表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/228

黒騎士

 ディルは今回、イナリとウェンディを置いて一人で冒険者ギルドへとやって来ていた。

 その正式名称は冒険ギルドサガン迷宮支部。

 魔物の素材の買い取りや中から掘り出される鉱石や金品の品定めまで幅広い内容の仕事を受け持ってくれる場所だ。


 ディルがギルドの中へ入ると、あからさまではないものの刺すような視線がいくつか感じ取れた。

 冒険者としてはあまりに高齢なディルは、あまりよくないタイプの名の通り方をしている。

 だがもうサガンに来てからしばらく経っているのでこういった類の視線にも慣れたものだ。 

 ディルはギルドに併設されている酒場で適当に食事を頼みながら、ギルドの受付が見える場所に位置どることにした。

 おじいちゃんは今日一日、張り込みをするつもりなのだ。

 お目当ての人物は恐らく迷宮の中にいる。

 素材を買い取ってもらうためにやってくるだろうと軽い考えで待つことにした。


 ディルが探しているのは『黒騎士』の二つ名で呼ばれることの多い人物だ。

 全身を黒尽くめの鎧で覆い、腰に黒く錆の浮いた剣を提げている奇妙な姿をしている。

 職員も含めて誰もが黒騎士と呼ぶために、彼が男なのか女なのかもわからない。


 黒騎士は基本的に誰とも話をせずに、ソロで活動をしている。

 活動時間は信じられないほどに長く、彼は最低限の水と食事を購入する以外は常に迷宮の中にいるらしいのだ。


 その戦い方は、狂戦士と呼ぶに相応しい物らしい。

 黒騎士に戦術や戦法などというものはなく、ただ奇声をあげながら魔物に突っ込んで戦い続けるのだという。


 兜の間から除く瞳は赤く輝いているため、戦闘中は狂乱バーサクと呼ばれる一種の錯乱状態になっているようだ。


 彼は誰と話をすることもなく、パーティーを組むよう誘われても全て断っているらしい。

 その理由は恐らく、黒騎士が身につけている武具にある。


 彼が着ている鎧、そして普段使いしている刀剣。

 その両方に呪いがかかっているのである。

 ディルが持つ黄泉還りもそうなのだが、呪いのかかった武具にはデメリットがある。

 恐らくは黒騎士の身に纏う鎧か握っている剣のどちらかが、持ち主を狂乱状態にする呪いがかかっているのだろう。


 狂乱状態に陥った人間は、敵味方の区別が付かなくなる。

 近くにいる全ての生き物が敵に見え、なりふり構わず攻撃をし続けてしまうのだ。


 恐らくはパーティーを組んでしまえば、パーティーメンバーにも襲いかかってしまうが故に、誰かと組んではいないのだろう。


 黒騎士が主に活動している階層は中層、つまり戦闘能力はディル達のパーティーと同程度ということだ。

 彼は一人でそれだけの戦闘能力を持つ、稀有な人物なのだ。


 黒騎士が単身魔物の群れに突っ込んで行っても死なずに戦い続けられる理由は、そのタフネスにある。

 彼は疲れを知らず、どれだけ長い時間でも戦い続けることができる。

 身に纏う鎧はあらゆる攻撃を防御し、使う剣はどれだけ酷使しようと刃こぼれ一つしない。

 自分達味方にも襲いかかるという点さえ除けば、黒騎士はディル達が求めているタンクに近い役割を担うことができるだろう。

 狂乱の性質にもよるだろうが、ディルが注意を引けばウェンディ達に危害が及ばないのなら組むことは十分に可能だと考えられる。


 どうやら戦っている最中以外は普通らしいので、まずは一度話でもと思っていたのだが……結局黒騎士は丸一日待ってもギルドに顔を見せることはなかった。


 ギルドの職員から話を聞くと、どうやら彼は長いときは三日ほど迷宮の中に籠もることもあるようだ。

 ディルはその話を聞いてからイナリ達へ話をし、迷宮に入るのをもう少しだけ待ってもらうことにした。


 そしてディルが成果なくとぼとぼと宿へ帰ったその二日後、とうとうお目当ての黒騎士がギルドへとやって来た。


 ウェンディを勧誘した時みたく、上手くいけばいいんじゃけど。


 不安半分、期待半分でディルはそうっと黒騎士への距離を詰めていく。

次回更新は2/6になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ