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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第二「四つの時計」
16/43

接点

公園に戻ってきた。俺は車から降りたが、仲西には被害者の会社へ向かうように指示した。

りまをつれて、事務所へ向かう。中には、まだ管理人がいる。

「まともに取り合ってもらえるとは思えないよ。中を覗いて、時間を確認して」

言われたので、窓からこっそり覗くと、時計が見えた。時間は……俺の時計とのずれは無い。

「間違いないみたいだ」

「そっか……」

腕を組んで、考えている。

「俺なりに考えてみたんだが、りま、君は、あの事務所の時計がずれていると思ったのか?」

「うん」

頷いた。

「でも、写真の中の事務所の時計と、それを撮影した時刻は、多少のずれはあるが、同じだったぞ?」

「それがわからないの……そもそも、事務所の時計が、犯行当時にずれていたと証明できなきゃ……あっ」

何か閃いたようだ。

「犯行があったのって、深夜だよね? その時間まで待って、それからもう一度来てくれる?」

「わかった」

夜まで、まだ時間がある。離れたところで仲西からの連絡を待つことにした。

「ねえ、省吾」

「どうした?」

「さっきの、その……守内刑事、なんだけど」

「あの人が、どうかしたのか?」

訊くと、りまの顔がサッと青くなった。

「ううん、何でもない!」

「? ……何か気になることがあるなら、訊いてくれ」

「大丈夫、多分、私の気のせいだと思う」

「……わかった」

気にはなるが、そこまで言うのならそうなのだろう。

その時、背広に入れていた携帯が鳴った。

「赤石です」

「仲西です。被害者がカメラを持っていた理由なのですが、あの小屋、色々、怪しいところがあったみたいで……それを撮影するために、カメラを持っていると、同僚に話していたそうです」

「怪しいところ……具体的には?」

「そこまでは、わかりませんでした」

「そうか……」

怪しい事務所。確かにそうかもしれない。犯行当時の悲鳴が聞こえ、不良の声だと思って確認しなかったのも、よく考えればおかしい。管理人なら、すぐにでも確認しなければいけないはずなのに。

「あ、それと、もう一つ聞いたことが……被害者の会社に、清水さんのお姉さんが勤めてたんです」

「それは本当か?」

「はい、同じ部署に、被害者と付き合っていた元恋人がいまして、その方の証言で……でも、もうずっと前に、退社してるみたいです」

「そうか……わかった。一度、本部に戻るから、戻ってきてくれ」

「わかりました」

仲西からの電話の内容をりまに伝えると、また腕を組んで考えた。

「被害者と清水さんには、接点が、あるといえばあったってことだね」

「そうだな。でも、とても関係しているようには――」

思えない、と言いかけて、思い出した。

情報収集の甘さ。昨日、彼女と捜査をして、わかったことだ。

「……いや、何か、関係あるかもしれないな」

仲西にメールで、清水さんの姉のことを調べるように伝えた。

「先輩!」

しばらくして、仲西が公園に戻ってきた。

「お待たせしました……行きましょう」

「ああ」

車に乗り込むと、仲西が手帳を開いた。

「清水さんのお姉さんなんですけど、被害者から、酷いセクハラを受けていたらしいです。退社の理由は、一身上の都合、ということにはなっているみたいですが、恐らく、それが原因ではないかと、社内では噂になっています」

「そうか……」

何となく、動機も見えてきた気がする。

「あの、先輩」

「うん?」

「先輩の携帯、非通知電話って来てないですよね?」

自分の携帯を握りしめ、不安そうに訊いてきた。

「僕、ずっと待ってるんですけど、鳴らないんですよ」

「……」

すぐには答えられなかった。電話の主は、すぐそこにいる。

「ま、まあ、そういう日もあるだろう」

「そうですよね」

答えて、携帯をしまった。

「仲西、数日前に、携帯を落とさなかったか?」

「え、落としましたけど、それが何か?」

「……いや、何でもない」

りまの、仲西の番号の入手経路が、彼の不注意と油断であることがよくわかった。


仲西の運転で、本部に到着した。そこは見慣れた、俺達の職場だ。

「車を止めてくる。先に行ってくれ」

「はい」

ドライバーを交代し、ハンドルを握った。

「りまは、来たことがあったんだったな」

「来たことはあるけど、正面玄関からちゃんと入るのは初めてかも」

「……そうか」

他にどんな入り口があったのだろうか。


長い廊下を渡り、『捜査一課』と書かれた部屋の扉を潜ると、見慣れた机に座った。

「赤石君、おはよう。座ったところ悪いんだけど、捜査の報告してくれる?」

「はい」

遠くから声をかけてきた女性……斎藤一課長のもとへ向かった。

一通り報告を終えると、俺の顔を覗き込んできた。

「随分眠そうね……仮眠取る?」

「そうします。犯行が起きた時間、もう一度現場に行くので」

「あら、大変ね。無理しちゃだめよ?」

「はい」

失礼しますと頭を下げ、階段を降りて地下駐車場へ向かい、運転席に乗った。

「りま、少し、仮眠を取りたいんだが、君はどうする?」

「私は……ちょっと考えたいから、このままでいいかな」

「わかった」

グローブボックスからアイマスクを取りだし、リクライニングを倒して装着した。

普段は仮眠を取る時は、腕を組んでいるが、そうすると胸ポケットを潰してしまうので、スラックスのポケットに両手を突っ込み、目を閉じた――。

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