自宅
「降ってきたな……」
自室のカーテンをめくりながら、そう呟いた。
「え、まさか、雨が降りそうだったから、私を迎えに来たの!?」
胸ポケットの彼女が訊いてきた。
「まあ……そんな感じ、だな」
迎えに行った時、彼女は若干躊躇っていた。そもそも何で、またあの路地に来たのか、どうして「迎えに来た」なのか、色々疑問があったようだ。
だが、俺が「ほら、早く」と急かすと、素直に付いてきてくれた。
「……で、どうして私を迎えに来たの?」
「君に、ここに住んでもらおうと思って」
「え?」
「あのままあの路地にいてもいいが、携帯の電池のこともあるし、何より危険だしな……まぁ、君の意見を訊いていないわけだから……君が望むなら、またあの路地に行くが……」
そう言うと、腕を組んで悩み始めた。
彼女が悩みたくなる気持ちも、わからないわけでは無い。知らない男の部屋に住む……危険が無いとは言い切れない。むしろ危険極まりないはずだ。しかも、半ば強引に連れてきてしまった事を踏まえると……不安だろうな、とても。
暫くして、彼女は顔を上げた。
「……私の懺悔を、聞いてくれる?」
急にそんな事を言い出した彼女の表情は、真剣そのものだった。
「わかった、聞こう」
そう答えると、数回深呼吸をして、話しだした。