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刑事の俺と小人の君  作者: 颪金
小人編
13/43

風呂

ガタガタという物音で、目が覚めた。

いや、そもそも、眠れていたかどうかも怪しい。

起き上がり、辺りを見渡す。もう真っ暗になっている。

「あっ」

思わず、声を上げてしまった。

キッチンの隣、確か、風呂場があった場所。脱衣所とキッチンを仕切るアコーディオンカーテンが、閉められていて、水音が聞こえた。

――お風呂入ってるんだ。

そう思った瞬間、ある記憶が頭をよぎった。

以前、いつものように盗みを働こうととある民家に侵入した時の事。

夜だった事もあり、家主は入浴中だった。

テーブルの上に登り、食べ物を拝借して、テーブルから降りた、その時。

家の固定電話が鳴った。

慌ててテーブルから離れ、近くにあった家具に隠れた。

次に、ドタドタと走る音。

「はいはーい」

家主の男性が、風呂場から出てきた。

全裸の状態で――。

あの時、叫ばずにいられたのは、ある意味、奇跡だったと思う。

思う、が……あの日以降、「風呂」や「入浴」という言葉を聞くと、どうしてもあの裸体が頭に浮かぶようになってしまった。思い浮かぶ理由も、この感情の正体もわからない。

ただ、風呂とあの記憶を、無意識のうちに結んでしまうというだけ……。

「はぁ……」

頭を振って、大きく溜め息をついた。

あの男性は、若く見積もって三十代前半。省吾とは……まぁ、体型くらいは似てたかもしれないけど、それ以外はさっぱり……。

……そういえば、省吾って、実際いくつなんだろう?

今度訊いてみようかな――。

その時だった。

ガチャっと、扉が開く音がした。

「!!」

ビックリしたが、まだカーテンまでは開いていない。

その後、布を擦る音が何回か聞こえ、カーテンが開いた。

そこに、スウェットを着た省吾が立っていた。

……何故か、それを見て、ほっとしている自分がいた。

「すまない、起こしてしまったか」

近付いてきた。

「あ、いや、そんなんじゃないよ、大丈夫」

慌てて布団に潜り込んだ。

スウェット姿の省吾を見て、そういえばと、あることに気付いた。

服を替えていない。

正確には、朝と同じ服を、そのまま着てしまった。

どうしよう。お世辞にも綺麗とは言えない服でベッドの中に……今更だが罪悪感が凄い。

「ねぇ、省吾……一つ、お願いがあるんだけど」

そろそろと布団から出た。

「どうした?」

タオルを頭に乗せて訊いてきた。

「あ、あのね……新しい服を、買ってほしいんだ」

「……わかった」

そう言って、ふっと微笑んだ。

初めて見た彼の笑顔に、胸がドキリとしたのがわかった。

「で、でも、自分から言っておいてあれだけど、私のサイズに合う服ってあるかな?」

「そうだな……まぁ、無かったら俺が作ろう。物作りには自信があるんだ」

「そ、そうなんだ……」

あの風呂場や、このベッドを作った省吾なら、出来るかもしれないけど……。

これ以上、彼の手を煩わせてしまって良いのだろうか……。

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