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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第一「消えた凶器」
2/43

電話

しかし……妙な事件だ。

被害者が襲われた理由は恐らく怨恨。それは間違いない。

問題は凶器だ。仮に、先程あげた二人のどちらかが犯人だったとしても、凶器を特定できない事には、犯人逮捕にまでこぎつけられるかどうか……。

それに、先程見つけたこのアスファルトの濡れた痕。あれは一体何なんだ? もしかしたら、大事な何かを見落としている可能性が高いのかもしれない。

その時だった。

手に持っていた携帯のバイブが鳴った。……そういえば、仲西から携帯を借りたままだった。

とりあえず出て見た。

「もしもし」

「……事件の真相をお話しします」

「!」

女性の声だ。しかも今、事件の真相って……。

慌てて発信者を見ると、そこには「非通知」と書かれていた。

非通知。

妙な電話をかけてくる女性。

まさか、これがそうなのか……? 

だがこの女性、妙だ。声が小さすぎる。

「………」

「すいません、もう少し声を大きくしていただけませんか?」

「犯人は……」

多少大きくしてくれたようだが、近くにある人だかりの所為で全然聞こえない。

ふと周りを見渡すと、奥まったところに路地があるのに気付いた。あそこに行けば、多少は聞き取りやすくなるかもしれない。

早歩きでその路地に入り込んだ。

「!……犯人は、身近にある鈍器を使ったのだと思われます……」

これではっきり聞こえるようになった。が、そう言う前に少し間があった様に思える。喋り方もどこか、焦った様に早口になった。

もしかして、この路地にいるのか? 

入ってみてわかったが、路地は奥の方で行き止まりになっていて、足元にはビン類が入っていたであろうプラスチックの箱が散乱していた。

「身近にある鈍器、というのは?」

話を進めながら路地の奥へと進む。

「お、恐らくですが、石のような、簡単に手に入る鈍器です。石なら、片手で持って人を殴っても出血させることが出来ますし、そのまま持って走り去る事も出来ます……」

電話の先の声がだんだん焦りを増してきている。

更に進むと、今度は地面を擦るような音が聞こえてきた。俺の足音だ。ということは、電話を地面に置いて話しているということだろうか。

「それじゃあ、あの水の痕は何なんですか?」

「え……水?」

相手が予想外とでも言いたそうに聞き返してきた。

「はい、水の痕です。被害者が襲われていた場所の周りに、水の痕が広がっていたんです。あれは何なんですか?」

「……か、かけ直しますっ」

そう言うと、俺の返事も聞かないで電話を切ってしまった。

「………」

推理を、外した? どういうことだ? ――それは、本人に直接訊くとしよう。

この近辺にいるのは間違いない。俺の足音が電話の先から聞こえていたという事は、距離もそんなに離れていないだろう。数メートル……いや、数センチの距離にいるのかもしれない。

その場に屈み、辺りを見渡すと、視界の端で何かが光った。

「これは……」

古いタイプの、赤い折り畳み式の携帯だった。それが、開いた状態で置いてあった。

拾って発信履歴を確認すると、ここ最近の発信が全て仲西の携帯電話の番号になっていた。

携帯だけ落ちているのはどういうことだ? 本人はどこに……人影なんて見ていないから、まだこの路地にいるはず……。

ふと、携帯が落ちていた場所の隣にある、逆さまになった箱が目に入った。

何てことはない、多分ジュース類が入っていたであろうプラスチックの箱。

何気なくそれを、持ち上げた。

「!!」

「……え?」

相手は俺を見て目を見開いた。

俺はプラスチックの箱を持ったまま、茫然と、その姿を見ていた。

電話の相手は、確かにそこにいた。

二十代くらいの若い女性。恐らく彼女が、二ヶ月前から仲西に電話を掛けていた人物なのだろう。

だが、その姿は――先程拾い上げた携帯電話より、小さかった。

電話の相手は、小人だった。

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