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GiFT*ガキのままの俺に届いた贈り物*  作者: 田村優覬
*エピローグ*
29/29

*And @ happy new year.*

――私たちは、忘れてはいけない。


 子どもたちにプレゼントを届ける、サンタクロースの存在を――。


――私たちは、覚えておかなければいけない。


 サンタクロースには、大人になれた今でも会えるかも、と――。




――私たちは、知らなければいけない。


 サンタクロースのソリを引く、トナカイたちの頭数と名前を――。



――私たちは、認知しなければいけない。


 トナカイたちも、晴れぬ闇を抱えていたことを――。




――私たちは、忘却してはいけない。


 クリスマスによく窺える、ひいらぎを飾る意味を――。



――私たちは、記憶に留めなければいけない。


 永年に渡って口ずさまれた、数々のクリスマスソングを――。




――私たちは、身を以て知る必要がある。


 同じ屋根の下で過ごす家族との、確かな愛を――。



――そして私たちは、認知する必要がある。


 存在しなかったはずの、i(アイ)の正体を。



 それは、茨城県笹浦市に住まう一家――園越家の表札が全ての答えだ。

 


 園越家


 岳斗がくと


 宙舞いぶ


 風真ふうま


 常海とこみ



 それぞれの頭文字をアルファベットに変換すれば、おのずと“GIFT”となる。



 しかし、それは“GIFT”であって、“GiFT”ではない。



 なぜなら、一人はこの世界に生きていない。遠く離れた天の世界で、園越家を見守りながら過ごしている。


 そんな彼女は、この世界でいえば不確かな存在なのだろう。

 英語でいえば、“imaginary”。意味は、“実在しない”だ。

 数学で例えるならば、互いを二乗するとマイナスが導き出される複素数――実数ではない虚数――“imaginary number”だ。

虚数とは英語にちなみ、ギリシャ文字の“i”で表記されている。







――故に、“GiFT”






『――ガキのままの俺に届いた贈り物さ――』



 園越家の夫はその日も、和室に鎮座ちんざした仏壇の前で思っていた。飾られた拡大写真一部分とサンタ帽を、こころよく眺めながら。




――その家族には、確かに“i()”が存在したのだ。




 *END*




 

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