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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
43/43

信頼

「えっと……改めて、初めまして、二宮りまです。身長は四センチです」

「ど、どうも……照井優子です」

挨拶をすると、照井刑事も返してくれた。声が震えている。

「そんなに緊張しなくていいですよ、さっきは、省吾……赤石刑事も、ちょっと熱くなっちゃったみたいで。そうだ、敬語は使わないでください。私、そういうの苦手なんで」

「いえ、そういうわけには。その、警察に、協力してくださっているみたいですし。……先程は、すみませんでした」

「大丈夫ですよ、小人なのは事実ですから」

小人だからと、差別されるのは慣れてる。むしろ、省吾みたいに人間扱いする方が稀だ。

「それで、二宮さんは、どうして警察に協力を?」

「りまでいいですよ。私、十八で家を出てから、ずっと泥棒をしてて――」

省吾に出会う前のことを、照井刑事に話した。泥棒をしながら仲西刑事に自分の推理を話したこと、省吾に会って、家賃代わりに協力していること……。

「……そうだったんですね。捜査に協力していただき、ありがとうございます」

「こちらこそ、理解してくださってありがとうございます。ところで、課長さんには報告するんですよね?」

「それは、ちょっと迷ってて……まさか、こういうことだとは思わず……」

どうやら、本気で悩んでいるみたいだ。

「言うかどうかはお任せしますが……赤石刑事の不利になるようなことは、言わないでください。全ては私の我儘なので」

「とはいえ、この場合は……一旦保留にします」

保留……とりあえず何とかなった、のかな?


「ところで、一つ確認なんですけど、もしかしてずっと赤石さんの胸ポケットにいたんですか?」

「そうですね。外の様子とかがわかりやすいので」

「うーん……」

納得いかないのか、首を傾げた。

「赤石さん、結構体格がいいというか、身体が大きいので、ポケットだと狭いんじゃないか、と思って。それに、危険じゃないですか?」

「身体の大きさなんて、私から見たら子供も大人も大きいので……それに、赤石刑事以外の胸ポケットを知らないのでなんとも。安全面は、確かに、暴れる犯人を捕まえたりすることもありますから、安全とは言い難いかもしれないですね」

「じゃあ、いっそ家にいて、電話とかで意見を聞く、とかでもいいんじゃないですか?」

「それも、できなくはないとは思いますけど、直接見たり聞いたりした方がわかることもありますし……でも、胸ポケット、安全ではないかもしれないですけど、安心はするんです」

「安心、ですか」

いまいち、ピンと来ていないみたい。

「赤石刑事は、私の身に危険が及ぶようなことはしないんです。本当に色々気遣ってくれて……だから、そばにいると安心するんです。それなら、他のポケットでも良さそうですけど、胸ポケットだと、呼吸とか心臓の音とかも聞こえてきて、ここが赤石刑事に一番近い場所で、本当に安心できる場所なんだって、わかるんです。それに、推理にも集中できます」

思えば、初めて一緒に捜査した時から、省吾の胸ポケットはとても安心できて、推理に集中できる場所だった。

「私、赤石刑事に会う前は、一人で事件を捜査していたんですが、その時は人間の近くを通ったり、足に飛び乗って移動したり、近くに足を下ろされても平気でした。でも、少し前に喫茶店で事件があって、その捜査をした時、見つかりそうになって焦ったり、昨日だって、根岸さんのそばを通りかかった時に踏まれそうになって驚いたり……今までは平気だったのに、急に恐怖を感じるようになって、推理に集中できなくなったんです。多分、赤石刑事のそばにいて、安心感を覚えたからだと思います」

省吾は、私が一人で捜査することを心配していたけど、私は多分、もう一人で捜査はできないと思う。昨日の事件で、自分の中でそれがはっきりした気がする。

「……赤石さんのこと、信頼してるんですね」

「そう、ですね」

親の次……いや、親より信頼している。

言ってから、だんだん恥ずかしくなってきた……。

「そ、そういうわけなので、今後、赤石刑事が一人で話していたら、だいたい相手は私だということで」

「いやいや、その時は、事情を知ってる私もそばにいますから、三人でちゃんと話し合いましょうよ」

「あ、確かにそうですね。……って、今後も私が事件を捜査することは、照井刑事的にはいいんですか?」

「一旦保留、なので。今は目を瞑ります」

その時、助手席の窓が小さくノックされた。見ると、省吾が外で手を振っていた。


「ありがとうございます、有意義な話ができました」

胸ポケットに戻る私に、礼を言ってくれた。

「こちらこそ、ありがとうございました」

「……丸く収まったみたいだな」

「はい、課長への報告は、一旦保留にします。今後は三人で、捜査していきましょう」

「そういうことになったのか。まあ、りまがいいなら、いいんだが……」

省吾は不安そうだったが、私としては、とてもスッキリとした気分だった。

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