濃い時間(恋)
沙織さんと食事に行った次の日、
早速俺は山田に内容を聞かれた。
ありのままを話すと、彼は意外にも
「よくできたじゃん!」
と誉めてくれた。
何か、凄いバカにされてるんですけど…
そしてまた次の会う日になった。
いつもの通り図書館に向かうと、
沙織は既にそこにいた。
「こんにちわ!また、すみません…
お待たせしたようで…」
「いいえ…!あ、そうだ。
私達、そろそろタメ口でいきません?
何か堅苦しくて!」
「あははは、そうですね!
じゃあ、お言葉に甘えて。」
彼女は美しく微笑む。
俺も、つられて笑顔になった。
沙織は
「前回は、かずくんに連れてってもらったから、
今日は私が連れてくね!」
と言って、前回のイタリアンとは
反対方向の中華料理屋に入った。
「中国では、ほんっとに
美味しい料理を食べたんだ!」
あれ、この話、どこかで…
あの時、俺は…。
「かずくん???」
マズい、いつもより酔いが廻ってる気がする。
普段あまり飲まない、
紹興酒を飲んだせいだろうか。
記憶が曖昧だ。
「かずくんってば!!」
「ごめんごめん…!!いつもより酔いが早くて」
「ったくもう。!
それでね、中国にはもっと珍しい料理があるの!」
そうだ。彼女は高校卒業したあと、中国に留学
していたときの話をしてくれていたのだった。
「今度、教えてあげるね!」
そう言って彼女は、話を終えた。
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
そして俺は、今まで考えてたことを
口にした。
「沙織ってさ、前に俺と会ったことある?」
「…え…?ううん。全くあなたのことは知らないよ。」
「そっか…何かずっと前から知っていたような、
そんな感じがするんだ…!」
俺は自分で言って、ああダメだ。と思う。
こんなんじゃ、俺のものにできない、と。
それでも俺は酔った勢いで言ってしまう。
「俺、沙織のことが好きだ。だから、沙織も
俺のこと好きでいてくれると嬉しい。」
彼女の顔がみるみるうちに、涙で歪んでいく。
…ん?…
彼女の顔が、涙で歪んでいく。
そして、彼女は言う。
「その言葉を待っていたんだ。私も好きでした。」
と。
俺は、周りに落ちている石ころの中に偶然に
ダイヤモンドを見つけたような、
激しい喜びを感じた。
「っもう。!涙でせっかくのメイクが~!!」
そう沙織は、泣き笑いで言う。
俺もつられて、笑う。
「じゃあ、続きは店の外で!」
と、俺はちゃかしながら二人で笑いあった。
お腹も心も満ち足りながら。
この時間が永遠に続くことを願いながら。