*And @ happy new year.*
――私たちは、忘れてはいけない。
子どもたちにプレゼントを届ける、サンタクロースの存在を――。
――私たちは、覚えておかなければいけない。
サンタクロースには、大人になれた今でも会えるかも、と――。
――私たちは、知らなければいけない。
サンタクロースのソリを引く、トナカイたちの頭数と名前を――。
――私たちは、認知しなければいけない。
トナカイたちも、晴れぬ闇を抱えていたことを――。
――私たちは、忘却してはいけない。
クリスマスによく窺える、柊を飾る意味を――。
――私たちは、記憶に留めなければいけない。
永年に渡って口ずさまれた、数々のクリスマスソングを――。
――私たちは、身を以て知る必要がある。
同じ屋根の下で過ごす家族との、確かな愛を――。
――そして私たちは、認知する必要がある。
存在しなかったはずの、iの正体を。
それは、茨城県笹浦市に住まう一家――園越家の表札が全ての答えだ。
園越家
岳斗
宙舞
風真
常海
それぞれの頭文字をアルファベットに変換すれば、自ずと“GIFT”となる。
しかし、それは“GIFT”であって、“GiFT”ではない。
なぜなら、一人はこの世界に生きていない。遠く離れた天の世界で、園越家を見守りながら過ごしている。
そんな彼女は、この世界でいえば不確かな存在なのだろう。
英語でいえば、“imaginary”。意味は、“実在しない”だ。
数学で例えるならば、互いを二乗するとマイナスが導き出される複素数――実数ではない虚数――“imaginary number”だ。
虚数とは英語にちなみ、ギリシャ文字の“i”で表記されている。
――故に、“GiFT”
『――ガキのままの俺に届いた贈り物さ――』
園越家の夫はその日も、和室に鎮座した仏壇の前で思っていた。飾られた拡大写真一部分とサンタ帽を、快く眺めながら。
――その家族には、確かに“i”が存在したのだ。
*END*




