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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
9/43

懺悔

私は、生まれた時から、小人として生活をしていた。

親元を離れたのは、十八歳になった頃。それからはずっとサバイバル生活を送っていた。

公園に行っては、食べられそうな雑草をむしって食べ、雨水を飲んで過ごしていた。

でも、そんな生活も、長くは続かなかった。

人間のご飯が食べたい。そう思い出したのは、サバイバル生活を始めて僅か半年目の頃だった。

どこかに食べ物でも落ちていないか……住宅街をふらふらと歩いていると、ふと目に入った。

いや、目に入ってしまった。

壊れかけた網戸の窓。

私一人くらいなら入れそうな、小さな隙間があった。

言い訳をしてしまえば、ほんの、出来心だった。

気が付けば、私は、隙間を通って家の中に入ってしまった――不法侵入だった。

中は和室になっていて、小さなちゃぶ台が置いてあり、その隣に女性が横になっていた。エプロンを着たまま寝息を立てている。昼寝だろうか。

部屋の真ん中にあるちゃぶ台の脚を伝って上がって行くと、真ん中に皿が置いてあり、クッキーが乗っていた。久々に見る、人間の食べ物だった。

無心になってそれに喰らいついた。抱える事も出来ないくらい大きいクッキー。私が食べても、ほんの少し欠けただけで、気付かれないかも知れない――そんな考えに、理性が吹っ飛んでしまっていた。

満腹になり、家主が起きる前に移動しようと、ちゃぶ台から降りて近くにあるタンスの隅に隠れる。

そこで、気付いてしまった。

私は今、見知らぬ人の家に侵入し、そこにあった食べ物に手を付けてしまった。

盗みを、働いてしまった……。

自責の念に駆られた。そりゃあ、私は小人だから、家に入ろうが食べ物に手を伸ばそうが、気付かれなければ問題はないのかもしれない。

でも、窃盗に変わりはない……。

その後、雑草生活に戻ろうと何度も思った。でも、人間の暮らしの素晴らしさを知ってしまって、もう戻る事が出来なくなっていた。

罪悪感に苛まれる中で、人の物を盗み続けるというのは、本当に辛かった。

そんな、ある日。人の家に侵入し、食べ物を探していた時のこと。

ゴミ箱の中に、古いタイプの携帯電話が入っていた。

家主の言葉を聞いてみると、どうやら誤って入ったわけではなく、新しい携帯に買い替えるために捨てたらしい。

その時、閃いた。

罪を償うまではいかなくても、何か他の人の役に立つことは、出来るかも知れない――。

携帯を持ち出し、その時を待った。

ある日、たまたま事件現場を目撃し、その事件の真相に気付いた。こう言っては何だけど……警察は的外れな推理と捜査をしてて、正直不安だった。

どうにかして真相を伝えられないか……悩んだ挙げ句、例の携帯で真相を伝えることを思い付いた。

その後、偶然にも、仲西刑事の携帯の番号を手に入れることができた。彼が署内で携帯を紛失していなければ、事件の真相を教えるなんて、不可能に近かった……ある意味奇跡だった。

こうして私は、窃盗をしながら警察に協力するという。二足の草鞋を履くことになった。

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