出会い
受け取った貸し出しカードは、まだ新しかった。
そのカードには「横峯沙織」と書いてある。
前に立つ長身で黒髪美人女性に俺は、どうも一目惚れしてしまったようである。
あまりにも美しくてついボーッと見とれていると、
怪訝そうな顔をしたので、俺は急いで本のバーコードを読み取った。
「貸し出し期限は、2週間後の7月15日までです。はい、どうぞ。」
俺は本を渡し、そう言った。
彼女は、笑みを浮かべて「ありがとうございます。」と言って、図書館から出ていった。
出ていく後ろ姿も、まるで絵に描いたような美しさなのである。
「へー!かずっちが一目惚れかー!やるなぁ!」
「だから、一目惚れじゃないって!!」
俺は仕事終わりに、同僚の山田を飲みに誘った。
山田は少しチャラいが根は真面目な奴なので、結構モテたりする。根暗な俺とは正反対である。
だから、俺はこいつに相談したのだ。
「じゃあなんだ??え?」
「何って言うかー、ただただ、美しいって思ってた。」
「それが、一目惚れの恋の始まりなんだってさ!
これだから、君はモテないんだよ!」
山田は妙なテンションで叫んだ。
「まぁ、確かにそうだけど。でも、俺にはあんな人もったいないよ…」
「だから、ダメなんだって。いいか?気持ちを強くもて!男なら自分のものにしたいだろ?だから、ナンパしちゃえよ!笑」
そう言われるとほんとに好きになってしまいそうだった。実際、もうすでに好きになったのかもしれないけど…。
だから、俺は腹をくくった。もうやけくそだ。
グラスに残っていた、焼酎を飲み干し、俺は叫んだ。
「俺は今度、ナンパする!!そして、彼女は俺のものだぁぁあああ!」
周りの客からも、拍手が来た。もちろん山田も大喜びだ。
「よし、それでこそ漢だ!漢ならあたって砕けろだ!今日はうんと飲むぞ!!」
そう言って、俺達は浴びるほど飲んでいったのである。