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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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到着


 ヤポンはいくつかの地域に分かれた島国である。

 まず本州と呼ばれる最も大きな地域があり、そこにくっつくような形で八州と六国が存在している。


 本州では常に戦乱の只中にあり、六国と八州の間には厳しい交通規制がなされている。

 また戦国時代と称され、常にどこかで争いが起きているこのヤポンでは、六国も八州も中々に人の出入りについては敏感である。


 そのため通常は本州に暮らす人間は本州、六国に暮らす者は六国と、基本的に生まれ故郷から離れないのがヤポン人の基本的な生き方である。


 人別帳と呼ばれる、ジガにおける戸籍のようなものがあるため、基本的に余所にいかない限りは農民なりなんなりをして、最低限暮らしていくことができる。


 わざわざ危険を冒してまで別の地域に行こうとする者は多くないのだ。

 そんなことをするのは商人か……それこそ何か、強い目的意識を持って行動する者達だけである。







「ふぅ、なんとかなってよかったのぅ」

「全然なんとかなってない! 問題を起こすなと言った矢先にこれか、クソジジイ!」


 出鳥島を無事に抜け出してほっこりしているディルの頭を、イナリがポカリと叩く。

 彼女は怒り心頭の様子で、たんこぶができて「あいたた……」と頭を押さえているディルをキツく睨んでいた。


 ディル達はなんとか、ヤポンに密航することに成功していた。

 実のところ、密航自体はそこまで難しいことではないのだ。


 ヤポンもジガも両国の交友を切らさぬよう、最低限の心配りをしている。


 出鳥島による限定的な交易でも利益が出るのだから、更に規模を大きくすればもっと巨額の利益を得ることができる。


 そのためなら法を多少犯すくらいのリスクは許容する、という無鉄砲な奴らが、案外沢山いるのだ。


 定期的にしょっ引かれることはあるというのに、港に近いところにいるギャング達が消えることはない。

 どこかのグループが潰されても、また新たなグループが起きては、この密航や密輸を始めとする、非合法な輸送を請け負ってくれる者達が途切れることはないのである。


 ディル達はその中でもまだましな業者を選んだ。

 法外な値段を吹っかけこそするものの、仕事は誠実にこなすという者達を(非合法な仕事なので、それを誠実と言っていいかは微妙なところではある)。


 密輸したと嘯いて金品を強奪して海に投げ出すような悪徳業者もいるらしいので、そこらへんはイナリの諜報能力に頼りしっかりと選んでもらった。


 道中に何かトラブルに見舞われるようなこともなく、ディル達は無事に出鳥島に辿り着くことができた。

 ……そう、やってくるところまでは、大過なく終えることができていたのだ。


 問題が起きた、というかディルが起こしにいったのは、無事出鳥島へ入り次は八州へ続く荷の中に紛れ込もうというタイミングだった。


 既に手はずは整ってはいたが、なにも荷から荷へとすぐに飛び移れるわけではない。


 業者の息のかかっている役人の数は多くはない。

 そして荷の中身を見逃してもらえるタイミングというのは、彼らが検査を行う時間帯でなければならないため、どうしても限られている。


 その人物が担当をしており、かつ暗黙の了解で表面上の検査だけをしてくれる荷は、既に指定がなされている。

 そこに乗り込まなければならないため、待ち時間が発生するのだ。


 ディル達はその待ち時間の最中、絶対に出ないようにと言われた物置小屋の中に入れられていた。


 彼らが女性の悲鳴を聞いたのは、小屋へ入ってからしばらくしてすることもなくなり、外から聞こえてくる音に耳をそばだてていた時のことだった。


 ディルは制止しようとするイナリの言うことを聞かず、外出の禁を破って外へ抜け出し、その声の元へと辿り着いた。


 そこにいた女性を襲おうとしている暴漢がいたので、『見切り』を使って気絶させ。


 何をやっているんだとイナリにぶん殴られ。

 ディルが気絶させた人物が、実はこの出鳥島においては名の通った豪商だったせいで出鳥島が上へ下への大騒ぎとなり。


 本来の出航予定よりも二日ほど遅れる形で、なんとかして八州へと辿り着いたのだ。

 だが八州へ辿り着いたときには、予定していた荷は既に出荷されてしまっていた。


 ディル達は八州へ辿り着くことができたものの、六国へ向かうための伝手がなくなってしまった。

 既に案内人もいないため、次にこちらに帰ってくるのを待つか、もしくは自分達で陸路なり海路なりを使い、六国を目指さなくてはならない。


「でもとりあえずはヤポンに入れたんじゃから、ええじゃろ」


 と安穏としているディルに、イナリは怒り心頭だった。


 けれどディルに怒ったところで意味はないことは、彼女だってわかっている。

 そんなことをするのなら、他に六国行きの船を探した方がよっぽど建設的だ。


 ふんっ、と鼻から勢いよく息を吐き出し。

 イナリは歩き出す。

 ディルはちょっと肩を縮こまらせながら、その後をそーっとついていくのだった――。


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