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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
36/43

励まし

仲西刑事が撃たれた。

幸い、場所が病院だったため、すぐに処置が行われ、一命を取り留めた。

……でも、当たりどころが悪く、いつ意識が戻るか、わからないとのことだった。

「……」

省吾は、最初はあまりの出来事に取り乱していたが、今は落ち着いていて、病室のベッドで眠る仲西刑事の横で、目が覚めるのを待っている。

「赤石君」

連絡を聞きつけて、課長さんが到着した。

「仲西君は……」

「……命に別状はないですが、いつ目が覚めるかは、わからないそうです」

「そう……わかったわ。彼のご両親に連絡してくるわね」

足早に病室を出ていった。

「省吾、大丈夫?」

タイミングを見計らって、声をかけた。

「聞いていた通りだ、いつ目が覚めるか――」

「そうじゃなくって、省吾が、大丈夫なの?」

胸ポケットを開いて私を見た。顔色が悪い……。

「まさか、萱野さんが、拳銃を二丁も持っていると思わなかった。……でも、それは言い訳だ。銃があった蔵を確認させてもらえば、予想はできていたはずだ」

「それは、そうかもしれないけど……そんなの言い出したら、きりがないよ」

そう言うが、省吾の表情は晴れない。イライラして、つい、力いっぱい殴ってしまった。

「聞きたいんだけど、仲西刑事は殉職したの?」

「え……」

「市民を守って、その結果の負傷でしょ? あのまま竹原さんや伸一さんが撃たれていたら、仲西刑事、凄く落ち込んでたと思うよ。省吾だって、きっと……こう言っちゃ何だけど、仲西刑事は、警察として当然のことをしたんだよ。殉職したわけでもないのに、それを落ち込んでたら、仲西刑事に失礼だよ」

言い過ぎたかな、とも思ったが、省吾は私の言葉に真剣に耳を傾けてくれた。

「……そうだな」

数回頷いて、顔を上げた。

「君の言う通りだ。仲西の、警察としての立場を忘れていた……彼は市民を守り抜いたんだ、よくやったよ。今は、ゆっくり休んでもらおうか」

「そうだね、それがいいよ」

その時、課長さんが戻ってきた。

「ご両親に連絡してきたわ。赤石君、あなたも今日は帰宅してちょうだい、詳しい報告は、後日してもらうから」

「わかりました、失礼します」

課長さんに挨拶して、外に出る。気がつけば、もうすっかり暗くなっていた。


「……ねえ、仲西刑事って、過去に何があったの?」

省吾の運転で帰路につく道中、赤信号で止まったタイミングで訊いてみた。

この前の喫茶店の事件といい、今回の事件といい、仲西刑事は『いじめ』という単語に反応する時があった。更に、萱野さんを説得した時の言葉……過去に何かがあったと考える方が自然だと思う。

「本人のいないところで、無許可で話すのは、な」

「あっ……そうだね、ごめん……」

言われてみれば、確かに……軽率だった。

「でも、仲西と俺が出会った時のことなら、話せるぞ」

「あ、じゃあ、それを……」

そう言うと、小さく頷いて話した。

「今から三年前、仲西は俺じゃない別の刑事と一緒に、捜査をしていた。でも、その刑事が不祥事を起こして、警察を辞めることになった」

「不祥事って?」

「簡単に言うと、セクハラだ。取り調べ中、加害者の女性にわいせつな行為をした」

「えっ、そんなことしたの? あ、でも、少し前にニュースになってたような……」

「それから……色々あって、仲西と俺が、組むことになった」

あれ、今、話を飛ばされたような? ……いや、訊くのは止めておこう。

「仲西は、過去の自分の経験や、相方の不祥事もあって、随分俺に厳しかったんだ。今は大分、丸くなったけどな」

「そういうことだったんだ……仲西刑事、省吾の後輩のはずなのに、たまに指示を無視したりする時もあるから、変だなと思って」

「俺が妙なことをしないように、見張ってたつもりだったんだろう」

「へえ……そういえば、省吾は仲西刑事の前は、誰と組んでたの?」

「俺は……」

その時、長かった信号が、漸く青になった。

「……今は、帰ろうか」

そう言って、アクセルを踏み出した。……聞いちゃいけないことだったかな。

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