。


(こ、こんな……おじいちゃんが昇級バトルを!? たしかに冒険者は実力主義の死に損っていうルールだけど……無理に命を散らす必要なんてないのに!)


 イナミから見たディルは、たしかに一般的な六十と比べれば矍鑠かくしゃくとしているように見える。

 けれどそれはあくまでも、同年代と比べればという話。


 今のギルドの中にいるような、冒険者で一番層の厚い二十代後半~三十代前半の者達と比べれば、やはり色々と物足りないのは否めない。


 だが冒険者の期待に応えるのがギルド職員としての定め。


 イナミはディルに言われるがまま、昇級バトルの準備を進めることにした。





 ディルは受付嬢のイナミに案内されるがまま、ギルドの近くにある練習場へとやってきていた。

 どうやら冒険者達の入場が許可されている場所らしく、既に中には魔法の練習をしていたり、模擬戦をしたりしている者達の姿が散見された。


 ディル達が入ってくるとその足音に気付いた何人かが視線を向けてくる。

 そして皆が一様に、思わず持っている得物を取り落としそうになっていた。


 ――入ってきた男が、おじいちゃんだったからだ。



「あぁん、お前がバトル希望のと級冒険者かぁ!?」

「いかにも、冒険者見習いのディルです、どうぞよろしく」


 だが練習場に既にやってきていた大柄な男だけは、ディルの姿を見ても驚いてはいなかった。

 どうやら彼が、ディルの戦いの相手らしい。


「聞いてた通り本当に爺さんじゃねぇか! いいのか、俺ぁ手加減なんてこたぁできねぇ不器用な男だぜ!」


 ディルのことを見据えて腕を組んでいるのは、筋骨隆々の大男だった。

 鎧に身を包んでおり、腰には片手剣を提げている。

 髪を長くして流しているのが少し変わって見えるが、それ以外は一般的な冒険者というルックスだ。


「俺はに級冒険者のドウモト! 一見しただけじゃあとても強そうには見えねぇが……いざ尋常に勝負!」


 ドウモトが剣を構える。

 それに合わせて、ディルも腰に提げている黄泉還し(トータルリコール)を鞘から抜きだした。


「それでは昇級バトル――開始ッ!」


 いつの間にかレフェリーになっていたイナミの号令によって、試合が始まる。

 遠巻きにしている冒険者達が、自分に注意を向けているのがわかった。


 冒険者として舐められぬよう、ディルとしても自分の力を見られることに抵抗はない。

 そもそもディルの力は、見られたからどうこうなるようなものでもないのだから。


 ドウモトの斬撃をひらりとかわし、ディルは回転しながら黄泉還しを突き出す。

 交差は一瞬、そしてその結果は――。


「勝負、ありじゃ」

「ぐぅっ……ま、参った!」

「――勝者、ディル!」


 ディルの圧勝で終わった。


 残念なことに既に冒険者としての等級を上げることで頭がいっぱいいっぱいになっていたディルには、イナリの言葉は、頭から抜け落ちてしまっていたのだった……。


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