マオと怪しい三人組
本日も快晴。青い空に流れていく白い雲。私はそんな景色を眺めながら今日も書類処理をしています。
それにしても、魔王ってホントにこれが仕事なのかな? 一応魔王なんだから世界征服とかしないといけないと思うんだけど。まあ、今はそんな戦力はないし、それにお城も町もボロボロだから侵攻なんてできないか。
「ハァ」
なかなか書類が減らないなぁー。毎日やっているのに、どうしてこんなにも溜まっていくんだろ? しかも山積みだし。これじゃあいつまで経っても遊べないよ。
「精が出ていますね、魔王さま」
私がちょっとうんざりしかけていた時にセバスチャンさんが現れる。その手にはカップがあって、それを渡してくれた。
中に入っていたコーヒーを飲むと、絶妙な苦さで私の疲れを飛ばしてくれる。広がるいい香りがそれに後押しをしてくれて、つい気を緩めちゃった。
「美味しいですか?」
「うん! これどこのコーヒーなの?」
「我が国ゴルディアートの南東に位置するコーコ農園という所から取り寄せている代物でございます。私めの意見でございますが、他のブランドには負けないコーヒー豆を栽培していると思っていますよ」
「へぇー」
ゴルディアートにもそんな農園があるんだ。一度でいいから見に行きたいなぁー。でも仕事が終わらなきゃ外には出れないし、それにシルバニアンに万が一があったら困るし。
「ハァ」
あーあ、仕事なんてなくなればいいのに。
あ、そうだ。そういえばそろそろお昼ご飯だ。でも今日はカアたんいないからなぁ。昨日のお見合いの後、ヤン姉さんにどこかに連れていかれちゃったし、今日はご飯を作ってくれる人がいないんだった。
うう、そう考えると余計にお腹が空いてきた。よくわからないけど自然とやる気もなくなってきちゃったし、それになんだか眠く――
「おや? なんでしょうか? 妙な眠気が――」
「ふわぁ。セバスチャンさん、まだお昼は早いよねぇ?」
「そうですねぇ。ですがこれは」
私とセバスチャンさんは大きなあくびをした。そして数秒も断たないうちにそのまま意識を失っちゃったんだ。
◆◆暗いどこか◆◆
「うーん」
あれ? なんだか暗いなぁー
あれ? 手が動かない。
あれ!? なんだかよくわからないけど、手足が縛られてる!
え? なにこれ? 一体何が起きてこうなったの?
「フッフッフッ、目を覚ましたようね」
どこからか声が聞こえる。でもこの声、どこかで聞いたことがあるような……
「いいタイミングですー。さすが魔王さまー」
「コラ。今は私達の敵なんだから〈さま〉はつけちゃいけないっつーの!」
「でもちょっとかわいそうかな? だってマオ様は全く関係ないようなもんだし」
「だから〈さま〉はつけるなって言ってんだろ!」
何だろう。何だかよくわからないけど揉めてる。
それにこの三つの声、やっぱり聞き覚えがあるなぁー
「えー、ゴホン。さて、魔王。これから貴様にある宣言をしてもらう」
「宣言? 何それ?」
「聞いていればわかりますよー。ちなみに時間稼ぎをしようと思わないでくださいー」
「返事次第じゃあ、アンタにはひどい目に合ってもらうからな。それを覚悟して聞けよ」
「あ、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
ずっと気になっていたけど、やっぱりこの三つの声ってあの三人だよね?
「シィちゃんとニィちゃんとミィちゃんだよね? なんでこんなことしたの?」
「「「………」」」
あれ? 答えが返ってこない。どうしたんだろ?
「(おい、ばっちりばれてるじゃないか!)」
「(さすが魔王さまですー。このままだと交渉はしにくいかとー)」
「(うーん、顔を見せなきゃ平気かなって思ったんだけど)」
「おーい、どうしたのー?」
なんだかコソコソ話してて返事がこないなぁー
「ゴホン。一応言っておく。私達はあのしたっぱメイド隊ではない」
「はいー。リフィルさんにいつも怒られているダメイドじゃありませんー」
「そうだそうだ! これでも有能なんだからな!」
もう答えを言っちゃっているような気がするけど。
ま、まあ、人には言いにくい何かがあってこんなことをしたのかも。にしても手が込んでいるなぁ。バッチリと手足は縛られているし、天使さんも呼び出せないし。
そこまでして何をしたいんだろ?
「フフフ。無駄だ、助けは来ない」
「諦めて交渉するのですー」
「そうだ。そうすればすぐに解放してやる」
「別にいいけど。それよりもセバスチャンさんは?」
「心配するな。別室で寝てもらっている」
「ここの所、働き詰めだったようなのでお休みを兼ねて寝てもらっていますー」
「どうだ! 気遣いができるだろ!」
気遣ってくれるならもっと優しい交渉方法にしてもらいたかったなぁー
「わかったよぉー。それで、交渉って何をすればいいの?」
「何、簡単なことよ。したっぱメイド隊の三人を昇進させてくれればそれでいい」
「お給料アップですー」
「家族にも自慢できるぜー!」
えっと、そのためだけに私をこんな目に合わせたのかな?
ま、まあ、昇進って大切だよね。
「ククク、さあ言え! したっぱメイド隊全員を昇進させると!」
「別にいいんだけど、一つ聞かせてもらってもいいかな?」
「なんだ?」
「どうして急にそんなことを考えたの?」
「それは――」
「それは?」
「欲しい物があるからだ!」
……。何だろう。共感できない自分がいる。
よくわからないけど、そのためにこんなことするかな?
「欲しい物って?」
「はーい、質問は終わり! 早く私達を昇進させるって宣言しろー!」
「そうですー! そうしないとなくなっちゃうのですー!」
「早く宣言しろ! アンタそれでも魔王だろ!?」
私は慌てている三人の声を聞いてこう感じた。
欲望って怖いなぁー
正体がバレバレの三人。
そんな三人は一体何が欲しいのか!?
次回は明日の午前8時頃の更新予定です。




