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ドッキドキの借金交渉

 銀行に来てしまった。

 うう、シィちゃんめ。嫌だって言ったのに無理矢理着替えさせるなんて。

 絶対に後で仕返ししてやるぅー!


「さて、マオ様」

「は、はい!?」

「シィからある程度説明されていると思いますが、少し命を懸けてもらいますよ」


 ひぃー! い、命を懸けなきゃいけないの!?

 ヤダ、そんなのヤダァー!


「帰るぅー! 命なんて懸けたくないよぉー!」

「ダメですよ! ここまで来て引き返すなんてあり得ません!」

「でも死にたくないよぉー! 私、こう見えてもまだ一四年しか生きてないし!」

「ですがあなたは魔王です。ここは率先して命を懸けるのが当たり前でしょ!」

「そんな当たり前、聞いたことがないよぉー!」


 ヤダヤダヤダァー! 絶対にヤダァー!

 こんなことで命を懸けなきゃいけないなんて、思ってもなかったんだよぉー! というか、なんで借金で何かを失わないといけないの? そこまでお金って偉大なの?

 私はそこまでしてお金は欲しくないよぉー!


「仕方ありませんね」


 困り顔のセバスチャンさんは、一旦私の身体から手を離す。

 やった、私のわがままが初めて通った!

 そう喜んでいると、セバスチャンさんは私の懐に潜り込んだ。


「ひゃあ!」


 身体が簡単に持ち上げられた! そんな、あんなに踏ん張っていたのに、こんなに簡単に打破されるなんて――


「さあ、行きましょうか」

「離してぇー!」


 行きたくないぃー!

 でもセバスチャンさんはまっすぐと銀行へ進んでいく。懸命に足をばたつかせているのに、一向に離してもらえない。

 ああ、お母さん。私、お金で命を落とすかも。ごめんね、こんな親不孝な娘で。

 もっとミーシャに優しくすればよかったよ。メイちゃんとも遊びたかったな。

 どうして私はこんな目に合わなきゃいけないんだろ? 私、何かしたかな?


「ああ……」


 銀行の中へ私を抱えたセバスチャンさんは入っていく。そして絶望的な音が響くと共に、扉は閉まった。

 もうみんなに会えないかもしれない。そんなことを考えていると、セバスチャンさんは突然足を止めた。


「お久しぶりですね」

「ホッホッホッ。お前さんは相変わらずみたいだねぇ」


 とても優しそうな声がする。

 目を向けると、そこには白くてもっさもさのヒゲをした小さなおじいちゃんがいた。小さな丸メガネとアジサイが散りばめられている浴衣みたいなものを着ていて、首にかけている赤いタオルがどこか印象的だ。


「その子は、新しい魔王さまかね?」

「ええ。マオ様でございます」

「これはこれは。いいビジネスができそうだねぇ」


 何だろ。とても優しそうな雰囲気がする。

 よくわからないけど、なんだか安心ができるよ。


「まあ、ここだとなんだからね。こっちに来て話をしようか」


 おじいちゃんの案内に従ってセバスチャンさんが歩いていく。私は、逃げないようにするためか担がれたままだ。

 よく見るとここの銀行って、なんだか拾い。見るといろんな魔物がいて、みんながみんな相談をしているみたいだ。


「さてと、ここらで話を聞こうかね」


 ようやく私はセバスチャンさんから下ろされる。一瞬逃げようと思ったけど、すぐに手首を空間に固定されてできなかった。

 逃げられない私は、仕方なく椅子に座る。そしてとても優しそうなおじいちゃんと向かい合った。


「それで、今回はどういった件で来たのかね?」

「我が魔王軍の資金ぶりが芳しくありませんでしてね。生活費が足りないので融資をしてもらおうと来ましたよ」

「またそれかね? 相変わらずだねぇ」

「どうにかしていただけませんか? モルディ様」


 モルディって呼ばれたおじいちゃんは、伸ばした白いヒゲを撫でながら少し考える。その途中、チラリと私を見た。

 何だろ、どこか品定めされているように見えたけど気のせいかな?


「ふーむ、別に融資は構わんが。だがその子の魔王レベルがねぇ」

「そこをどうにかしていただけませんか? 将来性はありますし」

「しかし、六レベルでは低いねぇ」


 借金するのに、魔王レベルって関係するの?

 よくわからないけど、モルディさんはとても渋っている。


「そうだねぇ、今のままだと一万ゴールドかね」

「もう少し上げてくれませんか? 五万ゴールドが理想です」

「厳しいねぇ。限界は二万ゴールドだねぇ」


 セバスチャンさんの顔が曇る。よくわからないけど、あんまり芳しくなさそう。

 うーん、背に腹は代えられないけど、たぶんもうちょっとないとお城の切り盛りができないのかも。


「仕方ありませんね。ではマオ様の靴下でどうですか?」


 ……はい? セバスチャンさん、私の靴下がなんですか?


「ふーむ、なかなかのかわいさだからね。魔王でもあるから、問題はないかもしれんがねぇ」

「やはり厳しいですか。ではマオ様のパンツを――」

「ちょ、ちょっと待ってセバスチャンさん!?」


 一体何の話をしているのですかっ?

 全く話の全貌が見えないんですけど!


「ああ、説明してなかったですね。ここには魔王専用の融資窓口がありまして、その担当をモルディ様が行っているんですよ。ですが、どうしてもお金を出してもらえないこともあるんですよ。その時は、魔王さまが持っている何かを担保にしてお金を借りるんです」

「だからって、なんで私のパンツを!?」

「どんな存在でも女性のパンツは高く見積もってくれるんですよ。本当なら最終手段だったのですが、そうも言っていられなくなりました」


 朗らかに笑っているセバスチャンさん。私はその顔を見て、どんな感情をぶつければいいんだろ?


「さて、マオ様。そういう訳でパンツを脱いでください」

「あなたは真顔で何を言っているんですか!?」

「魔王軍の存続のためです。お願いします」


 鼻血を流しながら頭を下げるセバスチャンさん。精一杯の誠意を表しているみたいだけど、全然そうは見えないからね!

 というか、なんで今脱がなきゃいけないの!? しかもこんな所で!

 あり得ない、絶対にあり得ないから!


「まあまあ、一度靴下を試してみなさい。いきなりパンツは大変だしねぇ」

「そうですね。仕方ありません、マオ様の靴下で我慢します」


 我慢って何? セバスチャンさんは一体何をしたいの?

 こうして私は、一度靴下を脱ぐことになった。

 借金って、こういう感じにするのかな?


なんだか変な方向に話が進み始める借金交渉。

マオちゃんは自分のパンツを守ることができるのか?


ちなみにセバスチャンは平常運転です!

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