研究
第二話「研究」
ヴォイニッチの手稿、、、
1912年にイタリアで発見された古文書。
中には、人や植物などの挿し絵があり
その横に文字が添えられているが
現代で使われている言語では
ないため、読むことができない。
絵から推察すると
植物を有効利用するための
指南書のようにも思えるが
実際のところ何が
書かれているのかが
分からない古文書だ。
オカルトマニアの間では
別次元の世界から来た何者かが
残していったものだと囁かれている。
俺も、もちろんこの古文書について
研究してきたが
結局、文字は読めず
内容もちんぷんかんぷんだった。
だが、俺は、あきらめず
一生懸命、妄想を膨らませて
絵が何を表しているのかを考えた。
手稿の中の絵には
太陽の中に人間の顔が
あるような絵がある。
正直子供が書いた落書きのようにも
思えるが、それにしては絵が幾何学的だ。
絶対何か意味があると俺は思った。
太陽に人間の顔?
人面太陽?
人面の何か別の生命体か?
と考えている時だった。
俺の目の前をすーっと
人面太陽が通り過ぎて
ふわっと上空に舞い上がって
消えたかと思った次の瞬間
鋭い閃光を放って爆発した。
爆風に吹き飛ばされ
意識を失っていた俺が
目を覚ますと
さっきの爆発によって
破壊された街並みが
広がっていた。
俺は、その時に見た
人面太陽を憎念体と
呼ぶことにした。
その爆発に関しての
ニュースが報道されたが
原因は不明のまま報道された。
人面太陽が、、、
とか言ったところで
誰にも信じてもらえるはずもないし
俺はその事を誰にも
話すことなく
心の奥にしまった。
これが、憎念体との
最初の接触?だった。
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砂浜に打ち寄せる
波の音で私は目を覚ました。
ここは...
私は生まれて初めて見る景色に
言葉を失った。
美しい...
白い砂浜の向こうには
青く果てしない海が広がっていた。
ズキッ
突然、頭痛が走った。
まるで、今見ている景色に
感動することを拒むかのように。
「私は死んだはずなのに、、、生きている。」
しかも私の姿は、死ぬ前の姿とは違っていた。
「私はもともと牡蛎だったのに...」
私の身体は人間の身体と
ほぼ変わりない姿になっていた。
トンカッ トントンカッ
どこからか音が聞こえてくる...
その音の先には
ぽつんと小屋が建っている。
私は小屋に近付き
音の正体を確かめた
そこでは牡蛎の殻を剥く
作業が行われていた
何百個という牡蛎が
殻を剥かれて
身を剥き出しに
されていたのだ。
その光景を見た瞬間
私の身体は変形した。
両腕から鋭い刃のような
牡蛎殻が生え
骨盤を守るように殻が覆い
顔は仮面のように殻に覆われていた。
そして
自らの意識に関係なく
身体が動き
物凄いスピードで
その小屋にいた
10数名全員を
腕から生えた刃で
切り殺していた。
「はあっ、はあっ、はあっ。」
息がすごくあがっていた。
疲労なのか?
それとも、怒りで興奮しているからなのか?
よくわからなかったが
私は仲間達の亡骸を
海に還して
砂浜で一人
夕日を眺めていた。