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まっくろな商人さん

またちょっと遅れてしまいました。

申し訳ございません(泣)

 ああ、お腹が空いた。そういえばどのくらい寝てたんだろう?

 うーん、お腹の感じからするとたぶんお昼ぐらいになってると思うんだけど……


「ククク、腹は決まったか? 魔王」

「私達を昇進させるのですー」

「給料アップさせるのだ!」


 向こうは向こうでもう隠す気がないみたいだし、どうすればいいのかなぁー?


「ねぇ、メイド隊のみんな」

「なんだ?」

「さっきも言ったけど、私は別に昇進させてもいいよ? でも、私よりも聞かなくちゃいけない人がいるんじゃないかな?」

「「「…………」」」


 ああ、やっぱり黙っちゃった。でもやっぱり後ろめたさはあるんだね。

 ならこれを突破口に使えば解放してくれるかも。


「まあ、いきなり昇進は厳しいかもしれないけど、お給料をアップさせることはできるかもしれないかな?」

「何?」

「ホントですかー?」

「あのメイド長に口を聞いてくれるのか!?」

「うん。まあ、三人はどうしても欲しいものがあるんでしょ? だったらそのことを正直に話せばリフィルさんだって許してくれると思うよ?」


 リフィルさんもそこまで厳しい人じゃないと思うし、それに私の一存でお給料を上げたらそれこそカミナリものだと思うし。

 それにどうしてもお金がいるなら相談をしなくちゃ。


「どうする?」

「どうしましょうかー?」

「このまま拘束しているのもなんだし、解放しちゃう?」

「でも、バックられたらそれこそ終わりだぜ?」

「ですがこのままの姿で交渉させる訳にはいかないですしー」

「うーん、どうしようかなぁ――」


 すごく迷ってるみたい。そんなに時間をかけないでそろそろ解いてくれないかなぁー?

 お腹が空いたし、疲れてきたし。


「フフフ、そんなに簡単に解放してはいけませんよ?」


 カツーン、と甲高い音が響いた。前に目を向けるとそこには杖を突いて歩いてくるおじいさんがいた。


「誰ですか?」

「これは初めまして。私の名前はダマーシィと申します。以後お見知りおきを」


 蓄えた白いひげを撫でながら楽しそうに笑っているダマーシィさん。なんだかわからないけどとても怪しい感じがする。

 にしても、シィちゃん達三人の前よりこのおじいちゃんが出てきたのはなんでだろ?


「さすが魔王ですね。私の催眠魔法にかからないとは。これは商談のしがいがありますよ」

「催眠魔法? もしかしてそれを使ってみんなを――」

「ご名答。給料の不満を持つメイド三人を操り、あなたをここに連れてきて拘束させたのもこの魔法でございますよ。まあ、三人はそれぞれ欲しい服があるみたいですので、後で私が見繕っておきますよ。高額請求をしてね」


 ひどい。この人は悪魔だ!


「そ、そうなる前にセバスチャンさんがどうにかしてくれるもん!」

「それは無理な相談ですよ。彼は本当にここのところ働き詰めだったようですからね。メイド隊に入れてもらった睡眠剤が実に効果的でしたよ。ああ、万が一があってはいけませんので私が暗示をかけない限り目覚めないようにしておきました」

「そ、そんな――」


 セバスチャンさんも助けにこない。むしろ私がどうにかしないとセバスチャンさんが一生目覚めないかもしれない可能性がある。

 うう、でも私だけでどうにかなるの?


「フフフ、魔王よ。強大な城を落とす定石はなんだと思いますか? 簡単なことですよ。様々な繋がりをそぎ落とし、時間をかけて攻め落とせばいいのです。魔王、今のあなたはその強大な城だ」


 私そんなに強くないよぉー。できればすぐにでもご飯を食べたいし。


「ククク、いい目をしていますね。これは案外早く落とせそうです」

「い、一体何をする気なの?」

「何、簡単なことですよ。商談をしていただきます。とびきりの高級品を買っていただいて、ガッポリ稼がせていただきますよ?」

「そ、そんなのいらないもん!」


 そもそも今高級品なんて欲しくないし。それに買ったところで食べられる訳がないし!


「そうですかー。ならこの高級オニギリもいらないのですね?」


 そう言ってダマーシィさんはとても美味しそうな三角オニギリを出した。いい感じに海苔が巻かれていて、艶もあってとても美味しそう。


「もちろん、中身はあなたが大好きなタラコですよ?」


 ごくっ。うう、ほしい。食べたい。

 でもこのままじゃあ食べられない。


「そうですねぇ、このオニギリを二個セットで三〇〇〇ゴールドでどうでしょうか?」

「三〇〇〇!? オニギリがそんな――」

「いらないのならいいですよ? 私が食べちゃいますから」


 ああ、オニギリがダマーシィさんの口の中へ吸い込まれていく。でも三〇〇〇ゴールドは出せない。オニギリがそんなに高い訳がないし、買ったらセバスチャンさんに怒られちゃうし。

 うう、お腹が空きすぎて泣いているよー。でも我慢しなきゃ。我慢すればきっと――


「おっと、いけない。忘れていましたよ」


 パチン、と指が鳴らされる。すると目の前にテーブルが現れて、一つの水筒が置かれた。それをゆっくりと開けて、ふたに温かそうな中身を注いでいく。


「オニギリにはやはりこれですね。お味噌汁! これがあれば食事は最強」


 お、お味噌汁! なんて美味しそうなの!?

 あんなに美味しそうなお味噌汁、初めて見た!


「そうですねー、これにさっきのオニギリセットに入れても構いませんが、いかがいたしますー?」

「うっ……」


 食べたい。猛烈に食べたいよぉー。でも、でもでもぉー


「――いりません」


 我慢。我慢しなきゃ。私、魔王だから我慢しなくちゃ。


お腹が空いて堪らないマオちゃん。

誰も助けが来ない中、この窮地を脱出できるのか!?


次回は本日の午後5時頃に更新予定です。


追記

申し訳ございません。

まだ体調が本調子になり切ってないので更新予定時間を明日の午前8時頃に変更させていただきます。

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