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マオのしあわせ

用事が思ったよりも早く終わりました。

間に合ったので掲載いたします。

 スラート君達と別れた私達は、たくさんの壊れた建物に回った。そこで仕事に勤しんでいる人達に激励を送って、元気に働けるようにしていたんだ。

 あとミーシャはみんなに謝っていた。戦いだったから仕方ないことだと思うんけど、それでもちゃんと頭を下げて謝っていたの。もちろんみんなは「仕方ないことだから」って言って許してくれた。でもミーシャはとても申し訳なさそうにしていた。

 人も魔物も仲良く暮らすゴルディアート。そんな島国の首都シルバニアンを見て、ミーシャはとても不思議そうにしていた。


「ここはいい所だよ。外と違って、とても穏やか」

「外は大変なの?」

「うん。みんな領地を手に入れるために戦争しているわ。戦っていないのはここと倭の国、あとは力のない小さな国だけ。でも、どれも植民地にされちゃっているし、負けたら何をされるかわからないの」


 悲しそうな顔をするミーシャ。たぶん、私が知っていた時より世界は大変なことになっているんだと思う。あの時は魔王が強かったから、みんなそっちばっか考えていたし。それに男の子は勇者になって世界を救う、とかそういうことを言っていた時代だしね。

 魔王は絶対的な悪。でもそれが弱くなっちゃうとみんなバラバラな方向を見て、より生活をよくするために戦い始める。

 なんだかそんなことを聞いちゃうと悲しいな。


「世界はある意味平和。でもある意味不幸になっちゃった。昔はもっと仲がよかったのに、どうしてこうなっちゃったのかな?」

「ミーシャ……」


 私がもっと、魔王らしくなれば。

 そんなことを思った瞬間に、ミーシャは私の鼻を弾いた。ツンとした痛みが走ると私はつい抑えつけてしまう。


「何するの? ミーシャ」

「ふふ、お姉ちゃんがバカなことを考えたからだよ」


 ミーシャはさっきと違って優しく微笑んでいた。あの時と同じ無邪気な笑顔だ。


「お姉ちゃんは確かに魔王だよ。でもね、だからといって昔みたいな魔王になっちゃダメ。お姉ちゃんはお姉ちゃんらしい魔王になればいいんだよ」

「私らしい魔王?」

「そ。お姉ちゃんにしかなれない魔王。だからそんなに気負わなくていいんだよ」

「でも……」

「私はいやだよ。お姉ちゃんが殺されちゃうなんて」


 ミーシャはゆっくりと私に近づく。そして身体をギュッと抱き締めて、こんなことを言ってくれたんだ。


「せっかく生き返ったのに、魔王らしく振る舞って死ぬなんてバカげてる。そんなことをしないでお姉ちゃんはお姉ちゃんらしく生きてほしいの」

「ミーシャ……」

「魔王なんてくそ喰らえよ。お姉ちゃんが幸せに生きてくれるなら、私はどんな相手でも剣を抜く。お姉ちゃんは幸せにならなきゃならない。その権利は絶対にあるのよ」


 どれだけミーシャが私を思っていてくれたのか知った。

 どれだけミーシャは一人を我慢していたのかも気づいた。

 私は、この言葉に甘えたい。ミーシャと一緒にまた暮らしたい。でも――


「ありがとう、ミーシャ。でも、ごめんね。私、みんなを置いていけないから」

「お姉ちゃん……」

「私は魔王。ここにいるみんなの王様。私のわがままでみんなとは離れられない」


 楽しかったし、大変だったし、今もよくわからないことばかり。正直、元の生活に戻りたいと思うこともしょっちゅうだ。

 だけど、だからといって今あるものを全て捨てることはできない。


「私は、ミーシャの望む幸せが手に入れられないかもしれない。でも、今はとても幸せだよ」


 ミーシャはちょっとだけ悲しそうな顔をしていた。私はもしかしたら間違えた答えを出したのかもしれない。でも、私のわがままでここを去るのはできない。

 それに、みんなと離れるのは寂しい。


「全く、お姉ちゃんは……。昔から言い出したら聞かないんだから」

「ミーシャだって、わがまま言い出したらいうことを聞かないでしょ?」

「バカ……」


 消えそうな言葉だった。そして顔を隠すように逸らして、大人げなく泣き始める。

 私はポケットからハンカチを出してミーシャに渡した。するとミーシャは我慢できなくなったのか、思いっきり泣き出した。

 私はバカだ。大切な家族すら幸せにできない。

 でもミーシャはそんな私を許してくれた。その証拠にお決まりの言葉を泣きながら口にしてくれたんだ。


「お姉ちゃんの、わがまま」


 私は泣いているミーシャに笑いかける。そしてそのまま優しく抱き締めて、泣きやむまで一緒にいたんだ。

 人がいるなんて気にしない。それだけにこれはとても大切なことなんだ。

 だって、もしかしたらミーシャはまた敵になるかもしれないんだもの。


 空は青い。雲は白い。でも世界は問題だらけ。

 そんな当たり前はいやだ。なら私は魔王として何をやらなくちゃいけないのかな?

 みんなが幸せになってくれるために、何ができるんだろう?

 その答えはまだわからない。たぶん誰かに聞いてもわからないと思う。

 だから、私は魔王として動こう。私なりに考えて、みんなが笑える世界にするんだ。


 それが私の思い描く魔王だ。


マオちゃんは新たな決意をしました。

なんだかこれはコメディーと表記してていいのかな~(笑)


次回は明日の午前8時頃に更新予定です。

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