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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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吹っ飛ぶ



 オークション開催当日。

 ディルたちは出品する品が出てくる時間を抑え、あとは各々で自由行動を取ることになった。

 相変わらず着慣れないスーツを身に纏いながら、彼は少し息苦しさを感じていた。


「ふぅむ、ほぉん、へぇ……」


 今、ディルはサーカスの見世物になったライオンの気分を味わっている。

 じっくりとねっとりと、絡みつくような視線。

 目の前に居る人物は、まるで動物を見るようにディルのことを見つめている。


「そんなに見つめんでくれんかの、照れるでな」

「おっとすまない、つい知的好奇心と性的な欲求がね」

「……」


 ディルは言われたことの意味がわからず、目をぱちくりとさせている。

 事前に弟子であるウェンディから話を聞いていなければ、完全に頭が真っ白になってしまっていたことだろう。


 彼の前に居るのは、ウェンディの師匠である賢者バグラチオン。

 一見すると二十代後半くらいの歳にしか見えないが、実年齢はディルよりも高いのだという。


 魔法を極めると、年齢など超越できてしまうらしい。

 ディルも歳から考えると若いと最近言われるようになったが、比べるのもおこがましい。



「持っているスキルは『見切り』……ふむふむ、なるほどねぇ」

「バグラチオン……さんはこの力のことを、ご存じで?」

「もちろん、この私が知らないことは全世界の――3%くらいなものさ。それと呼び捨てでいいよ、さん付けする時間を、もっと別のことに使いたいからね」


 ほとんど全てを知っていることを褒めるべきか。

 賢者でも未だ知らないことがたくさんあるのだなと驚くべきか。


 ディルの意識は、自分が持っているスキルについて、誰かに初めて言及されたことに向いていた。

 通常、他人が持っているスキルを尋ねるのはマナー違反とされている。

 そのため誰がどんなスキルを持っているのかを、自己開示されない限りは知ることができない。

 主に威圧や牽制などを目的として、スキル名は喧伝されることが多い。


 『見切り』は有用なスキルだ。

 かつてはまともに剣を取ったこともないようなディルを、今や歴戦の剣士にも劣らぬ実力者へと引き上げてくれた。

 だがディルは自分以外にこのスキルを持っている人間を、一人も知らなかった。


「バグラチオンは、このスキルを持っている人間を知っとる?」

「もちろんだね、同じスキルを持っている人に会ったことだってある」


 ちなみにその人は、どんな人なんじゃろうか。

 ディルの質問に対し、バグラチオンはなんでもないような顔をして答えた。


「『覇王』フィッツジェラルド……今から三百年ほど前に、世界の三分の一ほどを握っていた男だよ」


 彼女の言葉に、イナリのことを聞こうとしていたディルの思考は吹っ飛んだ。


次回更新は4/25です

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