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愛しのジュリア

 朝ご飯を食べた私達は、ちょっとだけ食休みをしてから城下町へと繰り出した。

 昨日の戦いでボロボロになっちゃった町。とっても綺麗だったのに、ここまで壊されるなんてなんだか切ないな。


「そんな顔をしないでください。直せばいいんですから」

「元に戻るかな?」

「完全にとはいかないかもしれませんね。でも、前よりはよくなるかもしれません」


 セバスチャンさんはそう言って私とミーシャ、そしてジュリアちゃんを町の中へと案内してくれる。澄んでいる人や魔物は互いに協力し合って建物を直していて、誰もが笑い合って仕事をしていた。


「…………」

「なんで、こんな町があるのよ」


 ミーシャとジュリアちゃんに顔を向けると、とても驚いたような顔をして人達を見つめていた。やっぱりこの光景は珍しいのかな?


「あの、セバスチャンさん」

「なんでしょうか? ミーシャさん」

「どうしてここの魔物達は人を襲わないのですか? 普通は――」

「ここは魔王さまの支配下ですからね。魔物はその時の主によって嫌な命令でも強制的に動かなくてはならない場合があるのですよ。ですが、マオ様はそのようなことはしない。むしろ嫌っている節がございますからね。ですからみなが穏やかに暮らせているのですよ」


 ミーシャは不思議そうに私を見つめる。私は私でちょっと反応に困っちゃった。

 でもジュリアちゃんはどこか納得できないような顔をしていた。うーん、やっぱり勇者だから信じられないのかな?


「さて、門のほうに行きましょうか。あそこは戦いで一番の被害が出てしまいましたからね」

「どのくらいかかるかなぁー?」

「普通ですと三ヶ月はかかりますね。ですが、そんなに時間をかけてはいられませんので修理屋さんを呼びました」

「修理屋さん?」


 修理屋さんって、懐中時計とか防具とか直してくれるあの人達かな? でもさすがに門は直せないと思うんだけど。それにとっても大きいし。


「もしかして、今世界的に有名なあの方々を呼んだのですか!?」

「はい。お金と会場を用意するのには少々手こずりましたがね」


 世界的に有名な人達? そんな修理屋さんいたかな? なんだかわからないけどミーシャはとても興奮しているみたいだし。


「うげっ、あいつらを呼んだの……」


 対照的にジュリアちゃんは嫌な顔をしている。

 一体どういう人達が来たんだろう?


◆◆壊れた城門前◆◆


『へいへい、みんな乗っているかぁああぁぁい!?』


 いえーい、とその言葉に対してみんなは元気よく返していた。

 何これ!? なんだかわからないけど門が門じゃなくなっているよ!


『今日は初めての魔王城前のライブだぜ! 楽しんでくれよぉぉ!』


 歓声が上がる。同時に隣に立っていたミーシャも一緒に悲鳴に似た歓声を上げていた。


「キャアー」「うおぉおおぉぉぉ」「愛してるー」


 すごい。何がすごいのかわからないほどすごい。

 何だろう? これ、修理屋さんに集まる人達じゃないよね?

 というか修理屋さんに人って集まるんだっけ?


「あ、あのセバスチャンさん」

「何でしょうか? マオ様」

「あの人達って一体……?」

「あの方々はロックをしながら世界を飛び回る修理屋のブレイカーでございます。その腕は超一流なのはもちろんのこと、人々に音楽も届けたいということでロックをしている集団でございますよ」


 そうなんだ……。なんだか見た目がすごいことになっているけど、大丈夫かな? 顔がなんか白いし、変に髪が染まってて立っているし、挙句の果てには「お前をハートを撃ち抜くぜ」ってキザなことを言っているし。

 って、全部修理屋さんがやるようなことじゃないよ! これ完全に修理屋さんじゃないよね!?


「お姉ちゃん、もしかして知らないの? ププッ、おっくれてるー」


 うわ、ムカつく!

 ミーシャからものすごい角度で見下ろされたよ。


「ふ、ふーん。知らなくても生きていけるもーん」

「そんなんじゃあすぐにおばあちゃんになっちゃうよ、お姉ちゃん」


 すごくムカつく!

 あれ? ミーシャってこんな子だっけ?


『まずは最初にこいつを歌うぜ! みんな知っている――愛しのジュリア!!』


 会場は最高潮に盛り上がる。途端に響く激しい音楽。ギターやピアノが狂いに狂ってぶつかり合う中、マイクを持っていた男の人が歌い出す。


『我が愛しのぉぉジュリアァァ♪』


 そんな歌い始めを聞いた瞬間にジュリアちゃんが頭を抱えていた。どこか落ち込んでいるかのようにも見えたけど、どうしたんだろう?


「あの方々はそこにいるひよっこ勇者の親戚なんですよ」

「あ、コラ! 言うな!」


 へぇー、ジュリアちゃん変わった親戚がいるんだ。


「見ないで! 私を見ないで!」


 確かにあんな親戚がいたら嫌だろうなぁー。


「ジュリア、あなた……」

「た、隊長?」


 ミーシャがわなわなと震えている。でも顔を見るととても嬉しそうだ。


「あなたに罰をくだします。ライブ終了後にボーカルのティザーのサインをもらってきなさい」

「そ、そんな!? 隊長自身が行けばいいでしょ!」

「私はグッズを買わなければなりません。わかりましたか? ジュリア」


 職権乱用だよ、ミーシャ。

 よくわからないけど、私はミーシャに注意ができなかった。


ジュリアちゃんがすごくいじりやすい(笑)

楽しい、楽しすぎるよぉー!


次回の更新は明日の午前8時頃の予定です。

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