表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/103

ミーシャとジュリアちゃん

お待たせしました。

何度も延期してすいません。

 戦いは終わった。ウィンディさんのおかげで城下町に入った兵隊さん達を全員捕まえることができたし、これでめでたしめでたしだね。


「しかし、いろいろと腑に落ちませんね」


 セバスチャンさんがとても険しい顔をしていた。何か納得ができていないみたいで、とても難しく考えているみたい。


「どうしたのですか?」

「かつての魔王。魂とはいえなぜ復活したのかわかりません。あれは先代の魔王がどうにかしていたはずなんですが……」


 うーん、セバスチャンさんがわからないことを私がわかるはずないし。でも、ミーシャが助かってよかった。

 全く、この子はいつも無茶するんだから。背だって小さいのに男の子と張り合おうとしてケンカするんだし。


「あれ?」


 おかしいな。ミーシャってそういえばまだ十歳だったような。でも見た感じそんな風に見えない。それに兵隊さん達に〈隊長〉って言われていたよね?

 何だろう、とても大人びた顔になってる。それに背も大きくなってて、胸だってあの頃とは違って大きい。

 今の今まで気づかなかったけど、ミーシャって成長していない?


「う、うぅ……」


 そんなことを思っているとミーシャは目を覚ました。そして私を見るや否や、ガバリと起き上がって私に抱きついた。


「お姉ちゃん!」

「わわっ!」


 ミーシャは泣いていた。とても身体を震わせて、泣いていたんだ。

 この子に何があったのかわからないけど、とても大変だったのかもしれない。そう思うと私は抱き締めるしかできなかったんだ。


「ごめんね、一人ぼっちにしちゃって」

「ううん。でも寂しかった」


 相変わらず寂しがり屋さんだなぁー。やっぱり私がいないとダメなのかも。

 さて、ミーシャが元に戻ったしこれで全てがめでたしめでたしだね。何もかもが無事に解決したし、明日からまたいつも通りってことかな。

 う、それを考えるとまたデスクワークしなくちゃいけないのか。あーあ、なんだか憂鬱になっちゃうなぁ。あれとんでもなく面倒臭いし。


「お姉ちゃん!」


 明日のことを考えているとミーシャは決意したかのような顔を私に向けた。そしてこんなことを口にする。


「私と一緒に帰らない?」


 思ってもいなかった言葉だった。みんながそれを聞いた瞬間に静かになってしまう。


「ミーシャ」


 確かに私は望んで魔王になった訳じゃない。大変なことだってたくさんあるし、今日みたいに殺されそうになることだってある。

 でも――


「ごめんねミーシャ。私、みんなを置いて帰れないよ」


 私を支えてくれるみんながいるんだ。だからみんなを置いて帰るなんてできない。

 みんながいなかったら私、死んでいたし。それに私はみんなと離れたくない。


「お姉ちゃん……」

「ミーシャ、今の私は魔王なの。世界の敵で、ここにいるみんなの王様。だから――」

「私達の敵、なの?」


 ミーシャはまた泣きそうになっていた。とても辛い顔だ。でもちゃんと答えなきゃいけないと思った。

 静かに、ちょっと困り顔で頷く。するとミーシャはとても落ち込んだように顔を俯かせた。


「ごめんね。お姉ちゃんなのにわがままを言って」


 ミーシャは何も答えない。まるで何かを迷っているかのような顔をしている。

 このままじゃあいけない。直感的にそう感じた。だからなのか、私はついこんなことを言っちゃったんだ。


「そうだ。ミーシャ、私達と一緒に暮らそうよ」


 その言葉を聞いたみんなは、瞬間的に「えー!」と声を上げた。ホントに驚いているかのような顔をしてざわついている。

 さすがにちょっと無理だったかなって思っていると、セバスチャンさんが手を叩いてみんなを落ち着かせていた。


「はいはい、みなさん落ち着いてください」

「しかしセバスチャンよぉー、敵だった奴をいきなり仲間にするのは」

「わかっていますよ、ゴブタさん。だから私は彼女を人質として引き入れることを考えていますよ」


 人質。確かあれって人さらいとかが身代金とかそういうのを要求する時に使う手段だったような。

 あ、そっか。一応戦って勝ったからミーシャを捕虜として扱うことができるんだ。そうすれば襲ってきたレッドボーグの情報とか引き出せるし、それに仲間としては無理でも人質なら城に置いておけるってことなんだね。


「なるほどな。それをすればこっちにもメリットがある」

「そういうことです。それに、マオ様の妹さんなら無下にはできませんしね」


 みんなが盛り上がる中、私はミーシャを見た。ミーシャは戸惑っていたけど、私は思いっきり抱き締めてあげる。


「お姉ちゃん……!」

「しばらくは一緒だよ、ミーシャ」


 ミーシャはちょっとだけ嬉しそうな顔をしていた。そんな顔を見ていると私の嬉しさは膨らんでいく。これでホントにめでたしめでたしだ。


「さて、そろそろ帰りましょうか」

「はーい」


 みんなと一緒に城へと引き上げていく。明日からは町を直さなくちゃ。


◆◆勇者ジュリア◆◆


「ふふっ、魔王め。私のことをすっかり忘れているな」


 レッドボーグの国王軍は全員逃げ帰っちゃったけど、私は違う!

 この勇者ジュリアは見事にミーシャさんを救出して帰るのだ!


「今は満身創痍の魔王軍。ならば忍び込んでもどうにかなるわ」

「何してんだなぁ、お前」


 差し込んでくる影。振り返るとそこには、三メートルは超えるクマがいた。その恐ろしい巨体はゆっくりと私に近づいてくる。


「キャアァァ!」


 私は慌てて逃げ出す。

 くー、見つかった! これでは作戦が台無しだ。一旦出直して体勢を立て直さなきゃ!


「全く、最後の最後でこんな役なのね」

「頑張りましょう、ダーカーさん!」


 走っていると前方に黒い男とスライムが現れた。

ふん、見るからにザコだ。このまま斬り捨ててくれる!


「え?」


 剣を抜こうした時だった。いつの間にか私は空を舞っていた。受け身を取ろうとするけど、動くことができない。そのまま地面に落ちて、痺れる腕を動かそうとしていた。


「あら、思った以上に弱かったわね」

「拍子抜けですね」

「まあいいどぉー。こいつも連れていくぞぉー」


 ぬぉぉ! なんということだ!

 この私が、魔王なんかに捕まるとは!

 痺れて口も動かないし、すっごくまずい!


「人質は多い方がいいんだなぁ」

「しかし、勇者が人質ねぇ。たぶん世間的には笑われる対象でしょうね」

「情けないって言われるんですね。かわいそうです」


 離せぇー! 連れていくなぁー!

 だが、どんなに叫んでも私の声は届かない。だって口が痺れて動かないんだもん。

 こうして私は魔王城へと連れていかれたのだった。

 チクショウォォォォォ!


めでたしめでたし。

なんか勇者も人質になったけど、気にしないー(笑)


次回は本日の午後8時頃に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ