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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
刑事編 第二「四つの時計」
15/43

自宅で聞き込み

「……何がしたかったんですか、守内刑事」

俺が訊くと、守内刑事はあははと笑った。

「いや、俺も聞き込みを……何か知ってるかなと思って」

「小屋の中に入ろうとしたのはどうして?」

「だ、だって、何か重要な証拠とかあると思ったから……」

「根拠はあるんですか?」

「それは、その……」

口籠った。こういうところは、本当に変わらない。どうしようもない。

その時、胸ポケットに衝撃を感じた。彼女を放っておいたままだった。

「はぁ……聞き込みに行ってきます」

ため息をついて踵を返すと、仲西もついてきた。

「仲西、駐車場に車を止めたから、持ってきてくれ」

「は、はい」

鍵を渡し、仲西が駐車場へ向かったのを確認し、人気のないところでポケットを確認した。

「どうした?」

「色々、気になることがあって……」

こほん、と咳払いをした。

「まず、どうして被害者のデジカメに、あんな写真が残ってたんだと思う?」

「え……撮ってたからだろう?」

「じゃあ、どうして撮ってたの?」

「襲われた時、咄嗟に、シャッターを切って……何が言いたいんだ?」

「もう一つ聞きたいんだけど、この公園って、写真映えするスポットとかある?」

「いや、そういう話は聞いたことがない」

「じゃあ、どうして、被害者はこんなところでカメラを手に持ってたの? おかしいと思わない? 普通は、刃物を持った男が襲ってきたり、刺されたりしたら、すぐ逃げようとするはずだよ。わざわざカメラを出して、撮影なんてしない。初めから手に持っていたのなら、それはそれでどうして?」

言われてみれば確かに。昼間に、家族連れでピクニック等に来たのならまだしも、深夜に、一人で、写真映えのしないこの公園で写真を撮ること自体、おかしい。

「先輩、お待たせしました」

仲西が、近くの道路まで車を持ってきてくれた。

「この近辺の聞き込みをしていた警官が、例の写真に写っている男を発見したそうです」

「そうか、すぐ向かおう」

カメラの件も気になるが、まずはそっちを優先しよう。


車で十分ほど走ったところにある住宅街。そのうちの一軒に到着した。

入り口には警官が二人と、寝巻きを着た若い男。男の顔は、確かに、写真の男と似ている。

警官とバトンタッチして、男から詳しく話を聞くことにした。

「俺は、清水茂樹って言います。さっきの警察にも話しましたけど、午前三時ごろは、家にいましたよ。証人はいませんけど、証明はできます。あれで」

指差したのは、家の防犯カメラ。

「ここんとこ、物騒でしょ? だからつけたんですよ。映像見ますか?」

「では、お願いします」

家に入り、映像を確認すると、確かに、午前二時頃、青いジャケットを着た清水さんが家を出て、一時間後の午前三時頃、徒歩で家に入る様子が映っていた。

「被害者の撮った写真……ですか? それには、三時に俺の姿が写ってたらしいすけど、俺は三時にはこっちのカメラに写ってるんで、多分それ、よく似た別人すよ。服装も微妙に違うし」

「うーん……そもそも、どうしてこんな時間に外へ?」

「ジョギングっすよ。あ、近所のコンビニの前を通ったんで、そっちの防犯カメラにも映ってるかも」

「ちなみに、車とかは?」

「持ってないっすよ、免許無いし」

一通り話を聞いて、家を後にし、清水さんが言っていたコンビニに向かうことにした。

コンビニは、公園と清水さん宅の間にあり、公園からコンビニまでは徒歩で十五分かかり、コンビニから清水さん宅までも十五分かかる。

コンビニの店員に頼み、カメラを見せてもらうと、二時四十五分頃、清水さん宅の方角へ走っていく彼の姿が映っていた。それ以降は、映っていない。


「写真を見る限り、確実にあの人が犯人だと思うんですけど、アリバイがあるんですね」

コンビニを出て車に乗り込み、仲西が呟いた。

「そうだな……家から公園まで行く最短ルートは、必ずあのコンビニの前を通らなければならない。でも彼は、一度しか通っていない。しかも、家への方角だ」

カメラによって判明した犯人だが、カメラによって立証できなくなってしまった。

そろそろ彼女の意見が聞きたいところだ……。

「仲西、ちょっとここで待っててくれるか、用事を思い出した」

「え、用事って、こんな時にですか?」

「ああ。少し待っててくれ」

戸惑う仲西を後目に車を降り、車から見えないコンビニの裏へ移動した。

「りま、どう思う?」

ポケットから彼女を出し、掌に乗せて訊いた。

「一番厄介なのは、時計だね。省吾、腕時計見せて」

りまを右手に乗せ、左腕の時計を見せた。何の変哲もない、普通のアナログ時計だ。

「省吾の時計って、正確?」

リュウズを撫でながら訊いてきた。

「正確と言われると……電波式ではないからな、自信がない。それがどうかしたのか?」

「今回の事件、時計が大きく関わってるよね、今までで、何種類の時計が出てきた?」

「ええと……写真に写っていた事務所の時計、被害者のデジタルカメラの時計、清水さん宅の防犯カメラの時計、コンビニの防犯カメラの時計……の四つだな」

「それ、全部正確?」

「えっ……」

言葉を失った。

「その時計、どれかは正確で、どれかはずれていたとしたら、清水さんのアリバイは崩れるよね」

「だが、どうやって、どの時計が、どのくらいずれていたと証明するんだ? 今もずれているとは限らないし……」

「大丈夫、こういうのは、確実な線から攻めるのが一番だよ。四つの時計の中で、一番正確だと思われるのはどれ?」

「うーん……わからない。もっとわかりやすく言ってくれるか?」

「じゃあ、質問を変えるね。四つの時計の中で、時間をずらしたままにしておくと、矛盾が生じやすいのはどれ?」

「えっ、と……」

わからないことに段々イライラしてきたようだ。

「コンビニのカメラ! ああいうのは、お客さん以外にも出入りする人いるでしょ!? 商品の搬入とか! その時間とかと照らし合わせた時、あのカメラが一番正確なの!」

「そ、そうなのか……確かにそうだな」

「わかったら早くコンビニに戻って!」

「わかった」

車に戻ると、仲西も少しイライラしていた。

「何してたんですか?」

「いや、ちょっとな。コンビニに戻って、防犯カメラの映像を確認してくる」

「……はい、僕はここで待ってます」

コンビニに戻ってカメラの映像を再度確認させてもらった。

二時四十五分に清水さんが映った後、店員から聞いた通りの時間に商品の搬入車が来ていた。

コンビニの裏へ移動し、ポケットを覗くと、りまが腕を組んでこちらを見上げていた。

「ということは、外出時と帰宅時の、清水さん宅の防犯カメラの時間は合っていた、ということだね」

つっけんどんな態度だ。

さすがの俺でも、りまが怒っているのはわかった。

「りま、すまない。刑事の癖に、鈍いんだ、俺は」

「……」

じっと、俺を見つめる。

「私も、怒ってごめん。その、省吾ならわかるかなと思って……」

さりげなく貶された気もするが、悪気は無かったのだろう。それに、まあ、事実だ。それくらい、今回の事件は、彼女には簡単なのかもしれない。


「りま、君には、犯人が清水さんだという証明が、できるのか?」

「まだ、確信が無いの」

「確信……俺は、何をしたらいい?」

「公園の事務所の中を調べたい」

公園の事務所……守内刑事がやらかした場所だ。

「もう中は調べられないかもしれないけど、一応、向かってくれる?」

「わかった。……仲西はどうする?」

「仲西刑事は……被害者の会社に行ってもらう」

「それは、何のために?」

「デジカメが気になるの。どうして持ってるか、会社の人なら何かわかるかも」

「わかった」

車に戻り、助手席に乗った。

「先輩、用事って何ですか?」

「何でもない。公園に向かってくれ」

「……わかりました」

不満そうに、エンジンをかけた。

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