夢世界のシィちゃん?
ひ、ひとまずトランプ兵のハーツを仲間にした私達は、ドリマール王国へ侵入しました。
一応、私は指名手配されているようなので、変装しているんだ。でも、このちょびヒゲ鼻メガネだけで大丈夫なのかな?
『わぁー』
それにしても、なんだかとっても活気溢れているよ。でもどこかで見たことがある町並みだなぁー
あ、このお菓子屋さん見たことがある。前に一度来てみたいって思ったお店だよ。
『ここは主様の記憶を元に作られております。僕の身体も、この変態も、全て主様が体験した記憶から作られていますよ』
へぇー、そうだったんだ。
えっと、この二つから思い浮かべられるのはセバスチャンさんかな? でも変態加減の方向は違う気が。
『パール様、あそこに温泉があります。今度ご一緒にどうですか?』
『やだ。主様ならともかく、お前となんて入りたくない』
『いいではないですか。これはそう、裸の付き合いというものです』
『何がいいんだよ?』
やっぱり違う気がする。
まあ、それはいいとしてっと。ここに私を閉じ込めた存在がいるのかな? いるとしたらあのお城の中にいるのかなぁー?
『退いて退いてー』
『ふえ?』
うぎゃあ! いたたた……。何? なんだかわからないんだけど、私すっ転んでいるし。
もー、誰がぶつかってきたの?
『あたたた』
『あっ』
私とおんなじように腰を打ちつけている女の子がいた。何だろ、この子どこかで見たことがあるなぁー
メガネかけているし、どこか気弱そうに見えるし。これでメイド服を着させたら……
『シィちゃんか』
なんだか納得。
そう考えていると、女の子は顔を真っ赤にしていた。慌てた様子でスカートの丈に手を覆って、私を睨みつける。
『見た?』
『え? 何を?』
『惚けないで! 私の、その、下着を……見たでしょ?』
えっと、見たような見てないような。まあ、どっちにしてもわからないし、それに顔のほうに目が行っていたしなぁー
『見てないよ?』
『嘘つかないでよ。男の人は、絶対に嘘つくし』
男……
そういえば私、変装しているんだった。でも、ちょびヒゲ鼻メガネしているだけで、格好はいつも通りなんだけどなぁー
ま、まあいいか。こんな所で余計な騒ぎになったら面倒だし。
『大丈夫ですよ、お嬢さん。この方は変態紳士ですから』
『へ、変態紳士!?』
『そう、夜な夜な寝ている女の子の身体をペロペロするのが仕事のあれです』
パール、全然フォローになってないけど。というか、この子とっても怯えているよ?
『い、いやー。ペロペロしないでー』
『しないから! 絶対にそんなことしないから!』
もー、変なことをいうから変な誤解されちゃったじゃない。周りにいる人達の視線がなんか痛いし、ここは早く離れたほうがよさそう。
『パール、ハーツ。あっちに行くよ』
『はーい、主様』
『かりこまりました』
にしても、原因に関するヒントはなしかぁー。このままじゃあみんなが心配しそうだし、それにお腹が空いてきちゃったし。
早く現実世界に戻りたいよぉー
『あ、主様! こっちに来てください!』
どうしたんだろ? なんか慌てているし。
『ハーツ、ここはお前に任せるよ』
『かしこまりました!』
私はパールの誘導に身を任せて、建物の陰に隠れる。ハーツはそんな私達を隠すように立っていた。
だけどすぐに片膝をついて、何かにお辞儀をしていた。
あれは、馬車かな? それにしても形がなんか変だけど。
『あれはこの世界を支配している〈グラン・リーア〉です。マオ様をこの世界に閉じ込めた張本人でもありますよ』
『あの馬車に乗っている人が? なんだか偉そうだね』
『ええ。現実世界ではどこかの国の王様をしているようですよ。その特異な能力を使って、様々な悪さをしているようですが……』
うーん、とんでもない人なんだなぁー。でも、なんで私をこの世界に閉じ込めたんだろ?
そんなことを考えていると、馬車はどこかへと走り去っていった。
『どうにかやり過ごせましたね』
『ねぇ、パール。なんで隠れないといけなかったの? このまま倒せば全て解決だったじゃない?』
『あの馬車はとてもすごい魔法がかかっているんですよ。下手に真正面からいくと、返り討ちになります』
だから隠れたんだ。何にしても、倒すべき人はわかったからいいかな。
『きゃあー』
この悲鳴は――
『貴様、このお方に石ころを投げるとはどういう領分だ!』
『だ、だってそいつが来てから国が大変じゃない! 圧政よ圧政!』
『なんだとー! 成敗してくれるわ!』
やっぱりさっきの女の子だ! 見るからにまずいことになってる。
『ダメです、主様!』
助けに行こうとした瞬間、パールに止められてしまった。
『退いてよ! このままじゃあ――』
『本来の力が出せないのですよ? それにもしやられてしまえば、主様はこの世界に閉じ込められてしまいます。そんなの、嫌ですから!』
『だけど――』
『あなたがいたから私はここにいるんです! だから、我慢してください!』
でも、でも――このまま見過ごすなんてできない!
『ごめんね、パール』
私はパールの制止を振り切った。そして馬車にかけていたチョビヒゲ鼻メガネを投げる。
近くにいたハーツはどんな顔をしただろうか。でも、私はそんなの気にかける余裕はなかった。
『貴様はっ――』
兵隊が何かを言いかけた。でもその瞬間に、ハーツが飛び込んでいく。
『もー、あとで怒りますからね!』
遅れてパールが魔法を発動させた。途端に馬車は動きを止める。
私はそれを見計らって、女の子の元へ走った。
『立って!』
『え?』
『いいから早く!』
女の子の手を引いてどこかへと走る。パールとハーツも、後を追いかけてくると信じて。
どうなってしまうのかわからない。でも、放っておくことなんてできなかった。
シィちゃんに似た女の子を助けたマオちゃん。
はてさて、この物語はどうなっていくのだろうか?




