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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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作戦会議 1


 冒険者ギルド、サガン支部。

 迷宮にほど近いところにある質実剛健な建物のその二階。

 会議室の一室を貸し切って、何十人という人間が顔を合わせていた。


「ではあの魔物――ルビーアントについての作戦会議を始める」


 備え付けられた椅子に腰掛けている者達がほとんどの中、一人だけ腕を組んで立っている男がいる。

 彼――ガイウスは恫喝するように、周囲を睥睨した。


「まずは俺の説明を聞け。質疑応答の時間は後で設ける」


 彼の視線の先に居るのは、今回の作戦会議に呼び出された冒険者の面々だ。

 まず一番下座に居るのは、それほど冒険者としてのランクは高くなくとも一芸に秀でた者。 そしてその次に掛けているのは、パーティーとしては微妙だが個人としての戦闘能力を見込まれてここへ呼び出された者達。


 彼らと少し間を空けて――まるで格の違いを示すかのように――六つのパーティーが、フルメンバーで会議室の一画に集まっている。

 『赤皇帝』・『偽りの翼』・『翡翠の眼』・『流浪姫』・『黒の雷』、そして――『無銘ネームレス


 彼らは下層、更に言えばその中でも半分より下である深層を主な探索先としている、魔物討伐のプロフェッショナル達だ。

 その中で最も名実共に優れているガイウスがこの場を取り仕切ることに文句をつける人間は、少なくともサガンの迷宮で飯を食っている人間達の中にはいなかった。


「今回、サガン迷宮においてスタンピードが発生した。その原因は、アント系の変異種であるルビーアントによるものだと判明している。恐らくは彼らの女王であるマザールビーアントが変異したせいで、そこから生まれた魔物全てが変異種になっているという状態だと考えられる」


 彼ら六つのパーティーを少し離れた場所から、ギルド職員の一人の女性がメモを取っている。

 その人物は――シアであった。

 既に事務処理の仕事で認められた彼女は、今回の突発的に起こったスタンピード、そしてその対策について説明がなされる今会議での速記を行っているのだ。

 彼女の手元では、みみずがのたくったかのような速記用の文字がどんどんと記されていく。


「スタンピードが発生した理由も既に解明済みだ。簡潔に言えば――このマザールビーアントは、魔力の籠もった物質を食えるせいだ。そのため強力な魔力のバリアを持つはずの迷宮を、外からやって来たこいつが食い破った。そのせいでダンジョンの各種機能は麻痺し始めている」

「具体的に言えば既に第三十階層ではモンスターのリポップが発生しなくなり、迷宮による自己修復機能も壊れてしまっている。このままではそう遠くないうちに、迷宮が下の階層から順に機能不全に陥っていくでしょう」


 ガイウスと彼の率いるパーティーメンバーであるアビゲイルの説明に、誰もが息を呑んだ。

 サガンで暮らす冒険者たちは、迷宮というものは絶対だとどこかで信じていた。

 迷宮それ自体を神聖視しており、まさかその神聖な領域が何者かに冒されるなどとは考えてもいなかったのだ。


 だが魔物は、人間の事情になど頓着しない。

 ただ生存本能と自己増殖欲求に従い、食らい、そして個体数を増やす。


「説明は以上だ、対策については後述する。何か質問がある者は言え」

「いいか?」

「構わん」


 手を上げたのは、『黒の雷』のリーダーであるコルネリウスだった。

 既にその顔からは、ディルたちが下層探索者になることに危機感を感じ、焦っていた若さ特有の逸りはなりを潜めていた。

 彼も一度パーティーメンバーが死にかけてからは、自重や忍耐というものを覚えるようになったのだ。

 それを若さ故の無謀さがなくなったと捉えるかどうかは、人によるだろう。


「マザールビーアントを討伐すること自体は構わない。これを放置し続ければ迷宮の魔物を食らいつくし、迷宮を壊し、ルビーアントたちが街にまで湧き出てくるだろうからな」

「だな、それで?」

「街の人達の避難についてはどうなっている? サガンに隠れるような場所はないぞ、隣街にでも逃がすのか?」

「いや、臨時のシェルターを作る。街の皆にはしばらくの間、籠城してもらうつもりだ」


 本当なら今後このサガンの迷宮がどうなるのか、もしくは自分たちに課される依頼の内容がどんなものなのか。

 冒険者として生きてきた人間なら、それを気にするのが普通だ。

 けれどコルネリウスは自分たちの身の安全より先に、街の人間の身を案じた。


 自分たちなら死なないという自信があるおかげで、他の人達のことを気遣うこともできる。

 彼もまた、迷宮行の中で成長しているのだ。


「だがそのアント達は魔力を、その、食べるのだろう? 土魔法で即席の壁を作っても、破られそうだが」

「そこは問題ない。ルビーアント達には、魔力を食う特性はない。それがあるのはあくまで、母体であるマザールビーアントと、その配下であるソルジャールビーアントだけだ」


 一応ソルジャールビーアントだけでも掘削自体は可能らしいが、ある程度時間が必要になるらしい。

 今のところ掘削作業はソルジャールビーアントが、そして魔力による障壁を貫通するのがマザールビーアントという役割分担になっているらしい。

 その言葉を聞き、コルネリウスは自分たちが何をするかを理解する。


「つまりは階層を貫通させに来たマザールビーアントを殺せば、これ以上の被害は防げるわけだな」

「その通りだ。俺たち精鋭が集められた理由は、階層間の掘削を進めに来たマザールビーアントの発見、そして討伐になる」


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