ドリドリ? ドリーム!
身体がとてもふわふわしてる。なんだか飛んでいるみたい。
わぁー、美味しそうな綿あめ。とっても大きくて、食べきれそうにないよぉー
『あ、主様ぁー』
ん? 誰のことだろ?
何気なく声がした方向に目を向けてみると、そこには綺麗な白い髪をした男の子がいた。その男の子は黒いスーツを着ていて、どこかセバスチャンさんみたいな姿をしている。
『よかった。まだ何も食べてないみたいで』
『君、誰?』
『え? ああ、この世界で会うのは初めてでしたね。僕はパール。あなたに救われた夢猫と呼ばれる者です』
え? パールなの?
どこからどこを見ても、幼いセバスチャンさんにしか見えないよ。
『ちなみに今の僕の姿は、あなたにとって身近な異性の方を参考にしています』
『そうなんだ。それでセバスチャンさんなんだぁー』
それにしてもこのセバスチャンさん、いやパールを見ていると何だか違うなぁー。比べちゃいけないけど、こっちのほうがとても爽やかだよ。
ほら、今浮かべている屈託のない笑顔だって、とんでもなく澄んでいるし。
『どうしました?』
『え? ううん、なんでもないよ』
まあ、セバスチャンさんに何があったのかハッキリとはわからないけど、たぶんいい方向に成長したと思う。たぶんだけど。
『さて、主様。そろそろ本題に入りたいと思います』
『本題?』
『はい。まずこの世界が夢だということは気づいていますか?』
『え? ここ夢の世界なの!?』
『あー、やっぱりそうですか。まあ、気づいてないと思っていましたが』
言われれば、なんだか妙な感じがする。空を飛んでいるし、美味しそうな綿あめが空に浮かんでいるし。
『何にしても気づいてくれてよかったですよ。このままだと主様は危なかったですから』
『危なかったって、どうして?』
『簡単に説明しますね。主様はトラブルで気絶をしました。それを見計らって、この夢世界に閉じ込めた存在がいます』
閉じ込めた?
え? それってどういうこと?
『つまりのところ、主様を夢世界に閉じ込めた存在を倒さない限り目覚めない状態なのです』
『えー! そんなの困るよ!』
ずっと寝たままだと美味しいご飯が食べられないし。それにみんなが心配しちゃうよ。
『主様はとんでもないピンチになっています。だからこそ、僕が現れたのです!』
胸を張るパール。なんだかとっても頼もしい。
『ひとまず、この世界にある食べ物は口にしないでください。もし食べたら最後、一生目覚めなくなります』
『う、うん。気をつける』
『あと一つ注意してほしいのが、この世界では主様の力が使えないってことです。一応、この世界は主様の夢でできていますが、敵に支配されていますから気をつけてください』
不安がいっぱいだよぉー
まあ、どこか頼もしいパールがいるから大丈夫かな?
それにしても、私を夢世界に閉じ込めた敵ってどこにいるんだろ? このままじゃあ寝坊どころの話じゃないし。
『ダッピョンッ!』
変な鳴き声が聞こえた。顔を右に向けてみると、真っ黒なウサギが私を見つめている。
『ダッピョン、ダッピョン!』
『気をつけてください! それは敵の手下です!』
すっごい迫力に欠ける。私の夢だからかな?
何にしても、あんまり怖くないなぁー
『ダッピョン!』
真っ黒なウサギは飛びかかってきた。私はそれを左へ軽く動いて避けた。すると真っ黒なウサギは、そのまま綿あめに頭を突っ込んだ。
『ダ? ダ? ダッピョン!?』
『…………』
足をバタバタさせている。でも抜け出す様子はない。
何だろ? すっごーくかわいんだけど。どこか抜けてて、だけどなんか憎めないって感じがするよ。
『危なかったですね。もし頭突きを喰らっていれば、服が弾けていましたよ』
『えっ? そうなの!?』
恐るべし、真っ黒ウサギ。
というか、なんで夢の世界なのに裸にならなきゃいけないの?
『さて、そろそろ雑魚と戯れるのはやめましょうか』
『戯れているつもりはなかったんだけど』
『敵はこの夢世界の深層部にいます。気を引き締めないと、えっちぃことをされますよ?』
なんだかなんとも言えない気分になってきた。
どうして夢の世界なのに、そんな目に合わないといけないんだろ?
『ブルンブルン』
あ、また変なのが出てきた。
えっとこれは、ゼリー? なんだか毒々しい赤なんだけど、大丈夫なのかな?
『これは、レッドブルン! 主様、とってもラッキーな存在に出会いましたね』
『ラッキーなの?』
『そいつを倒すと破けた服が修復されます。ちなみにブルーやグリーンといった存在もいて、それらも服を直してくれますよ』
裸になること前提!?
え? 私の夢ってどうなっているの?
というか、敵は何をしたいの?
『ブルンブルン。ブルンブルン』
う、うっわぁー。これはさすがに気持ち悪い。
ま、まあ、倒せば服が直るんだし、あんまり無下にはできないか。
『さあ、倒してみましょう。パンチ一発を当てれば盛大に飛び散るはずです!』
『え、えー……』
どれだけ弱いんだろ? というか、この状態でそんなことになったらビチョビチョになるんじゃあ……
『さあ、さあ!』
パールの目が輝いてる。そんなに飛び散らせたいのかな?
まあ、一回だけならいいかな?
『えいっ』
『ブルンブ――。ドバンッ!』
わっ、弾けた!
うひゃあぁー、思った通りにビチョビチョになったよ。こんなので服って直るの?
『おおっ、主様! 思った以上にえちぃです!』
パールはそう言って親指を立てていた。
私、何のために攻撃したんだろ?
おかしなおかしな夢世界の物語が始まった!
あれ? パールの遊び相手はどうなった?
何にしても、マオちゃんは夢世界から脱出するために奮闘する!
パールはパールで活躍するぞ!
たぶんだけど!




