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ドラゴンさんのプレゼント

『礼を言うぞ、人間共よ』


 元気になったシャーネルドラゴン。でも私はものすごく落ち込んでいた。

 だって、全然ロマンチックなキスじゃなかったんだもん。


「しかし、マオ様の紋章は絶大な効果がありますね」


 のほほんと感想を口にするセバスチャンさん。私はついついキッと睨んでしまう。ああ、なんでこんな形でキスをされちゃったんだろう。もっといい雰囲気があったらよかったのに。


「それにしても、ドラゴンよ。どうして傷を負っていたんだ? お前は絶対的な力があっただろう?」

『スライムよ。我にも何と答えればいいかわからん。ただ、空を飛んでいたら突然攻撃されたとしか言えん。あれほどの威力は、おそらく賢者だと思われるが……』


 賢者? もしかしてあの賢者かな?

 どうしてそんな人がこんな所にいるんだろう?


「ふむ、全貌が見えませんから何とも言えませんが、厄介なことになっていそうですね」

「もし賢者が魔物さらいに関わっているのでしたら、かなり気を引き締めないといけませんね」


 なんかセバスチャンさんとシィちゃんがとても難しい顔をしている。

 うーん、いろいろと複雑なことになっているのかなぁ?


『汝らには助けられた。ささやかな礼だが、世界の千分の一を汝らにやろう』


 少なっ!

 え? ちょっと待って? このドラゴンって島の守り神じゃなかったっけ?

 というか話が飛躍すぎてついていけないんだけど。


「おや、なかなかの大盤振る舞いですね」

「マオ様、もらっておきましょうよ」


 え? なんで二人はそんなに理解が早いの? というかもらってもいいの?


「もらっておきなされ、魔王さま。ドラゴンの好意はそうそうないんですからね」


 スライスさんがとても渋い顔をしている。え? この状況を理解できてないの私だけ?


『どうした? いらないのか?』

「え、ええと……、ください」


 なんだかわからないうちに新しい領地をもらいました。でもよかったのかな? というかどこをもらったんだろう?


『よかろう。では東に存在する島を汝らにやろう』

「あ、ありがとうございます」


 島かぁ。そりゃ千分の一だもんね。国とかそういう代物じゃなくてよかった。


『そこは倭の国という島国だ。我が支配下に置いていたが、今から汝らのものになったと通達しておこう』

「ちょっと待ってください」


 今、なんて言いました?

 倭の国って言いましたよね?

 そこって、カッパとかそういうバケモノがいる国ですよね?

 というか国をもらっちゃっていいんですか?


「ああ、カアたんの故郷ですか」

「ノープロブレムですね。というかちょうどよかったです」


 やっぱりカアたんの故郷なの!? というか何がちょうどよかったの!?

 やばい、いろんなことがありすぎて混乱してきた。何がどうで、どうなっててこんなことになっているのぉー!?


『どうした? いらないのか?』

「はわわわっ」

「おや、オーバーヒートしてしまいましたね。少し刺激が強すぎたかもしれません」


 えっと、わたしはなにをしていたんだっけ?

 あ、そうだ。おかあさんとみーしゃのふたりとおかしをつくっていたんだ。それでおいしいくっきーができて、たくさんたべようってやくそくをしていたんだ。

 そしたらへんなおおかみさんがあらわれて、おかあさんとみーしゃをたべたんだ。わたしはひっしににげたんだけど、にげきれなくてたべられて――


「マオ様、しっかりしてください! マオ様!」

「おおかみさんがわたしのからだをなめまわして、なんどもなんどもあじみして、それでそれで――」

「すみません。主がしばらく戻ってきそうにないので私が代わりに返事をします」


『うぬ。ではこの話は了承ということでよろしいか?』

「はい。我々は世界征服を望む魔王軍ですので」

『わかった。しかし、時代が変わったものよ。まさかかつて魔の者を討たんとした勇ましき者の子孫が、魔の者に仕えているとはな』

「時代とはいつも変わるものですよ。時には繰り返すとも聞きますがね」

『皮肉めいたものよ』

「では、通達をお願いいたします」


 ハッ、私は一体何を?


「よかった。正気に戻られたんですね」

「そうだ、シィちゃん! おかあさんとミーシャがオオカミさんに食べられちゃったの! そんで私は一生懸命に逃げたんだけど丸飲みされて――」

「あの、何を言っているのですか?」


 あれ? 確かに私って何を言っているんだろう?


「あ、マオ様。お話はつけておきましたよ」

「え? もらっちゃったの?」

「はい。我々の目的は世界征服ですから」


 なんだかよくわからないうちにお話は進んでいました。

 こうしてトトカ村へ向かう途中で、私達は新しい領地を手に入れたのです。


「めでたいのかな?」

「はい、とてもめでたいですよ」


 なんだか腑に落ちないけど、まいっか。


ドラゴンの大盤振る舞い。

カアたんの故郷は一体どうなるのか!?

そのうちそんなエピソードを書きます。たぶん!


次回は明日の午前7時頃に更新予定です。

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