後悔
空が曇ってきた。
一雨降るかな……そんな事を考えながら、近くにある岩に腰かけた。
岩とは言っても、人間からしてみれば、蹴飛ばせる程の小石でしかないのだろう。
今日会った人は、不思議な人だった……私を見ても大して驚かなかった。肝が据わっているというか、何というか。
ふと、隣にある開きっぱなしで置かれた携帯を見る。ボタンを押して画面をつけると、電池はあとわずかだということがわかった。
電話できるのも、後数回も無いんだ……。
そんなタイミングで、あの刑事からの誘い。渡りに船だったのに、断ってしまった。
……何で今更、後悔しているのだろう。自分が犯した罪は忘れていないのに――。
その時だった。
足音が、聞こえてきた。とても速い、急ぐような足音。
通行人の物ではない。私はこの音を知っている。
咄嗟に岩から離れ、路地の入口を見る。
次に見えたのは、大きな一つのライトだった。
「うっ……!」
眩しさに思わず目をつぶる。
恐る恐る目を開けると、そこにいたのは、あの刑事。懐中電灯を持って、肩で息をしていた。
私の姿を見つけると、初めて会った時の様に、その場に膝を突く。
そして、私に手を伸ばしてきた。
「……迎えに来たぞ」