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生まれ変わった邪神さま?

 うう、身体が痛い。いつもと違って下が固いから、眠ることもできなかったし。

 ベッドが恋しいよぉー。いくらセバスチャンさんが寝袋を用意してくれたって言っても、ふかふかじゃなかったし。わがままかもしれないけど、やっぱりベッドで寝たい。


「おはようございます、マオ様」

「おはよー、セバスチャンさん……」


 セバスチャンさんはいつものように清々しい笑顔を見せてくれた。どうしてあんな固い寝床でそんな顔ができるのかとても不思議だよ。


「おや、眠れていないようですね。それでは身体が持ちませんよ」

「わかってるけど、慣れてないし。というか、セバスチャンさんはどうしてそんなに元気なんですか?」

「子供の頃、よく父にサバイバル訓練を受けたものでしてね。その賜物ですよ」


 セバスチャンさんは朗らかに笑う。でも、なんだか想像するのが嫌になった。

 もし私がそんな訓練を受けたら、一日中泣いちゃっているかも。


「さて、マオ様。申し訳ございませんが、傷の具合を確認させていただけませんか?」

「え? ああ、じゃあカランさんを呼んで――」

「いいえ。私に見せてください」


 ……え?

 ええー! ど、どうしたんですか? セバスチャンさん?


「え? え?」

「お願いいたします。どうしても見たいんです」


 そ、そんな真剣な目で頼まれても……。傷を見せるってことは、私の胸を見るってことにもなるし。


「で、でもぉー」

「ええい、じれったい」


 私が戸惑っていると突然、手足に黄色い円陣が現れた。円陣は私の身体を大きく広げるように移動して、そのまま空間に固定される。


「ちょ、ちょっとセバスチャンさん!」

「では、確認させていただきますね」


 や、やだぁー!

 こんな形でまた見られるなんて、いやだー!

 でもセバスチャンさんは遠慮なくパジャマのボタンを取っていく。このままじゃあヤバいよぉー

 そうだ、天使さんだ。昨日と比べてある程度は回復しているから、出てきてくれるかも。


「これは――」


 って、遅かった! 私の胸が、またセバスチャンさんに見られちゃってる!

 は、恥ずかしい。こんな私を見ないでぇー!


「私は、バカだ」


 顔を赤くしていると、セバスチャンさんはなぜか俯いていた。

 あれ? どうしたんだろ? よくわからないけど、落ち込んでいる。


「大切な主を守れないとは。あの時と一緒じゃないか」


 あの時って? それよりも私の胸を隠してくれないかな?


「申し訳ありません。綺麗な身体に、傷をつけさせるようなことをして」

「そ、それはいいんだけど……」

「いえ、よろしくありません。微力ながらですが、回復魔法をかけておきます」


 セバスチャンさんはそういって何かを呟いていた。

 何だろう。セバスチャンさん、そんなに私のことを気にしていたのかな?

 なんだかちょっと嬉しいな。


「これでよし。ボタンをつけますね」

「じ、自分でできるからいいよ。それよりも早く拘束を解いて!」

「かしこまりました」


 やっと手足が自由になった。うう、こんな形でまた胸を見られるなんて。

 でも、あんなに真剣なセバスチャンさんは見たことがない。


「どうしました?」

「え? な、なんでもないよ」


 私はつい浮かんじゃう笑みを誤魔化しながら、ボタンを留めた。セバスチャンさんがとても心配してくれたし、だからなんだか嬉しい。

 それだけ大切に思ってくれているのかな? もしそうなら、セバスチャンさんは私のことをどう思っているんだろう?


「マオ様、少しよろしいでしょうか?」

「どうしたの?」

「何か異様な気配を感じ取ることができます。ですから、動かないでください」


 異様な気配?

 それって何だろ?


「数は、一つ。刺客かそれとも単なる覗きか?」


 セバスチャンさんは研ぎ澄ます。ゆっくりとその異様な気配というのに、攻撃をする機会をうかがっていた。

 でも、その静寂は「ガサッ」という藪が揺れる音と共に破られる。


「逃しません!」


 セバスチャンさんが指を鳴らす。途端に揺れた藪が凍りついた。

 うわっ、何この魔法!? こんなの見たことがないよ。


「ふむ、動きが止まりましたね。少し確認して参ります」


 そういってセバスチャンさんは凍りついた藪に近づいてこうとした。だけど、足を一歩踏み出した瞬間にその氷は砕ける。


「セバスチャンさん!」


 セバスチャンさんは咄嗟に身構えた。そして氷を砕いて突撃してくる何かを、真正面から受け止めていた。


「ぐっ」


 セバスチャンさんは突撃してきた何かを上空へ放り投げる。するとそれは、何回か回転しながらも体勢を立て直して宙に留まった。


『ほう、呪いを完全に解いたようだの』


 私は飛んでいるそれに目を向ける。そこには白い翼を持ち、立派な赤いトサカを頭につけているニワトリさんがいた。


「…………」


 あれ? ニワトリ?

 ニワトリって、空飛べるんだっけ?


「これはこれは、オクトーパン様ではないですか」

『ホッホッホッ。否、我の今の名はチキン・ザ・ハート! ニワトリの神なるぞ!』


 やっぱりニワトリなんだ!

 え? 飛んでいるよ? どうして飛んでいるの!?


「ということは、やられてしまったのですねチキン様」

『うぬ、転生は久々だ。これではわしが積み上げてきた悪徳がパァーだのぉ』


 なんで流しているのセバスチャンさん!? ニワトリは飛べないんだよ!?


『新しい身体ということもある。ゆえに付き合ってもらうぞ、セバスチャン!』

「喜んでお相手させていただきますよ、チキン様」


 私はそれから十分ほど、セバスチャンさんと邪神さまが戦う光景を見つめていた。

 それはとても激しいもの。だけど、でも、やっぱり――


「ニワトリが飛ぶなんて、おかしいよ!」


 ツッコミを入れずにはいられなかった。


ヴァルガンにやられた邪神さまはニワトリの神として生まれ変わった。

果たして戦力になるのか? それともただのニワトリか?


それは現時点、笹野葉ですらわからない!

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