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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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パーティー名

「私としては、ド派手な名前がいいですね。それでいて他と被りがないようなのが理想です」

「抽象的すぎる、具体例を出せ」

比翼アーク連理ディヴィジョンとか蒼月の(ラスティ)(ヴォルフ)とか……」

「ペアじゃなくてパーティーだし、狼って感じじゃないしで、色々とひどいな」


 即座に黒騎士が手持ちのノートに書き付ける。

 スラスラと筆記体で流麗にペンを走らせ、くるりと裏返した。

 『それは派手すぎる』

 たしかに、とディルは心の中で同意する。

 黒騎士と全くの同意見だった。

 ちょっと想像してみる。


 今から一ヶ月後、迷宮下層に入るために仲間を募集する。

 自分からすれば全員年下だ、彼らに説明するときにディルは笑顔を振りまきながらこう言うのだ。


「わしらのパーティー名? |比翼連理《あーくでぃう゛ぃじょん》じゃよ」


 老人はカッコいい横文字にめっぽう弱い。

 まともに呼べないパーティー名というのは、流石にやめて欲しかった。

 賛成1、反対3にて否決である。


「じゃあイナリさんはどういうのがいいと思うんですか?」

「青とか紫でいいだろ、シンプルなのが一番だ」

「流石に攻めすぎでしょうそれも、私の案よりひどい気がしますけど」


 黒騎士は他になければ最悪それでも構わないと消極的な肯定の構えだった。

 ディルは、正直あまり話し合いに参加するつもりはない。

 もし彼に命名権がくれば、恐らく今の若者達には合わない古くさいものになってしまうだろう。

 皆の意見を活性化させるのを、自分の仕事と思うことにした。


「普通はどうやって決めることが多いのかの?」

「そうですねぇ。強い魔物から拝借したり、有名なパーティーにあやかったりすることが多いでしょうか」

「ドラゴンとかグリフォンとかが多いか。あとは……パーティーが使う魔法に合わせて炎とか風とかの属性を入れたり」


 魔物を狩る冒険者パーティーに、魔物の名前をつけるのはどうなのだろうか。

 グリフォンの翼、みたいなパーティーだとグリフォン相手に勝てないような気もしてしまう。

 使う魔法に合わせるなら、ウェンディが得意な火魔法だろうか。

 炎の………ダメじゃ、思いつかん。

 ジジイの想像力は、既に枯れ気味であった。

 考えれば考えるほど、ドツボにはまりそうな予感しかしなかった。


 叙情詩に出てくるような英雄から取ることもあるよ、と黒騎士。

 どうやらウェンディがつけようとしていたのは、英雄の二つ名かららしい。


竜滅騎士ドラグスレイブ! 刹那閃光シェヘラザード!」

「ジジイがいるんだから格好よすぎてもだめだ。世界の誕生日、失われた遺産はどうだ?」

『それは冒険者パーティー名としては壮大過ぎないか? ここは黒の騎士団でどうだろうか』

「黒いのあなただけじゃないですか! 私たちまでそんなわけのわからない集団に混ぜないでください!」


 喧々囂々(けんけんごうごう)と意見が繰り広げられる。

 酒が入っているからか、皆の言葉や態度にも熱が入っているようだ。

 ディルからすると、ぶっちゃけどれでも良くね? というのが正直なところだった。

 別に今までなくても問題はなかったものなのだから、どんな名前だろうと不都合はない気がしている。


冥王降臨ハーデス! 神狼オムニス!」

「ダメだ。歌う船か聖者の行進にしよう」

『黒の軍勢、という選択肢も』


 普段から鬱憤でも溜まっていたのか、それとも酒が入っていて頭が回らないからか……既に建設的な意見が出なくなっており、もはやわけのわからない候補ばかりが乱立しはじめていた。

 このままでは、王立おったまげ学園のような本当に意味不明なパーティー名になってしまうかもしれない。

 既に机の上のジョッキは倒れ、皿は飛び、椅子はひっくり返っている。

 下手をすれば口論から喧嘩に発展しかねないほど一触即発の雰囲気だ。

 どうしてこうなったと頭を抱えながら、ディルはなんとか三人に候補を出させるのを止める。

 まだ話し足りないという様子の彼女達に続きは明日にしようと言い、強引にこの会をお開きにした。

 戦闘の時には連携のことも意識できるのに、どうして私生活ではこうなってしまうんじゃろうか。

 ディルは明日また喧嘩になるだろうなぁと遠い目をして、空に浮かぶ満月を見つめるのだった―――。

次回更新は、3/27です

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― 新着の感想 ―
じじーとゆかいな変態達、で。
[一言] 王立おったまげ学園に一票
[気になる点] >叙情詩に出てくるような英雄 この場合「叙事詩」ではないでしょうか。
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