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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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忘れてた

 第十六階層を抜けてからは、またしばらく順調に進める期間が続いた。

 全身が黒鉄で出来ているアイアンゴーレムも、魔法を遠くから放ってくるゴブリンメイジ達も、ディル達にとってはそれほどの脅威にはならなかった。

 ディルの前衛能力とウェンディの魔法の力があれば、力押しができる相手に遅れを取るようなことはまずない。

 彼ら三人で苦戦をする場合は、正攻法が効かない場合か搦め手を使ってくるような相手、もしくは純粋に戦闘能力が高い相手などに限られている。


 イナリの探査能力が効くようになったことで、三人の迷宮攻略はスムーズにはなった。

 しかし何時また第十六階層のような落とし穴があるかもわからないため、黒騎士とは定期的に迷宮へ潜ることにしていた。

 彼女自身ある程度は中層の攻略も進んでいるので、それほど面倒はかからない。

 三人と四人で戦うときの違いはウェンディが気持ちフレンドリーファイアを気にするかと、イナリが後方と前方を意識するかどうか、ディルの疲れといったまぁ最悪目を瞑れる程度の差異で済むため、ギリギリ許容範囲内という結論に至っていた。


 それに中層では良いとしても中層の最奥である第二十階層にいるボスモンスター、そして所々に待ち構えているらしい隠しボス、エンカウントするモンスターにすら気が抜けなくなってくる迷宮下層のことも考えると、中層くらいから黒騎士との連携をこなれさせておいた方がいい。

 彼(ディルはとりあえず黒騎士を男扱いすることにしていた、イナリ達よりディルの近くにいることの方が多いためである)の同行はディルとしては疲労が溜まるが、今後のことも考えて探索三回に一回程度のペースで一緒にダンジョンへ潜るように心がけていた。


 第十九階層に現れる、オーガの上位種であるレッドオーガを難なく屠り、ホクホクになりながら迷宮を後にした四人は、迷宮探索の後決まって訪れる『アラガヴィ』というバーへとやって来ていた。


 報酬を四等分してから各々が保管場所へ移し、後は酒と飯を腹に入れて好きに寝ていい状態にしてから皆で好きなように騒ぐ。

 ディル達四人の中にそれほど多弁な者はいなかったが、この定期的に開催される親睦会はわりと好評だった。


 いつものように大皿の料理を頼み、適度に腹を満たしてからたわいもない雑談をする。

 今回の探索では誰に負担がかかり過ぎていただとか、次の階層に現れるモンスターの特徴はこうだといった実務的な話から始まり、最終的にはどの冒険者が誰と付き合っているだとか、誰が結婚を機に冒険者稼業を引退するだとかいった世間話に終わるというのがいつもの流れだ。


 また今日もそんな風に聞き役になって終わるじゃろう、そんな風に楽観的に考えていたディルだったが、どうやら今日は風向きが違うらしい。

 ある程度酒が入り顔が赤くなったウェンディが、ドスンと勢いよくジョッキをテーブルに叩きつける。

 入っていた中身が肉料理の下に敷かれていた葉野菜にかかった。

 彼女はもったいないとそれを平らげてから座り直す。


「そろそろ私たちが決めなくちゃいけないものがあると思うんですけど」

「まあ確かに、ないと不便だしな」

「……(コクコクと頷いている)」


 どうやら三人とも、全く同じ意見を持っているようで意気投合している。

 一体、決めなくてはいけないものがあっただろうか?

 頭を悩ますディルを見て、イナリがはぁとわざとらしい大きなため息。


「私たちのパーティー名だよ。そろそろ下層に挑んで名前が売れてくる頃だというのに、名無しのままというのは流石によろしくないだろう?」


 そういえば、そうだった。

 そもそもサガンの迷宮を探索する冒険者達に変な目で見られることが多かったため、ディルは他人の目をあまり気にしないようにしていた。

 そのせいですっぽりと頭から抜け落ちていたが、自分はもう奴隷のイナリと二人でダンジョンに潜っているわけではない。

 黒騎士も正式に加入し、パーティーとしてある程度のまとまりができた今だからこそ決めるべきかもしれない。

 このまま別れるかもしれないからと先延ばしに先延ばしにしているうちに今になってしまっている。

 たしかに決めておいた方がいいのは間違いない。

 さて、どんな名前にするのがいいじゃろうか。

 ディルはまずは言い出しっぺのウェンディの言葉に耳を傾けることにした。

次回更新は3/20になります

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