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地獄のはじまり

「お久しぶりです、カアたま様」


 それはあまりにも突然だった。

 書類処理をしていると慌てた様子のリフィルさんが部屋に入ってきた。リフィルさんはセバスチャンさんに耳打ちをすると、セバスチャンさんはちょっとだけ険しい顔をして部屋を出ていく。どうしたんだろうって思っていると、少し経った後にシィちゃんがやってきた。

 シィちゃんはとても申し訳なさそうにしながら「すみません、客間に来ていただいてもよろしいですか?」なんてことを言っていた。私はちょっと状況が把握できないまま頷くと、リフィルさんが魔王の正装一式を用意してくれていたんだ。


 もしかしてとんでもなく偉い人と会うのかな?

 着替え終わった後、恐る恐るって感じで客間に私はやってくる。いかにも魔王が座りそうな椅子に座って、隣に立っているセバスチャンさんに顔を向けた。

 一体誰が来るのか聞こうとした瞬間、扉が開かれる。そしてそこに立っていたのはパーマをかけたカッパさんだった。


「お久しぶりよぉ、セバスチャン。うちの息子はちゃんと働いている?」

「ええ。いつも美味しい料理を作ってもらっていますよ」

「それはよかったわー。それよりその方は新しい魔王さま? かわいいわねー」

「名前はマオ様と申します。カアたま様は本日、どういったご用件で?」


 セバスチャンさんはいつもと変わらないような笑顔で受け答えをしている。でも何だろう、今日はどこかぎこちなさが感じられた。

 緊張しているとは言えないし、どこか恐れているようなそんな感じがする。


「実は息子にいいお嫁さんを見つけてきたのよぉ。いわゆるお見合いをさせたいの。いいかしらー?」


 その言葉を聞いたセバスチャンさんは一気に顔を引きつらせた。それはいつもの笑顔からうかがうことができない恐怖で支配された顔だ。


「もしかして、それは本日ここでやりたいということでしょうか?」

「ええ。あの子も忙しいでしょ? だから今日、ここで、逃がさないためにも、やりたいのよー」

「さ、左様ですか。では少々お待ちください」


 そう言ってセバスチャンさんは私に耳打ちをし始めた。その顔は明らかに焦っているようなもので、とんでもなく険しい。


「申し訳ございません。上手く断ってくれませんか?」

「どうして?」

「事情はあとで説明をいたします。ですがマオ様のお返事次第で我々の命運が決まると思ってください」


 よくわからないけど、なんだか怖いな。あのセバスチャンさんがここまで恐れるなんて、あのカッパさんは一体何なんだろう?


「どうしたのよ? まだ決まらないの?」

「え、ええと。その、本日は午後に用事がありまして。申し訳ないんですけど――」


 私がそう答えるとカアたまさんは当たり前のようにこんなことを言った。


「なら午前中にやればいいじゃない。大丈夫よ、すぐに終わるから」


 すごい墓穴を掘った。ああ、セバスチャンさんがとても頭を抱えているよ。


「え、ええと、午前もちょっと。出かけるために準備をしなくちゃいけなくて……」

「大丈夫大丈夫。前の魔王さまの時もいない時に貸し切ったし。それにこれはお見合いよ。そんな大きいことはしないわ」


 うぅ、ペースが持っていかれて断ろうにも断れない。どうしてこんなにもここでやりたいんだろう? よくわからないけど、今日のセバスチャンさんはホントに困っているみたいだし。


「ま、あなたがいなくてもやらせてもらうわ。いいでしょ?」

「え、えっと……」

「い・い・で・しょ?」

「は、はい……」


 ごめんなさい、セバスチャンさん。断ろうにも断れませんでした。

 こうしてセバスチャンさんと私は頭を抱えながら奥へと引っ込んでいく。なんだかよくわからないけど、今日はとても嫌な一日になりそう。


「困りましたね。本日は様々な死線を乗り越えなくてはいけなくなりました」

「えっと、いまいち状況がわからないんだけど……」

「今は時間がないので噛み砕いて説明させていただきますね。まずは先ほどのくそガッパはカアたんの母親でございます」

「……えー!」


 あのカッパさん、カアたんのお母さんなの!? でもカッパさんだから納得できるか。

 だけど、どうして突然やって来たんだろう? それにセバスチャンさんが言ってた命運に関わるってどういうことなのかな?


「あの方は毎回カアたんを結婚させようとやって来るんですよ。カアたんはカアたんでその気はありませんから、結果はわかり切っているんですが」

「裏社会で生きてきて、相手が危ないから結婚しないんだったよね?」

「ええ。そのあたりの事情を知っていると思うんですがあの方はどうしても結婚させようとします。前に一度お断りしたことがありますが、あの時はもうとんでもない一日でしたよ。先代の魔王が怒り狂い、我々は死にかけたという一日でした」


 う、うわぁー。なんだかわからないけど、とんでもなくヤバい気がしてきた。

 だ、大丈夫かな? 断れなくて引き受けちゃったの、とんでもなく後悔を感じ始めてきちゃったよ。


「まあ、こうなったらいつも通り全力を尽くすしかありませんね」


 そう言ってセバスチャンさんは右目に白い魔法陣を展開させた。そして右耳に手を当てて、魔法を発動させる。


「こちらアルファ。マオ様が交渉に失敗した。これより作戦を第二段階に移行する」

『こちらベータワン。マジですか!? とーっても嫌なんですけど。どうぞ』

『こちらベータツー。わかりましたー。では私はターゲットを監視いたしますー。どうぞ』

『こちらベータスリー。しくじってしまいましたか。では私はオメガと共に準備をします。どうぞ』

「こちらアルファ。おのおの確実に、そして迅速に作戦を遂行してくれ。以上」


 な、何だろう。とんでもない大事になっている。

 今日は大丈夫なのかな?


カアたんのお母さんの登場により魔王城は大騒ぎ。

次回は逃げるカアたんを描きたいと思います。


更新は明日の午後8時を予定しています。

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