お目覚めのマオ
うー、身体がゴキゴキするぅー
結構寝てたみたいだし、外はなんだか暗くなっているし、なんだか頭がボォーっとするし。
もー、身体がおかしなことになっちゃっているよぉー
「おはようございます、マオ様」
セバスチャンさんがいつも通りに入ってきた。さっきまで一緒に寝ていたと思うけど、よくそんな爽やかな顔ができるもんだよぉー
そういえば、寝ている間にお城はどうなっていたんだろ? 気がつけば夢の世界に引きずり込まれていたし。
「にゃー」
そんなことを考えていると、パールが声をかけてきてくれた。何気なく目を向けると、近寄ってきて私の膝の上にゴロンと乗っちゃった。
もー、かわいい奴め。こうなったら嫌になるほどモフモフしちゃうぞー
「あ、お母さん!」
そんなことを考えていると、メイちゃんが部屋に入ってきた。途端にパールが逃げちゃうけど、メイちゃんはそんなこと気にする様子もなく駆け寄ってくる。
「よかった、もう起きないのかと思ったよぉー」
「ごめんね、寝坊しちゃって」
安心した顔を浮かべるメイちゃん。私は微笑んで見つめていると、また扉が開く音がした。
「マオ様ァァ!」
少し泣きそうになりながら駆け寄ってくるシィちゃんがいた。シィちゃんはメイちゃんごと包み込むように抱き着いて「心配しましたよー!」って叫んでいた。
「ケッ、心配することはなかっただろうが」
ふと顔を扉に向けると、カアたんが腕を組んで睨みつけている姿があった。ちょっと怖いけど私は、カアたんに「ごめんなさい」って言ってみる。するとカアたんはどこかバツが悪そうにして舌打ちをしていた。
「せっかく起きたんだ。飯を食いに来い。身体にいいもん食わしてやる」
吐き捨てるように言葉を口にして、カアたんは去っていく。なんだかいつもと違って、どこか優しさを感じた。
「お、魔王さまが起きたのか?」
「おはようございますー、魔王さまー」
「寝坊助はいけないぜ、魔王さま」
「ふふ、寝ている姿はなかなかにキュートだったよ」
「お姉ちゃんったら、もー。みんな心配したんだからね」
続々と部屋にみんなが集まってくる。なんだかとーっても嬉しいよ。
「マオお姉ちゃーん、身体大丈夫?」
「お、寝坊助マオちゃんが起きたのかい?」
「チッ、やり損ねたか。まあいい、今回は見逃してやったんだ」
「魔王さま、おはようございます」
そっか、ここにはいろんな人や魔物がいるんだ。そして私は、みんなのために頑張っていたんだ。だからグラン・リーアのわがままが許せなかったのかも。
みんながみんな、自分だけじゃなくて人を想って生きている。だから、みんなは幸せな顔をしているのかもしれない。
「どうしたの? お母さん?」
「どこか痛みますか?」
何だろ、当たり前のことだけどそれがわかったら、涙が溢れてきちゃった。
このままみんなと一緒にいられたら、どんなにいいことかな。
「マオ様」
セバスチャンさんが私の思っていることを感じ取ったのか、こんなことを言ってくれる。それはとてもありがたい言葉だ。
「いつまでも一緒にいられますよ。そのために、私はあなたを守ります」
とても優しい言葉。ついつい甘えたくなっちゃう言葉。
だから私は、嬉しさのあまりに頷いちゃった。
この時間を守りたい。みんなを守りたい。
そのためにも、グラン・リーアと決着をつけなくちゃ。
◆◆???◆◆
「あーら、最強でいられるはずの夢世界で敗れちゃったの? なっさけないわねー」
「うるさいわ! アンタが中途半端な力を寄こすからだろうが! そのせいでせっかく集めた魔力も特異な力も全部なくなったわ!」
「ふーん、なるほどねー。つまり、あなたは完全には使えなかったのね」
ま、期待はしていなかったけど。それにこの力を制御できる人間はいないだろうしね。
「まあいいわ。あなたじゃ扱い切れないようだしね。その力、返してくれない?」
「ああ? 何言っている? こんな便利な力を返すと思うのかい?」
ふふっ、そう言うと思った。でも残念。それは私の力なの。
だから――
「あなたにその気がなくても、取り返すことはできる」
悪いね、おばちゃん。これはあなたにとって身の丈に合わない力なのよ。
「ガッ」
おっと、そうだった。この力には副作用があるんだった。
「ガガガッ」
無理矢理奪ったせいかしら? どんどん身体が膨らんでいるわね。
ま、別にいいけど。どうせあなたは、こいつを扱い切れずに死んじゃう運命だったし。
「でも――汚れるのは嫌かな?」
そういうことで、空に飛んでいってねおばちゃん。
「ビィナァァ!」
さようなら、グラン・リーア。あなたのことはたぶん、十秒は覚えているから。
転移魔法、と言えばいいかしら。それを使っておばちゃんを空へと飛ばした。それから一秒も経たないで、大きな爆発音が響く。
何気なく空を見上げると、そこは真っ赤な色で染まっていた。
「それにしても」
不完全とはいえ、この力を退けるなんてね。歴代の魔王の中じゃあ弱いって聞いたけど、もしかすると意外な掘り出し物かも。
ま、一番我が強い魔王を復活させてみたけど、あいつはそれ以前の問題だったかな?
何にしても、突いてみる価値はあるかも。
「どのみち時間はないし、あいつをどうにかしないといけないし」
ひとまず、やってみるか。
この〈レベント王国〉を使って。
やっとのこと夢の世界から脱出したマオちゃん。
心配してくれたみんなを見て、改めてその大切さに気づく。
だが、マオちゃんの知らない所で何やら怪しい動きがあるぞ。
次回、ようやく魔王せいかつ16日目だ!




