邪神さまvs切り裂きカアたん
少々遅れてしまいました。
申し訳ございません(泣)
「お、お待たせしました!」
お部屋が用意できたのか、シィちゃんが駆け足で帰ってきた。私達と邪神さまは息を切らしているシィちゃんの案内に従って部屋へと向かった。
それにしても、邪神さまってタコみたいだなぁー。もしカアたんがいたら料理しちゃうんじゃないかな? でも、邪神さまがカアたんに負けるはずないし、食べられちゃう心配はないかも。
「くっそ、くっそ、くっそ! なんで俺があんな目に……」
わっ、噂をしていればカアたんだ! な、なんだかとても不機嫌だし、一体どうしたんだろ?
「おや、カアたんではありませんか。昨日はお楽しみになりましたか?」
「ああ!? 何ふざけたこと言ってんだセバスチャン。てめぇらのせいでとんでもない地獄を見たんだぞ!」
「そう言って甘えたんでしょう? 相手は年上の幼馴染みですからね」
「ぶっ殺すぞ、てめぇ!」
うっわー、セバスチャンさんがいつも以上に楽しそうだ。それに引き替え、カアたんがとてもわかりやすいほどイラついている。
で、できればあまり触れたくないんだけど……
「あ? なんだそのタコ?」
やばい、邪神さまがロックオンされた!
『ほっほっほっ。わしは邪神のオクトーパンだのぉ。名前くらいは聞いたことあるだろ?』
「ねぇな。それにしてもその足、いい材料になりそうだ」
カアたん、邪神さまのこと知らなかった! そして嫌な展開になりつつあるよ!
大丈夫かな? このままじゃあ邪神さま、本当に食べられちゃうんじゃあ……
『やめとけやめとけ。わしの身体には毒がある。人間なら即死もの、魔物でもタダではすまぬ代物だぞ?』
「ハン! んなの毒抜きすりゃいいだけだろうが。ケケケ、それにしてもてめぇ、いい感じの肉質じゃねぇか。ちょっと捌かせろや」
カアたんが腰に添えていた包丁を取り出す。どうやら本気で邪神さまを食べる気になったらしい。
ま、まずいよぉー。カアたんがもし美味しいって判断したら私達の夕食に出されちゃうかもしれない。でも、あのカアたんに戦いなんて挑みたくないし……
『ま、待て。本気でわしを食べる気か? わしは邪神だぞ?』
「邪神だろうが何だろうが知ったことか。おら、諦めて俺に斬られろ」
『や、やめろ! お、おい、セバスチャン! この無信教をどうにかしてくれんかの!』
「すみません、私もあなた様のタコ足に興味がございます。ですのでどうか捌かれてくれませんか?」
『セバスチャーン!』
あ、セバスチャンさんも食べたかったんだ。というか人間は危ないって邪神さまが言っていたんだけど。
うう、このままじゃあ私も食べることになっちゃうかも。それはなんか嫌だなぁー
「つーかまーえたー」
『ぬおっ!』
邪神さまが油断していると、後ろからメイちゃんが抱きついた。メイちゃんはそのまま邪神さまを持ち上げていた。
『うおお! 離せぇぇ!』
「わっ、暴れちゃダメだよぉー。諦めて私達に食べられちゃって」
『いやだー!』
懸命に足をバタバタさせる邪神さま。でもどんなに暴れてもメイちゃんは離そうとしない。
そんな邪神さまを見て、カアたんは怪しく笑っていた。その微笑みはとても禍々しくて、だけどどこか楽しそうな恐ろしいものだった。
「ケケケ。ガキ、あとでてめぇにも食べさせてやるぜ!」
カアたんは暴れている邪神さまの足を掴んだ。そして包丁を高く振り上げて、とても素敵な笑顔を浮かべた。
「今日の晩飯は、タコ飯だぁぁ!」
『やめろぉぉ!』
二つの叫び声が重なる。そして邪神さまの足が一本斬り落とされた。
『ぬぉおおぉぉぉ!』
邪神さまは泣いていた。たぶん、とーっても痛かったんだろう。
一方カアたんは斬ったタコ足を生で口の中へと運んでいた。そしてそのままくちゃくちゃと音を立てて毒味をする。
「これは――!」
カアたんの目が大きく見開かれる。
「この肉質、この歯ごたえ、この味わい……。最高じゃねぇか!」
え? 美味しかったの?
毒は? 毒はあるって言ってたよ?
「ケケケ、てめぇ嘘をついたな。毒はねぇし、しかもとんでもなく美味いじゃねぇか。まさに絶品といえる材料だぜ? そうだな、これなら最高のタコ焼きが作れそうだ」
『き、貴様! わしをまだ食べる気か!?』
「ああ、そうだ。足も、頭も、何もかも食い尽くしてやるよ!」
う、うわぁ、なんだかわからないけど邪神さまがピンチだ。このままじゃあホントに夕食に出されちゃうかも。
それはなんだか嫌だ。なんとかして助けないと!
「セバスチャンさん、カアたんを説得して!」
「いやです。私はタコ焼きを食べたい」
「えー!」
セバスチャンさん、邪神さまはお世話になった方じゃなかったんですか?
というか、すごい目を輝かせてよだれを垂らしていますが大丈夫ですか?
うーん、でもセバスチャンさんがやる気がないなぁ。こうなったらメイちゃんを説得しなきゃ。
「メイちゃん、邪神さまがかわいそうだから離してあげてよ!」
「お母さん。この世には五万と美味しい食べ物があるんだよ? その中の一つ、邪神さまを逃がすなんてあり得ないよ」
「えー!」
メイちゃんもメイちゃんで目を輝かせてよだれを垂らしている。
あれ? これ、どうしようもないや。
「あと三本はいただくぜ」
『ぬぉおぉぉおおぉぉぉ! 足が半分になるぅぅ!』
「なぁに、歩けるようにバランスはとってやるさ。ケケケ」
ごめんなさい、邪神さま。私の力じゃあ止められません。
『わしの足がー!』
ご愁傷様です。
邪神さまの足が半分に!
そしてカアたんクッキング行きに!
次回は明日午前8時に更新予定です。




