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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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再び



「ふっ!」


 ディルの振り下ろしが相手の魔物――オークジェネラルの身体を二つに裂く。

 それでも動こうとするオークジェネラルの頭を潰して顔を上げれば、既に戦闘は終わっていた。


 黒騎士の足下にはオークたちの死骸が多数転がっていて、遠くには焼け焦げたりバラバラになっているオークやコボルトたちが見るも無惨な姿となっている。

 ディルも皆に少し遅れて、魔石の回収を行うことにした。




 ここは第二十八階層。

 この階層に出てくる魔物は、人型魔物。

 緑色の小鬼であるゴブリン、犬を二足歩行させて巨大化させたようなコボルト。

 醜悪な豚の頭を持つオーク、赤い鬼のオーガ、トカゲのような見た目をしたリザードマン。 今まで迷宮の中で見てきた人型魔物が一斉に出てくる。


 深層では、魔物が当たり前のように魔法を使ってくる。

 そして魔法を使わない個体は、何か特別な力を持っている。

 腕力が通常より高かったり、防御力やタフさが以上にあったりと、そういった個体は倒すまでに時間がかかる。

 今ではディルたちは、魔法を使ってくれと願うようにすらなっていた。


 中層から下層の序盤の探索では、魔物が使ってくるのはファイアアローやエアカッターのような初級魔法だけだった。

 だが終わりの近付いてきた今では、中級のファイアウォールのような魔法まで使われるようになっている。


 そんな魔物たちと連戦をすることもあるこの階層の難易度は高い。

 まともに深層探索ができるパーティーが五つしかないというのも、頷ける話だった。


 以前ディルたちが深層に入るという情報に焦り、急ぎ深層探索を開始したパーティーがいた。

 ディルたちはことあるごとに目の敵にされたり対抗意識を剥き出しにされるので苦手だったが、別に何かをしたりされたわけでもないので放置していた。


 ディルたちがまだ深層に潜り始めたばかりで、強力な魔法を使う魔物たちとの連戦に慣れずまともにマッピングもできずへとへとになって帰ってきていた頃のことだ。

 そのパーティー『集結の花園』が、深層でメンバーを半数に減らしたことを知った。


 なんでも魔法を使わず強力な剣技を使うゴブリンナイトに、魔法使いたちが斬られてしまったらしい。

 イナリを中衛に回し魔法使いのウェンディを守っている間に対応できるディルたちならばなんとかなるが、彼らにとってそれが致命的だった。

 今では彼らは、中層探索をしながら新たなメンバーを探している最中なのだという。


 人の生き死は迷宮ではよくあることだ。

 しかしディルは、前のように絡まれることがなくなったことで、少しだけ寂しさを感じてもいた。

 人の振り見て我が振り直せと、ディルは焦りながらも頭脳は冷静に、慎重かつ大胆に探索を進めている。


「あいてて、少し切り傷が」


 ディルが頬をなぞると、いくつか赤い筋ができている。

 オークが放ってきた風の中級魔法、ウィンドサイクロンの一撃が避けきれなかったのだ。

 ディルもこの階層に入るようになってからは、手傷を負うようになっていた。

 とりあえず相手の魔法は避けることができても、近付いてくる魔物や間髪入れずに放たれる魔法を相手にすると、さすがに全てを避けることは難しかった。


 ディルはポーションを取り出し、傷口に振りかける。

 容器の三分の一ほどを使うと、傷は綺麗さっぱりなくなった。

 もう少し服用すると、重かった身体が少し軽くなる。

 ポーションは加齢からくる身体の痛みも、やわらげてくれるのだ。


 今ではディルも、ポーションを当たり前に使うようになっていた。

 ポーションは宝箱とは異なり、色々な魔物がランダムで落とす。

 その色も様々なので、狙ったポーションを手に入れることは中々難しい。

 だがそれは、あくまでも一般基準の話。


 ディルたちは怒濤の勢いで迷宮探索を続けているため、ポーションのストックもかなりの量があった。

 おかげで当初とは違い、わざわざ購入せずとも、躊躇なく使うことができるようになっている。

 一応、冒険者にかけられている購入制限ギリギリまでポーションを買わせてもらっている。 転ばぬ先の杖として、そして迷宮探索を終えたあとの活動まで考えた上でのことだ。


 持ちきれないものは、聖教に有料で預かってもらえる貸し倉庫に入れさせてもらっていた。 イナリが対応できるため、解毒ポーションだけは換金してパーティーの皆に平等に分配している。


 ポーションを落とす確率は、魔物が強ければ強いほど高いということがわかっている。

 最初ディルたちは、深層での戦闘ごとに、ポーションを丸々二つほど使わなければならなかった。

 そして平均して得られるポーションは二つないかぐらいで、ひどいときは一つも出ないこともあった。

 そんな具合だったので、最初は完全に足が出てしまっていた。

 ポーションのストックを切らし、たまに他の冒険者から高値で買いまでした。

 しかし今では、ポーションを節約して使い、ストックの数を増やせるようにまでなっていた。

 ディルたちの深層攻略は、順調に進んでいた。

 魔道具もそれほど数は多くはないが、二つほど出土している。

 しかしどちらも、ディルの目的とは違うものだ。


 深層攻略を進めながら、ボス部屋やモン部屋に何度も挑戦しているうちに、ディルたちが魔道具を出品することになったオークションが開催されることになった。


「あ、そういえばそろそろ師匠が会いに来るんですよ。その時に一応、回復魔法を教えてもらうつもりなので」


 そしてタイミングを同じくして、ウェンディの師匠もこのサガンにやってくることになる。

 ディルは自分がかつて購入したスーツを、再度着用することになりそうだった。


次回更新は4/4です

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