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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第三「恨みつらみ」
27/43

別行動

「随分、時間かかりましたね」

トイレから戻った俺に仲西が言った。

「考え事をしていた。今回の事件、複雑そうだからな」

「……まあ、そうですね」

不機嫌そうに答えた。

仲西に怪しまれていると、りまは言っていた。思ったより、仲西は勘がよかったらしい。

これまで、ずっと誰にもバレることなく捜査を続けていたのに、俺と一緒にいることで怪しまれてしまっているのなら……彼女に迷惑がかかっている。

「仲西、さっき来田さんのバッグから、空の小瓶を見つけたそうだぞ。今、中身を調べさせている」

「え、そうなんですか? ……わかりました」

仲西にも先程の情報を伝え、意識を逸らした。

こちらも捜査をしたいところだが、今は休日で、できることに限りがある。しかも、りまのことを考えると、とても捜査どころじゃない。

……いや、今はりまを信じなければ。これまでいくつもの修羅場をくぐり抜けてきた彼女なら、きっと大丈夫だ。

小瓶の中身も気になるが、来田さんが持っていたノートも気になる。バッグの中に入っているところを見ると、来田さんのもので間違いないはずだが、あれほど友人への恨みを綴ったノートを、何故持っていたのか。

そして、それほど恨んでいる相手と、何故、食事に行ったのか……。


「赤石先輩」

少し考えていると、仲西が戻ってきた。

「あの小瓶の中身……毒物だったそうです」

「そうか……」

謎が深まってしまった。羽石さんならまだしも、どうして被害者である来田さんが毒物を所持していたんだ?

こういう時、りまならどう推理するだろう……彼女はこの事件をどう見てるんだ? というか、どこから見てるんだ?

「……」

「どうしたんですか? 先輩」

無意識に足元を気にしていた俺に、仲西が訊いた。

「い、いや、何でもない」

「そうですか」

怪訝な顔をしている。本当に、ごまかすにも限界が来たようだ。

「仲西、来田さんは他にも不審なものを持っていなかったか? あのノートや、小瓶以外に」

「いえ、後は財布やスマホ、化粧品とか……普通でしたね」

「そうか。……仲西、君はあのノート、どう考えている?」

思い切って、踏み込んでみた。

「……来田さんのものだとすれば、学生時代のものと思われます。恐らく……羽石さんから、日常的に、嫌がらせを受けていたのかと」

「なるほど。正直、俺はこの事件の捜査、君に任せるのは不安だと思っている」

「さっきは、少し熱くなってしまっただけで……もう冷静です」

まっすぐ俺の目を見て言った。

「なら、いいんだ」

……やっぱり、仲西はそう考えたか。

「先輩、例えばですけど、来田さんが、学生時代に受けた仕打ちの仕返しに、羽石さんを殺人犯にするために、自殺を図った可能性はないですか?」

「自殺、か。それなら、小瓶はどうして来田さんのバッグに入っていたんだ? 俺なら、罪を擦り付けるために、羽石さんのバッグに入れるか、見つからないように廃棄するが」

「そ、そうですね……」

その時、仲西の携帯のバイブが鳴った。

「はい、仲西です。……わかりました。先輩、お冷の入っていたコップから、羽石さんと来田さん、それと猿渡さんの指紋が出たそうです。それと、微量ですが、来田さん以外のDNAが検出されたと」

「来田さん以外の、指紋とDNA?」

猿渡さんは店員だからあり得なくはないが、どうして羽石さんの指紋が? しかも、来田さん以外のDNAまで……。

「あの……ここで使われているコップ、もしかして使いまわしている、なんてことは」

仲西が、店内で待機していた店員の一人に訊いた。

「そんな! 店で使っている食器類は全て、使用後は食洗機で洗っています」

「ですよね……」

飲食店で食器の使いまわしなど、あってはいけない。ということは……。

「状況だけ見れば、そのDNA、羽石さんのものである可能性があるな」

「ですね、もしかして、飲むお冷を間違えたとか?」

「無くはないと思うが……大人数で席を囲んでいたり、テーブルに物が散乱しているのならともかく、二人きりで、テーブルにはコーヒーとケーキ、写真集、そしてお冷だけだったはずだ。その状態で間違えるとは思えない」

「うーん、相当なおっちょこちょいだった、とか」

「だとしても……」

何か、何か違う。違和感がある。

「仲西、冷静になったのなら、もう一度、来田さんとの関係を、羽石さんと猿渡さんに聞いてみてくれ」

「わかりました」

仲西を見送り、店内のソファに腰を下ろした。

もし、りまがこの状況を見ているのなら、かなり情報は引き出せたはずだ。今すぐにでも、彼女と合流したい。大丈夫、と自分に言い聞かせてはいるが、やっぱり心配だ。どこかで怪我でもしていないければいいのだが……。

「先輩」

数分後、仲西がスマホを握りしめて戻ってきた。

「どうした?」

「それが……話を聞き終えた時に、例の非通知電話、かかってきました」

そう言って、通話履歴を見せてきた。そこには確かに、非通知で電話がかかってきた旨が記されていた。

「……そうか」

通話時間は五分程度。事件の真相がわかったのだろう。あれだけの情報でもわかるなんて、流石だ。

「それで、単刀直入に訊きますけど、先輩、この人と繋がってますよね?」

仲西の表情は、真剣そのものだった。

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