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進撃のカアたま

 カアたんは逃げる。ひたすらにひたすらに逃げていく。

 そんなカアたんを追うセバスチャンさん達は、大きく頭を抱えていた。


『もうあの子に会うのは久々よ。どのくらいいい男になっているのかしら? ねぇあなた、教えてくれない?』

『それはもうとびきりの男になっていますよ。ただいい男になりすぎてなかなか捕まらないのが難点ですが』


 笑い合うセバスチャンさんとカアたんのお母さん。はっきりと顔には出していないけど、結構焦っているみたいで困っている様子だ。


「いい気味ね。それにしてもあのカッパ、どのくらい恐ろしいのかしら?」

「見た限りだと脅威も何も感じませんね」

「カアたんのお母さんだからなぁー。たぶん何かを持てば豹変するんじゃないかな?」


 朗らかに笑うカアたんのお母さん。でもそれは長く続かなかった。


『ちょっと出かけてくるわ』

『さ、左様でございますか……。もう少しお待ちになっていただけませんでしょうか?』

『たぶん、日が暮れちゃうわ。だから手伝ってあげるの』


 ほんわかと笑うカアたんのお母さん。セバスチャンさんはとんでもなく顔を引きつらせていたけど、一体何が始まるんだろう?


『申し訳ございませんが、もう少しお待ちに――』

『待てないの。ということで行ってくるわ』


 そんな言葉が放たれた直後に大きな機械音が響いた。ガコン、ガコンって何かが組み上がっていく中、カアたんのお母さんはクモに似た乗り物に腰を下ろして言葉を口にする。


『愛しの息子を探しに行くわよ、ダーリン』

『ガッテン承知ぃぃ』


 その奇妙な姿の機械は、ゆっくりと床をスライドして進んでいく。でも変に横に長いためか扉を出ることができないでいた。

 だから機械は前足を使って出入口を破壊する。そしてカアたんのお母さんの指示に従って廊下を走っていく。


「「「…………」」」


 私達は言葉を失っていた。なぜセバスチャンさんが恐れていたのか、どうしてカアたんを一刻も早く捕まえたかったのか何となくわかったからだ。


「ね、ねえ、これってもしかして、お城壊されちゃう?」

「そ、そうね。このままだと危ないわね」

「私、ちょっと協力してこようかな?」


 何とも言えない空気が支配する。でもそんな中、無謀にもカアたんのお母さんの進行方向に立ってしまう人がいた。


『うおっ! なんだ!?』


 ああ、なんてタイミングでジュリアちゃんが登場したんだろう。というかカアたんのお母さん、ジュリアちゃんに気づいてないよ。


『息子を追って幾千年、私は早く孫を見たいわー♪』

『うわぁあああぁぁ! 来るなぁぁ!』


 たぶん、体格差があまりにもあってジュリアちゃんは気づかれていない。どんどんとジュリアちゃんへ迫っていっているし、逃げ切れそうにないよ。


『前方に障害物を発見! これよりオートアタックを行います』


 そう思っていたら前足の所が開いた。そこから何かが発射されて、ジュリアちゃんの足元に着弾する。大きな爆発が起きると同時に大きく揺れるお城は、今起きている危機を私達に伝えていた。

 倒れたジュリアちゃんを踏み潰して進んでいくクモみたいな機械。それの進撃はもう誰も止めることができない。


「どうしてあいつがあんなに恐れていたかわかったわ。あれ、物理耐性がある上に魔法反射も持っているみたい」

「私達じゃあ力不足ですね。たぶん、素手で機械を壊せる方じゃないと無理です」

「というかお城が壊されていくよ! どうしてあんなにニコニコしていられるの、あのカッパさんは!?」


 セバスチャンさんはわかっていたんだ。動き出したら誰にも止めることができないことを。だから早くカアたんを捕まえたかったんだと思う。

 何となく前の魔王さまが怒り狂ったのがわかった気がするよ。私だって自分のお家を壊されたら怒るし。


「このままだといつ私達に被害が来るかわからないわ」

「そうなる前にカアたんを捕まえなきゃ」

「でもあのカッパさん、まともに正面からいけそうにありませんね。かといって隙がある個所がある訳ではありませんし」


 まともにやり合えばカアたんは捕まえることが難しい。かといって罠を作っているような時間はない。

 このままじゃあお城が崩壊しちゃうかもしれないし、そうなる前にどうにか決着をつけなくちゃ。


「そうね。こうなれば長い物には巻かれろ作戦よ」

「なんですか、その作戦?」

「フフ、簡単なことよ。二人共ちょっと耳を貸して」


 ウィンディさんが思いついた作戦を聞く私達。それは確かに現状ではベストかもしれない作戦だ。


「でも、上手くできますか?」

「なーに、このくらい朝飯前よ。問題は誰があのカッパを相手にするかかな?」

「そうですねぇ、ここは私が行きましょうか。お姉ちゃんだとちょっと危ないかもしれませんし」


 こうして私達は動き出す。目指すはカアたん捕獲。そしてお城の平穏を取り戻すことだ。


「それじゃあ、マオちゃんは逃げているカッパの所に行って。そしてできるだけ足止めをしておいてね」

「うん。わかりました」


 カアたんの相手をする。それがいかに大変なのか、私はまだわからない。

 今はただお城の崩壊を止めることしか頭になかった。


ジュリアちゃんはなんだか不幸だなぁ(笑)

カアたまの快進撃を止められるのか!?


次回は本日午後8時頃の更新予定です。

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