表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柿の種  作者: ぺんぎん
8/8

第8話 「夢」




もう、30年も前の話になります。


私は、あの場所へ行かなくてはならかった。



私には愛する人がいました。

彼女は不治の病にかかっていた。


身体が植物になっていく病気です。



不思議と痛みもなく、、

むしろ心地よく眠っているかのように見えました。



しかし、彼女がしに向かっていることは

なんとなくわかりました。



彼女を目覚めさせたい。



その一心で、山の頂きにあると言われている

神社を目指しました。



進めど進めど、一向にたどり着かないのです。



ついに私は、進むことができなくなって

地面に横たわってしまいました。



彼女に最後に会って

話がしたい。



そう思いながら

私は眠ったのです。




ふと、目が覚めました。



目の前に広がっていたのは


死の世界ではなく、、、



神社でした。


賽銭箱のまえで

彼女が笑っていました。



夢かと思ったのですが、、、

どうやら違う。



目が覚めないんです。



そして、彼女は私にこう言いました。



会いに来てくれて、ありがとう。と




私はうれしくて


彼女を抱きしめました。




ずっと、待ってた。

ワタシが眠ってる時も

ずっとそばにいてくれたよね?


ありがとう。




私は彼女に言いました。


帰ろう、、、

帰って、一緒に星空を旅しないか?




ふふ、ありがとう。

でも、それはできないよ。


ワタシはここを守らなくちゃいけないから。




どうしてだい?

君は神主ではないだろう?




ごめんね。

ワタシが今いるのは

夢の世界なの


ワタシが見ることのできる景色は

ここだけなの。




そんなことはない。

一緒にいこう!



私は彼女の手を握って

階段をかけ降りたんです。




気付くと彼女は消えて

いなくなっていました。



そして、神社も消えてなくなっていた。




それから、私は、

何度も神社に行こうとしましたが


1度もたどり着くことは

ありませんでした。



そして、いつしか、身体も衰えていき

階段を登ることすらままらなくなり

私は神社へ行くことを諦めました。




月日が経ち私は気付きました。


彼女が神社の中でしか

生きられないのと同じで


私もまた、

彼女に会いたいという思いを

抱き続ける世界でしか

生きられないのだと。




あの神社は

誰にも辿り着けないわけじゃない。


私が辿り着けないだけで、、、



きっと私が見た

あの神社は

彼女に会いたいという

私の抱いた妄想によって

作られた幻だったのでしょう。




イザナミくんやミノリさんが

もし、神社にたどり着いたら


そこに彼女がいないということは

わかってしまうでしょう。



それがいやで


幾人の旅人を

追いやってきた。




しかし、不思議です。

あの二人には邪気がない。



あの神社を旅人が目指す理由は


願い事をすれば

願いが叶うということに

目を付けて


欲望を満たすために

神社を目指してくる。




私も年老いましたね。フォッフォッ





ちゅんちゅん




ミノリ「んあーー!よく寝たー!」



イザナミ「疲れが取れたね」



ミノリ「よっさ!今日もいくぞー!」



イザナミ「そうだね、マスターにお礼を言っていこう」



ミノリ「マスターはね、いないと思うよ。。」



イザナミ「そんなことはないだろう。どこかの部屋にいるはずだ。」



私は、マスターを探したが、ミノリの言う通り、どの部屋にもマスターがいる気配はなかった。



イザナミ「おかしいなあ。」



ミノリ「じゃじゃーん!こんな時のためにわちきは、手紙を書いていたのでしたー!」パパーン



イザナミ「うん、どこかに出掛けたのかもしれないし、置いていこう。」




私達は、テーブルの上に、手紙を置いて

昨日と同じく階段を登っていった。



心なしか、足どりは軽く

まるで追い風に乗って

飛んでいくかのように

私たちは歩を進めた。


マスターが後押ししてくれているに違いない。

マスターありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ