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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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宝箱

 剥ぎ取りによって得られる魔物素材や、倒れていった冒険者仲間の武具の入手を除けば、

ダンジョンから産出されるパターンはたった一つ。

 今ディル達の目の前に置かれている、宝箱と呼ばれるものがまさにそれだ。


 ディルはとりあえず、ゆっくりと進み宝箱がよく見えるくらい近くにまで歩いていく。


「これが宝箱なんじゃね」

「好奇心から触れたりするなよ? 毒が塗られていたり、中からガスが噴き出したりするものもある」


 宝箱の処理はイナリに任せようと、一歩引き彼女が手に取るのを眺める。

 じっくりと観察してみると、それはディルが想像している、いわゆる世間一般が予想しているものとは違っていた。


 宝箱とまず言われてイメージするのは、四角いブロックの上に、円柱を半分に割った形のものが置かれており、その二つを蝶番が止めているというものだ。

 だが今目の前にあるのは、ただの石の塊だった。


 苔が生えているような、レンガサイズの石である。

 離れていても、少々かび臭い匂いがしてくる。

 石の縁は金で覆われており、その側面には刺青のような模様が同じく金で描かれている。

 恐らくはあれが、宝箱の開閉を司る古代文字か何かなのだろう。


「ふむ……」


 イナリは何かの魔法を使い注意深く観察してから、宝箱を手に取る。

 そしてそこに、魔力を流し込み始める。


 宝箱は、力任せにこじあけることができない。

 魔力を通すことで、自動で開く仕組みになっているのだ。


 パカリ、と一瞬で宝箱は開いた。

 先ほどまで継ぎ目などなかったはずの石が開き、中身が出てくる。

 そして二つに割れた宝箱はそのまま、さらさらと砂になって消えていく。

 あとにはイナリの手のひらの上にある、中身だけが残った。


「これは……何かの魔道具だろうな」

「そうじゃね」


 現れたのは、水色をしたブレスレットだった。

 意匠は凝っていて、羽根をたたんだ蝶のような見た目をしている。

 色から察するに、水に関連したなんらかの効果があるのだろう。


 イナリは黒騎士へちらと視線を向けると、それを無造作に投げる。

 パシッとナイスキャッチをした彼は、それをしげしげと眺めてから、


『これに呪いはかかっていない』


 と教えてくれる。


 残念ながらメンバーにこの魔道具の効果はわかるものはいない。

 下手に扱って誰かが戦闘不能にでもなってはつまらないので、中では最も重厚な黒騎士に持っていてもらうことにした。

 今回の探索の目的は、第七階層にあるボス部屋の攻略だ。

 皆の肉体的な疲労はそれほどではないが、ここまでやってくることと、ボスとの戦いによって精神は摩耗している。

 ボスとの連戦ができるほどの元気は残っていなかったので、今回はさっさと切り上げてしまおうということになった。


 一体どんな効果があるのだろうかと、おじいちゃんは本来の目的を一旦脇に置きるんるん気分である。

 こういうところを楽しんでいかなければ、これからの長い探索生活を続けることなどできないだろう。


 ディルに釣られてか、他の面子も表情が明るい。

 皆、魔道具につく値段を期待してほくほく顔だった。


 一行がそのまま向かうのは、鑑定士と呼ばれる職人のいる店―――通称鑑定屋だ。

 一体この魔道具にどれくらいの値段がつくのか、本職の人間に見てもらうのである。

次回更新は2/8になります

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