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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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作戦会議 2


 この場にいるパーティーのうちの一つ、『偽りの翼(ラストウィング)』のリーダーのマリウスが手を上げる。


「質問、いいか?」

「構わない」

「そもそも新種の魔物についての情報が、どうしてそれほど出揃っている? その部分が、俺にはどうも納得がいかない」

「あ、私もそれおかしいとだと思った。ルビーアントなんて聞いたことないのに、そこまで詳細なことわかってるだなんてさ。何か隠してることがあるなら言いなさいよ」


 『流浪姫』のエルザがそれに続く。

 ガイウスは一つ頷き、メンバーの一人を部屋の外へと出す。

 その様子を見た『翡翠の眼』のグリードは、不思議そうな顔をする。

 彼は隣にいるエルザの疑問を解消するためか、おそるおそる手を上げる。


 ちなみに積極的に攻勢をかけているせいか、グリードとエルザの距離はディルと飲んだ時よりも少しだけ近付いていた。


「情報は確証のあるものなんだろ? こと戦闘に関して、お前が適当なことを言うとは思っていない」

「無論ある。とある人間が、こいつの情報を持っていたからな」

「とある人間、っていうのは――」

「ガイウス様、連れて参りました」

「こいつだ」


 息せき切って入ってきたメンバーに下がれとだけ伝えて、ガイウスはその後ろにいる人物に声をかける。


「お前らも名前くらいは聞いたことがあるだろう。コイツの名前は」

「おおっと、待ってもらっていいかな。こういうのは自分で名乗らなくちゃ」


 入ってきたのは一人の女性だった。

 彼女は露出が高く、まともな防御力など持っていなさそうなドレスを身に纏っている。

 その見目麗しさがなければ、場末の娼婦と言っても通るような格好だ。

 とても冒険者ギルドに入ってくるに相応しい人間とは思えない。


 ほとんどの人間が、一体こいつは誰なんだとガイウスのことを訝しげな目つきで見つめる。 だがその正体を知っている一部の人間たちの反応はまったく違った。

 驚いていたり、苦笑していたり、しかめっつらをしていたり……その反応はさまざまだ。


「私の名前はバグラチオン、巷では『運命の賢者』などと呼ばれているよ」

「バッ、バグラチオン!?」


 『流浪姫』のメンバーの一人、カイネが声を上げる。

 その叫び声を聞き他の人間は声を出さずに済んだが、彼らの内心も今の彼女と似たようなものだった。


 ジガ王国に住む者であれば、賢者バグラチオンの名を知らぬ者はいない。

 その人物が本物だという確証はなかったが、彼女の隣にはガイウスがいる。

 身元保証人として彼がいることで、それが嘘だと疑うような者はいなかった。


 一人の人間――『無銘ネームレス』のウェンディが手を上げる。

 ガイウスが発言許可を出す前に、彼女は口を開いていた。


「師匠、いいんですかそれで」

「ん、何がだい?」

「師匠は俗世のことに関わることはしたくないと、前に――」

「うん、今もそれは変わらない。だから私がするのは、情報提供だけ。この髪の毛の一本たりとて、誰かに貸し渡したりはしないとも」


 皆が更なる疑問を覚える。

 賢者と呼ばれているだけあって、バグラチオンは数多くの逸話を残している。

 彼女の戦闘能力は未知数だが、もし手伝ってくれるのなら防衛作戦の成功率はグッと上がるだろう。


「バグラチオン……様は、今作戦に――」

「それは無理だ。さっき不肖の弟子が言っていた通り、私はあまり俗世のことに干渉したくない。正確に言えばできない、と言った方が正しいんだけれど」


 何人かが尋ねても、バグラチオンはまともに応えようとはしなかった。

 ガイウスが止めることで、この場は収まる。

 彼がバグラチオンに、首をクッと前に出す。


「説明してやれ」

「やれやれ……昔のように、私のことをお姉ちゃんと呼んでくれてもいいんだよ?」

「お前が説明をしたら考えてやる、この色ボケ賢者」

「まったく、君って奴は……」


 バグラチオンはルビーアントの巣の規模やソルジャールビーアントの個体数、行動パターンなどについて述べていく。


「基本的にはアント系の魔物と同じでテリトリーを作って外から侵入してきたやつらを迎撃する行動ルーチンを持っているね。ソルジャールビーアントはマザールビーアントの命令に従うけど、知能はそれほど高くない。ただ問題は、マザールビーアントだね。こいつは結構オツムがいいから、放っておくと何をするかわからない」

「何を、とは……?」

「今入っているのがダンジョンだからね。魔物がいくらでも湧いてくる場所だとわかれば、兵達を増やすために、機能を壊してまで階層を貫通するのを止めるかもしれない。下手をしたら、ダンジョンの魔物たちを君達にけしかけてくるようなこともしてくるかもしれない。それこそ人為的……いや蟻為的にモンスター部屋を作ったりね」


 もしそんなことをされれば、悪夢である。

 サガン防衛組には優秀な冒険者が多いとはいえ、さすがに蟻とダンジョンの魔物という二つの勢力と削り合うのは分が悪い。

 皆がどうすれば戦闘を避けられるかと考え、即座に優秀な斥候による偵察を思いつく。

 バグラチオンは皆がその考えにたどり着くのを待ってから、続けた。


「ルビーアントの数は一万を優に超えている。これらとまともにぶつかっていては、いたずらに消耗するだけだ。それにマザールビーアントは産卵で数を増やせる。なので最優先でこいつを狙う。頭を潰せばこれ以上数が増えるのを防げるし、そもそもダンジョンを掘り進めることすらかなり難しくなる。だからそのために……ガイウス」

「ああ、そこから先はさっき言った通りだ。その上で今作戦は、チームを二つに分けさせてもらう。一つは出てくる蟻を潰し、積極的防衛に出るグループ。こちらはこれ以上ダンジョンを破壊されぬよう、蟻達を引き止める役目と言っていい。だが対症療法だけでは、根治には至らない。だからこそ二つ目のチームが――」

「マザールビーアントの発見と討伐を行う、ということじゃね」

「ああ、その通りだ……ディル」


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