あぶない赤いオールバックさん
長らく休載していました。
これから頑張っていきます。
う、うーん。なんだか気持ち悪いよぉー
『お母さん、お母さん! 起きて!』
「もう少しぃー」
セバスチャンさんが起こしに来るまで。そう言おうとしたら、メイちゃんがとても慌てたように叫んだ。
「お城が大変なの! 早く起きて!」
「ふえ?」
何が大変なの? あ、そういえばセバスチャンさんが子供に戻っていたんだっけ? もしかしてそれで騒ぎが起きているのかな?
それにしても身体が重いなぁ。なんだかわからないけど、動きにくい。
「ふふふ、おはようハニー」
その言葉は私の耳元で甘く囁かれた。途端に背筋が震えて、よくわからないけどとんでもない寒気を覚えた。
思わず起き上がって声がしてきた方向に目を向ける。するとそこには、赤い髪をオールバックにした男の人が私の隣で寝そべっていた。
「だ、誰?」
「ふふふ、誰とは心外だね。僕の知らないのかい?」
知らないも何も、初めて会ったし……。
『お母さん!』
メイちゃんの声が聞こえた。思わず周りを見渡してみるけど、どこにも姿が見えない。
あれ? メイちゃんはどこにいるんだろう?
「お探し物はこれかな?」
赤いオールバックさんは怪しく笑いながら見覚えのあるコインを取り出す。するとその表面には今にも泣きそうな顔をしているメイちゃんがいた。
「メイちゃん!」
なんでメイちゃんがこんな目に。
一体何が起きたの!?
「ふふふ、君が僕の手紙を受け取った時点で負けは決まったのさ」
手紙。それってもしかして、昨日コリー君からもらったあの黒い封筒のこと?
「まあ、一種の転移魔法が書かれた紙が入っていたのさ。どんなに頑強な守りでも、中はスカスカなもの。ここもそれと変わらなかったよ」
この人は一体……。それよりもメイちゃんをどうにかしないと。
「メイちゃんを離して!」
「ふふふ、そんな言い方はよろしくないな」
赤いオールバックさんはメイちゃんを閉じ込めたコインを折り曲げようと力を込める。途端にメイちゃんは大きな声で悲鳴を上げた。
「や、やめて!」
「ふふふ。そんなにこの子が大切かい?」
「そうだよ! だからやめて!」
「なら、僕が今出す条件に頷いてくれるかな?」
条件? それって一体……。
『だ、ダメだよお母さん! そんなことしちゃダメ!』
「君は黙っててくれないかな? それとも、死にたいかい?」
『お願い! お母さん、今すぐ逃げて!』
そんなのできる訳がない。メイちゃんは短い間だけど、一緒に過ごした大切な人だもん。
だから、助けるためならどんな条件だって――
「いいよ。何が望みなの?」
「ふふふ、いい子だ」
ニッコリと笑う赤いオールバックさん。そしてゆっくりと私に近づき、そのまま身体を抱引き寄せた。
「僕が提示する条件。それは君が僕と結婚することさ」
「……へ?」
結婚? 結婚って、え?
もしかして永遠の愛を結びなさいとか神父さんが言うあれかな? それを、この人とする?
「えぇえええぇぇええぇぇぇ!」
待って! 待ってよ! そんなの聞いてないよ!
私まだ十四歳だよ? 結婚できる歳じゃないよ!?
「嫌かな? マイハニー?」
「え、えっと……」
どうしよう。すごく返答に困る。
というか、この人の顔がなんでこんなに近いんだろう?
『ダメ! 絶対ダメ! お母さん、そんな奴と結婚しちゃダメ!』
メイちゃんが必死に叫ぶ。どうしてそこまで必死なのかわからないけど、とにかく叫んでいる。
『そいつはお母さんの敵だよ! それにそいつのせいで城のみんなが――』
「え?」
城のみんなが、どうしたの?
思わず訊ねようとしたその時、赤いオールバックさんはコインを床に叩きつけた。
「メイちゃん!」
メイちゃんは呼びかけに応えない。それを見た赤いオールバックさんは、微笑みを浮かべながら「気絶させただけさ」と囁いた。
「どうしてこんなことを……」
「まだ条件を飲んでもらってないからね。早く決断してくれれば、丁重に扱っていたさ」
柔らかい笑顔を浮かべる。でもそれはどこか怖くて、なんだか近寄りがたい。
「さて、そろそろ決断してくれるかな? 僕と結婚するのか、しないのか?」
メイちゃんを助けるには、この人と結婚しなくちゃいけない。そうすれば全てが解決する。
でも、何だろう。なんでこんなに嫌な気持ちになるんだろう。
それにこの人の言葉が、いまいち信じられない。
だけど条件を飲まなきゃ――
「魔王!」
私がどう返事をするか迷っていたその時だった。幼いけど、とても勇敢な声が耳に入ってきたんだ。
振り向こうとする。だけどその子はあっという間に赤いオールバックさんの懐に入って、木刀をお腹に突き刺していた。
「セバスチャンさん!」
小さなセバスチャンさんは、ずっと赤いオールバックさんを睨みつけていた。だけど、そんなセバスチャンさんを赤いオールバックさんは見下ろすように笑っていた。
「へぇー、たいした男だね、君」
その目は、恐ろしいぐらい赤かった。
全身の毛が逆立つほど、怖かった。
赤いオールバックさんが大きく右手を振り上げる。それだけでヤバいって感じられた。
「天使さん!」
振り下ろさせちゃダメだ。
絶対にやらせてはいけない。
許したらセバスチャンさんは殺される。
「あぐっ」
天使さんを使って腕を抑える。でも、振り下ろすことを止められなかった。
私にできたのは、セバスチャンさんに当たらないように軌道をずらすことだけ。
「魔王!」
だけどそれで天使さんが身体を斬られちゃった。
繋がっているからかな? 私の身体も裂けちゃった。血も、すごく出ちゃったし、それに――
「しっかりしろ、おい!」
セバスチャンさんが泣いている。せっかく助かったのに、どうして泣いているんだろう?
あれ? なんだか眠いな。朝が早かったからかな?
「――――」
セバスチャンさんが何かを叫んでいる。でも、何を叫んでいるんだろう?
「――――」
ねぇ、何を叫んでいるの?
ねぇ、どうして泣いているの?
セバスチャンさん――泣かないでよ……。
とーってもヤバい状況のマオちゃん。
あれ? この作品ってこんなにシリアスだったっけ?
どうなるマオちゃん?
どうするセバスチャン?
次回、いろいろと展開するぞ!




