対決! カアたん
壊された壁に、壊された床。綺麗な装飾も何もかもがボロボロになった通路を見て私は言葉を失っていた。
まだ、城下町の修繕もできてないのに……
とにかく早くカアたんを捕まえよう。そうしなきゃお城がもっとひどいことになっちゃう。
『マーオちゃん』
頭の中にウィンディさんの声が響く。そういえば連絡が取れるようにちょっと変わった魔法をかけてもらったんだった。
「ウィンディさん、お城がボロボロだよぉー」
『はいはい。嘆くのは後にしましょうね。今から逃げているカッパの情報を言うから、そこに向かって』
ウィンディさんいわく、どうやらカアたんはお城の近くにある農園にいるみたい。
というか魔王城に農園があるなんて知らなかった。
何にしても行く場所はわかったし、あとはカアたんを捕まえるだけだ。
『マオちゃん、無茶しちゃいけないけど時間がないから急いでね。あの機械、手当たり次第お城を壊してカッパを探しているみたいだし。ミーシャちゃんが頑張っているけど、お城が崩壊するのは時間の問題よ』
「ホントですか!? わかりました。とにかく急ぎます」
私は急いでお城の外へと出る。ウィンディさんの指示に従って走っていくと、確かに魔王城の隣にビニールハウスがあった。
カアたん農園と書かれているけど、誰がどう見てもそんな規模はない。
「よし!」
ビニールハウスの扉を開いて中へと入る。そこにはたくさんのトマトがあって、どれも赤く熟していて美味しそうに育っていた。
そんなトマトだらけのビニールハウスの真ん中で、カアたんがいた。
「ゲッゲッゲッ、あとでお前らを美味しく料理してやるからなー!」
ハサミを使って収穫しているためなのか、カアたんはいつも通りに性格が変わっていた。怪しく笑いながら楽しそうにトマトのヘタを切るカアたんはなぜだか怖い。
でも、ここは勇気を出さなきゃ。このままじゃあ私達のお城が壊されちゃう。
「カアたん!」
「あ?」
ギロリ、と睨みつけるカアたん。うう、あの目を見ただけでもとても怖い。でもここで退いちゃいけない。
どうにかしてカアたんにお見合いをしてもらわなくちゃ。
「私と一緒に来て。いいでしょ?」
「なんでだよ? どうせおふくろがまた城を壊しているからだろ? 言っとくが俺は結婚なんざしねぇからな」
「いいから来て! じゃないとホントにお城が壊されちゃうの!」
「うるせぇな」
カアたんはゆっくりと振り返る。そして右手にはハサミ、左手にはナイフを手にして臨戦態勢に入った。
「そんなに困るんなら力づくでやってみやがれ。まあ、てめぇ如きじゃあ無理だろうがな」
やっぱり説得は無理か。
こうなったらカアたんの言うように、力づくで連れていくしかない。
「絶対に連れていくんだから! 天使さん!」
私の前に天使さんが現れる。だけどカアたんはそれを見るや否や、トマトを投げつけた。天使さんは咄嗟にトマトを払うけど、その衝撃で果汁が目にかかってしまう。
途端に私の目に痛みが走った。どうにか開けようとするけど涙が溢れて前が見えない。
「ゲッゲッゲッ! 俺は知っているんだぜ? てめぇが呼び出したそれとてめぇは生体リンクしているってことをよ!」
そんな……。なんで私すらわからない弱点をカアたんは知っているの?
くぅ、前が見えない。このままじゃあ捕まえるどころか逃がさないようにすることもできない。
「この際だ。このカアたん様に二度と逆らえないように、恐怖を植え付けてやるぜ!」
うう、やられる。このままだとやられちゃうよ。
どうにかしなきゃ。でもどうすればいいの? 前は見えないし、かといって適当に攻撃しても当たる訳がないし。
そうだ! 一つだけ突破口がある!
「ウィンディさん!」
『わかっているわ。真正面から突っ込んでくるから気をつけなさい!』
私はウィンディさんの指示に従って天使さんに地面を攻撃させた。するとカアたんは驚いたように「うおっ」と声を漏らす。
『バランスを崩したわ! 一気に畳み掛けなさい!』
「天使さん!」
ウィンディさんの合図と共に天使さんに攻撃させる。ものすごい音が響く中で、私はちょっとだけこんなことを思った。
トマト、もったいないかも。
『マオちゃん、もう大丈夫よ』
目を擦り、涙を拭った私は惨状となったビニールハウスを眺めた。せっかく育ったトマトはほとんど落ちちゃっていて、倒れているカアたんは真っ赤に染まっていた。
ビニールもボロボロになってて、もう使えそうにない。
「ふぅー」
どうにかカアたんを捕まえることができた。これでお城の崩壊はどうにか避けられそう。
さて、早くカアたんのお母さんに送り届けなきゃ。
どうにかカアたんを捕まえることができて一安心。
でもまだまだ波乱は終わらないぞー
次回は明日の午前8時頃の更新予定です。




