怪しい? 黒い? ニルヴィーナ
レベント王国。そこは前に戦ったレッドボーグより強大でとんでもなく強い国らしい。
私達はそんな国を相手にしないといけなくなっちゃった。とーってもヤバいことだけど、今さら後悔しても意味がない。
みんなを守るためにも、どうにかしなくちゃ。だけど、どうすればいいんだろ?
「そうですね。今回は占領下にある倭の国にも協力してもらいましょうか」
「この前来たお殿様の所だね。でも、さすがに協力してくれるかな?」
「大丈夫ですよ。その気がなければあの三人を我々に預けませんから」
セバスチャンさんはいつも通りに笑ってくれる。なんだかその顔を見るだけで安心してきちゃうなぁー
「さて、やることは山積みですからね。ひとまず、今回の戦いのために作戦会議を開きましょうか」
「うん!」
私達は作戦会議室となった客間へと向かう。そこにはウィンディさんやミーシャ、メイドのみんなに魔王軍全員がいるらしい。
いつもの顔ぶれだけど、こういう状況だと緊張しちゃうなぁー
「ああ、忘れていたことがありました」
セバスチャンさんはわざとらしくそんなことを言い放った。
「実は今回、少しお金をかけて軍師を呼び寄せました」
「軍師?」
「ええ。我が魔王軍の中ではいろいろな意味で頭がいいお方です。ただ、少し癖が強くて扱いに困る方でもありまして」
へぇー、そんな人がいたんだ。なんだかセバスチャンさんがとても困ったように笑っているけど、どんな人なんだろ?
「まあ、会ってみればわかりますよ」
ひとまず客間へと向かう。そしていつも通りに大きな扉を開いて、私は部屋一面に目を向けた。
そこに広がるのは黒。真っ黒の黒。そんな中にガイコツがあって、不気味に「ケケケ」って笑っていた。
「何これ?」
不気味すぎる! って、あれ? みんなはどこにいったの?
部屋の中は真っ黒だし、不気味な笑い声しかないしないし。
「ったく、早速やってくれましたね」
セバスチャンさんが頭を抱えている。だ、大丈夫なのかな?
「出てきなさい、ニルヴィーナ! そしてみんなにかけた呪いを解きなさい!」
セバスチャンさんがそんな風に叫ぶ。すると部屋の玉座からおかしな笑い声が響いてきた。
「うーっふっふっふっ。何怒っているんだい、セバスチャン? 私を呼び寄せたのは君だっただろう?」
そこに座っていたのは、真っ黒な黒縁メガネをした白衣のお姉さんだった。黒い髪に、そことなく不気味な笑顔。ウィンディさんとは違う魅惑があって、なんだか近寄りがたい雰囲気が溢れ出ていた。
「状況がわかっているのですか? あなたは仲間に呪いをかけたんですよ?」
「仲間? ああ、あの魔女にメイド、剣士に勇者に魔物に。なるほどね、あれが仲間か」
「わかっててわざとやったでしょ?」
ニルヴィーナさんは楽しそうに笑う。なんだかわかんないけど、とっても怖い感じがしてくるよ。
「あ、あのぉー」
「おや、その子は?」
「魔王のマオ様です。言っておきますが、おふざけしたら許しませんよ?」
ニルヴィーナさんは目を鋭くして私を見つめる。なんだか怖いなぁー
「ふーん、なるほど。新しい魔王ね」
ニィってニルヴィーナさんは笑う。
怖い。なんだか怖いよ。
「じゃあ、このくらいは朝飯前だろ?」
ニルヴィーナさんは私を見つめた。何となく目を見ていると、突然クラクラしたきた。
う、なんだか気持ち悪い。妙に吐き気がするし、それに力も抜ける。
「マオ様!」
「おっと、手出しは無用だよ。といっても、君じゃあどうにもできないだろうけどね」
な、何だろ? なんだか頭が真っ白になってきた。
このままじゃいけない気がする。でも、どうすればいいんだろ?
そ、そうだ。天使さんを呼べば、どうにかできるはず――
「天使さん!」
私はいつものように呼び出してみる。すると現れたのは、真っ黒な天使さんだった。
な、何これ? いつも出てくる天使さんと真逆の色合いなんだけど。
「ほう、この状態で紋章の力を使えるのか」
うう、気持ち悪い。早くどうにかしないとホントにまずいかも。
と、とにかく回復してもらわなきゃ。
「て、天使さん、回復を……」
って、あれ? 天使さんが動かない。
あ、もしかして私の状態がよくないからかな? まずい、これじゃあ回復なんてできないよぉー
「うぅっ」
もう立ってられない。
頭が痛い。吐き気もひどい。もう、限界だよぉー
「マオ様!」
倒れそうになった瞬間、セバスチャンさんが私の身体を支えてくれた。でも私はもう限界に近くて、まともに口を動かすことができない。
うう、このままじゃあ死んじゃう。ど、どうにかしないと……
「顔を上げてください」
そんな時だった。セバスチャンさんが私の顔を上げさせたのは。
そのままゆっくり顔が近づいてくる。そして、セバスチャンさんの唇が私の唇に重なった。
鼓動がドクンと跳ね上がる。溢れてくる力に、変化する身体。伸びる手足と、大きくなっていく胸。
「ほう」
時の呪縛が一時的に解除され、私は七年分のものを取り返した。
途端に真っ黒だった天使さんが光を解き放った。髪は淡い赤に、服は白く染まり、大きな翼を勢いよく広げる。
直後、みんなにかかっていた呪いが解けていく。暗闇で包まれていた部屋も元通りになっていった。
「ふぇー」
「よくがんばりました」
どうにか呪いを解くことができた。でも、一人じゃあどうにもできなかったなぁー
「なるほどね。それが君の力か」
ニルヴィーナさんはそういって楽しげに笑っている。一方、セバスチャンさんはどこかつまらなさそうに睨んでいた。
「ふざけるなと言ったでしょう? あなたはただでさえ――」
「ふふふ、そうカリカリするな。まあ、久々にいいものが見れたしな。協力してやるから許してくれ」
セバスチャンさんは大きなため息を吐く。
な、なんだかやりにくそうにしているなぁー
「ああ、魔王さま。挨拶が遅れたね。私はニルヴィーナ。あなたの隣に立っているセバスチャンの姉だ」
……え? 今なんて?
この怖い人が、セバスチャンさんのお姉さん!?
「えー!」
世の中って、不思議かも。
セバスチャンの姉が登場!
これで魔王軍はレベント王国に勝てるのだろうか?
次回、いよいよ始まる不毛な作戦会議!
お楽しみに!




