降臨! チキン・ザ・ハート
水着のファッションショーをやることになった私達。そんな中、私はカランさんから不思議な瓶をもらいました。
この瓶は割ると中のものがそのまま使えるようになるんだ。カランさんいわく、中身は方舟ってやつらしいから、とーっても便利なものなんだって。
「はぁい、みんな。いよいよ男子には魅力的な水着のファッションショーを始めるわよー。ちなみに私は身体は男、心は乙女だからよろしくぅ」
ダーカーさんがとてもノリノリで進行していく。私達はそれを見て大半はとても大きなため息を吐いていた。
「っと、その前に審査員の紹介をしておくわー。まずは執事のセバスチャン。このお城は彼なしでは回らないとても重要な方。その変態加減もとんでもないお方よー」
ニッコリと笑うセバスチャンさん。なんだかまんざらでもない様子だ。
「次に魔王軍隊長のゴブタ。実はとんでもないムッツリスケベで、メイド長を初め様々な乙女が犠牲になったと聞いているわー」
フン、と鼻を鳴らすゴブタさん。途端にエールとブーイングが飛び交った。
うわぁー、あんなに敵味方がくっきりしているなんてすごいなぁー
「最後に忘れてはいけない邪神チキン・ザ・ハート! 生まれてこの方、幾多の転生を繰り返し、乙女達を堕落させてきたこと幾星霜。そのテクニックはとんでもなく、おふざけから真面目なエロスまで知り尽くした神の中の神! その神眼はこのファッションショーに活かされることを期待しているわー」
す、すごい紹介をされている。しかもゴブタさんと違ってブーイングしか起きてないし。
どれだけ嫌われているの、邪神さま?
「では、審査員の紹介も終わったことだし、早速始めましょう!」
男性陣は大きな歓喜を挙げる。
どれだけこのイベントに熱が込められているのか、なんかわかってしまってとても怖いよ。
「エントリーナンバー一番、勇者ジュリア!」
「って、待て。私かよ!」
ジュリアちゃんが思わず声を荒げた。ま、まあ、見た限りいろいろと貧相、ゴッホン! 通常の私とあまり変わらない体型だからなぁー
ひ、ひとまず頑張ってきてもらわないと。
「ちょ、待て待て! ファッションショーって何をすればいいんだよ! つーか、剣を持っていっちゃダメなのか!」
「ダメに決まっているでしょ? さあ、さっさと行って自分の魅力を披露してきなさい」
「おわっ! 押すな魔女! まだ心の準備がぁぁ」
無理矢理出されるジュリアちゃん。大丈夫かなぁーって見ていると、ステージに立った瞬間に身体が固まっていた。
「あ、う……」
普段は私に嫌がらせをしてくるジュリアちゃん。いつもかわいそうな目に合うジュリアちゃん。
そして、今回もまたちょっとかわいそうだった。
「そら、歩いて歩いて」
ウィンディさんの指示に従い歩き始めるジュリアちゃん。でも、ド緊張しているせいか手足の関節が上手く曲がっていない。しかも腕と足が同時に出てしまっている。
誰がどう見ても、ダメだと感じてしまうほどジュリアちゃんは追い込まれていた。
「さぁ、アピールをどうぞ!」
「ア、アピール!?」
ジュリアちゃんはステージの端まで進んだ。でも何をすればいいのかわからないという様子だった。
どうなるんだろ? ひとまず私は見守るしかない。
「え、えっと、その……」
「固いですね」
「固いな」
審査員の二人は、邪神さまに顔を向ける。すると邪神さまはコケコッコーと鳴いた。
『うひょひょひょ! わしの出番かのー!』
嫌な予感しかしない。ジュリアちゃんも同じことを感じ取ったのか、あからさまに顔を歪めていた。
『いでよ、わしの友達!』
魔法陣が広がる。直後に邪神さまの足元から何かが出現した。
それはタコの足みたいなウネウネした何かだった。
「な、なんだそれ!」
『友達のショクションだが?』
「だからなんだよ、それ!」
私はショークンを思い出してしまう。もしかするとあの系統の危ない奴かもしれない。
ジュリアちゃんも本能的に危険を感じ取っているみたいで、今にも逃げ出しそうな勢いだ。
『安心せい。何も水着を剥ぎ取ろうとはせんよ』
「発想がおかしいんだけど!」
『だが、この液体は被ってもらうぞぃ』
その言葉の直後に、ウネウネはジュリアちゃんに白いネバネバした液体をぶっかけた。
ああ、なんだか見たことがあるよ。
「な、なんだこれっ!」
液体をかけられたジュリアちゃんは困惑している様子だ。でも次第に顔がポワーンってしてきて、仄かに身体が赤く染まっていく。
「か、身体が、熱い。何、これ……」
『うひょひょひょ! さすがわしの友達だ!』
「う、うぅ。これ、ダメぇ。ダメ、だぁ……」
余計にフラフラしているジュリアちゃん。そんなジュリアちゃんに邪神さまが駆け寄った。
『どうだ? 今夜わしといいことをしないか?』
「い、いいこと?」
『ああ、とてもいいことだ。何、悪く扱いはせんよ』
ジュリアちゃんは訳がわからないまま頷く。途端に邪神さまはいつもの笑い声を上げて『お持ち帰りー!』って叫んでいた。
「勇者陥落ね」
「ああ。さすが邪神さまだ」
ウィンディさんとニルヴィーナさんは畏怖を込めた視線を送る。
私は呆然としながら、他の人達は恐ろしさを感じながら邪神さまを眺めていた。
そして全員がこんなことを感じたはずだ。
これ、ファッションショーだったよね?
陥落してしまったジュリアちゃん。
今夜はどうなってしまうだろうか!
というか作戦会議は?
不毛なる時間が過ぎていく中、次なる生贄が紹介されるのだった!




