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第6話 マオとスライムおじさん

 うう、見られた。見られちゃったよぉ……

 私の裸を、セバスチャンさんに。

 うわーん! 恥ずかしい! 恥ずかしすぎて泣きたくなっちゃう!


「マオ様」

「ひゃあ!」


 ベッドの上で枕に顔を埋めているとセバスチャンさんが声をかけてきた。あまりにも突然だったからすっごく変な声が出ちゃったよ。


「な、何?」

「夜遅くに申し訳ないのですが、お会いしたいという者がおりまして」


 目を合わせづらい。というか裸を見られたからすごく意識しちゃう。


「え、えっと、どういう人なの?」

「人ではありませんね。魔物です」

「魔物?」


 魔物って、あの魔物かな? どうして私に会いたいんだろ?

 あ、そっか。私は今、魔王だった。だけどなんでこんな時間に会いたいんだろう?


「どういたします? 後日改めてもらいますか?」

「うーん。せっかく訊ねてくれたんだし、いいよ」

「かしこまりました。では、お呼びしてまいります」


 セバスチャンさんはそう言って部屋の外へと出ていった。それにしてもお客さんが魔物かぁー。なんだか新鮮というか、すごいというか。魔王っていう実感が出てきたなぁー。

 あ、そうだ。一応パジャマから着替えておかなきゃ。お母さんがいつも『お客さんと会う時はちゃんとした格好しなきゃダメ』って言ってたし。

 でも代わりの服なんてあるのかな? 一応、私のお洋服のタンスはあるんだけど。


「探しがてらに調べてみよう」


 まずは一番上の引き出しから見てみよ。


 うわっ、何これ!? 見たことがないパンツやブラばかりだよ! えっと、この細いのは何だっけ? 確かTバックとかそういう名前だったかな?

 えっとこれは、ガーターベルトだったかな? なんでこんなものばかりあるんだろう?


 まあいいや。ひとまず下着は置いておこう。

 重要なのはここから。一番大きい部分! ここにまともなお洋服が入っていれば全て問題なし!

 さあ、覚悟を決めていざ扉の向こうへ!


「…………」


 えっと、この黒いマントとガイコツの被り物は何だろう? なんかツノみたいなのがついているカチューシャもあるし。

 もしかしてこれ、魔王の正装?

 確かに私が思い描いている魔王ってこんなの着ていた気がする。でも、これ私に似合うのかな?


「マオ様、入ってもよろしいですか?」

「あ、ちょっと待ってー」


 ええい、時間がないし仕方ない。これを着てみよう。


「うーん」


 これ、パジャマと似合っているのかな? なんか変に見える気がする。というか、サイズが合ってないし。とっても大きくてブカブカだよ。

 仕方ない。コートじゃなくてマントを羽織ってみよう。


「ううーん」


 さすがにマントだけじゃあ、パジャマは隠せないか。でもこれ以上は時間をかけられないしなぁー

 うん、じゃあ諦めて次にいこう。

 さっきも気になったけど、なんだかカチューシャがいっぱいあるなぁー。

 あ、このネコ耳のやつかわいー


「マオ様、まだですか?」

「もうちょっとだけ待ってー」


 いつまでも待たせてられないし、とにかくつけてみよう。


「…………」


 あれ? 魔王ってこんな感じだっけ?

 これ、単なるコスプレじゃあ……


「マオ様―」


 まあいいや。待ちきれないみたいだし。

 あとはそれっぽく振る舞ってみようっと。


「いいよぉー」


 私は仕事をする椅子へ座って合図を送った。扉が開かれるとそこには立派なヒゲをしたスライムがいた。スライムは私を見るや否や、扉を開いたセバスチャンさんに顔を向けていた。


「なぁ、セバスチャン。あれが新しい魔王さまか?」


 セバスチャンさんは私に顔を向けると、途端に口を抑えた。どこか笑いを堪えているような姿がとても珍しく感じていると、セバスチャンさんはこんな風に言い放つ。


「は、はい、あの、方が――ププっ、魔王の、マオ様、です――ププっ」


 そんなにおかしい格好をしているのかなぁ?

 私はネコ耳カチューシャを外してセバスチャンさんを睨みつける。でもセバスチャンさんはお腹を抱えて笑いを堪えるので精いっぱいなのか、全然気づいてくれない。

 むぅー、そんなに変なのかなぁー?


「これはまた、個性的な格好をしているな。まあ、前の奴ほどズボラではなさそうだが」


 ピョンピョンと跳ねながらスライムが向かってくる。そして私の前に立つと頭を――実際は身体全体に見えるけど――丁寧に下げてくれた。


「はじめまして。私は近くにある村の村長をやっているスライスです。夜分遅くに無理を言ってしまって申し訳ありません」

「あ、ううん。大丈夫ですよ。それよりスライスさん、一体どういう用件で?」


「実は、我々が暮らしている村が何者かに襲われていまして。私達で解決したいのですが何分、相手は勇者もどきと言いますか……」

「勇者もどき? それって勇者のたまごってこと?」

「おそらくは。だた勇者と違って若い娘達をさらっていくのですよ。だからどうにかしたいのですが……」


 うわぁ、何それ。人さらいならぬ魔物さらい? 何だか放っておけないなぁー。


「ふむ、魔物をさらうとは珍しいですね」


 セバスチャンさんが復活した。でも若干顔を引きつらせているんだけど、大丈夫かな?


「どうかお願いします、マオ様。若い娘達を救ってください」


 結構困っている感じだ。よし、ここはひと肌を脱ごう。


「わかった。一緒に魔物さらいをやっつけよ、スライスさん!」

「おお、ありがとうございます!」


 よーし、そうなったら明日は早く起きなきゃ。あ、でも魔王城って空けてもいいのかな?

 というか他の人を派遣って形にするのかな?


「いい機会ですので城の外を見て回りましょうか」


 ニコッと笑うセバスチャンさん。私はそれに歓喜した。

 こうして私は初めて城の外を見て回ることになる。ワクワクがとまらないちょっとした冒険が、朝になると同時に始まるのだった。


次回からはお城の外へちょっとした冒険がはじまります。

いろいろ見せていくよー


更新は明日の7時頃!


2017/02/27

修正をしました!

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