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ゆうしゃvs切り裂きカアたん

 私はみんなを信じて座る。でもただ座っているだけじゃあダメだと思うんだ。

 それに暇だし。

 何かできることがあればいいんだけどなぁー


「マオちゃーん」

「きゃあ」


 考えているとウィンディさんが後ろから抱きついてきた。なんだかいつもと違ってとっても楽しそうにしていたけど、今はそんなことを気にしている暇はない。


「どうしたんですか?」

「ふふ、愛しのマオちゃんのためにひと肌脱ごうと思ってね」

「え? ホントですか!」

「ええ。その証拠に向こうの情報を持ってきてあげたわ」


 そういって近くにあったテーブルに大きな紙を広げる。そこにはたくさんの似顔絵があって細かくコメントが書かれていた。


「まず、今回やってきた勇者はこの子よ」


 指を差された場所に視線を移す。そこには結構かわいい顔をした女の子の似顔絵があった。


「この子の名前はジュリア。勇者の中ではもっとも正義感に溢れている女の子っていえばいいかしら。まだ勇者なり立てで、世界のことをよくわかっていないって感じね」

「へぇー、私より一つ上なんだ。でも顔を見た感じだと私より幼そうだなぁー」

「油断しちゃダメよ。この子は世界に三人しかいない勇者の一人なんだから。しかもヴァンと違う意味で融通が利かないし」


 ヴァンさんはなんだかんだいってホントに危ない人だけにしか敵意を向けないしなぁー。まあ、だからいろいろな意味で危ないウィンディさんを追いかけていたんだけど。


「あれ?」


 眺めているとなんだか見たことがある女の子がいた。えっと、見間違いじゃなかったらたぶんこれはミーシャだ。


「え?」


 なんでミーシャが国王軍の中にいるんだろう? 確かにあの子、剣術だけはすごかったんだけど。


「どうしたの?」

「う、ううん。なんでもない」


 まさか、ミーシャが敵なの? もしそうだとしたらとーってもやりにくいんだけど。

 できれば戦いたくない。それにケガだってさせたくないし。


「マオちゃん、一応水晶を出すわよ。現場の状況を確認したいでしょ?」

「あ、はい。お願いします」


 えっと、そういえばこっちの布陣ってどうなっているんだろう? セバスチャンさんがいれば教えてくれそうだけど、戦いのほうに行っちゃったし。


「じゃあ、今国王軍と激突している現場を映すわね」


 ウィンディさんが念じ始める。私はちょっと不安を覚えながら水晶を見つめていた。

 するとすぐに水晶に映像が浮かび上がる。そこには血まみれになって倒れている国王軍の兵隊さん達の姿があった。


「うわぁ……」

「あら、圧倒的に私達が優勢じゃない」


 どんな戦いが起きたかわからないけど、こんなにも悲惨な映像を見るなんて。やっぱこんなの見たくないなぁー。でもやらなきゃ私やみんなが殺されちゃうし。


「さて、誰が戦っているのでしょうね」


 水晶の視点が映っていく。すると倒れている兵隊さん達の真ん中で立っている二つの姿があった。


『ゲッゲッゲッ、てめぇなかなかやるな』

『ふん。あなたの腕も相当よ』


 そこには恐ろしきカッパのカアたんと、さっき似顔絵で見た勇者のジュリアちゃんがいた。赤い髪をツインテールにしているせいかとーってもかわいい。着ている服は動きやすいように軽装の鎧とかだったけど、それでもかわいかった。

 そんなジュリアちゃんの手には、剣ではなく包丁がある。カアたんも包丁を手にして何かをやっているようだけど、何をしているんだろ?


『あ、ああ、もう食べたくない……』

『臭いだって、嗅ぎたくは――グボォッ』

「なんだか兵隊さん達、すごく弱っているけど」

「どうやら二人は料理対決をしているみたいね。おそらく見た限りだと、どっちがより不味い料理を作れるかってところかしら?」


 何その対決?

 え? 今ってそんな戦いをしているんだっけ?


「うわ、あれは世界一不味い魚と言われるデメーキンじゃない。あんなのを料理するなんて正気じゃないわ」


 デメーキンって何? 聞いたことがないんだけど。


「何やっているのよ、このカッパ! デメーキンとチョコを合わせたら最悪の味になるじゃない! ああ、ちょっと勇者。デメーキンの出汁にコンソメはダメよ!」


 あれ、ウィンディさんがすごく盛り上がってる。どれだけデメーキンってヤバいんだろう?


『できた!』

『こっちもよ!』


 互いに高々に声をかげる。でも誰も食べようとしない。というかみんな血を吐いて倒れちゃっているから、食べるどころか立ち上がる気力もなさそう。


『おい、どうする?』

『そうね。こうなったらお互いに食べて決着でもつける? どっちがより不味いのかを』

『いいぜ、受けてたとう』


 あれ? このお料理対決ってホントにどっちが不味いのか決める戦いだったの?

 でもみんな吐血するぐらい倒れているし。食べたらタダじゃすまない気が。

 そう思っているとカアたんとジュリアちゃんは互いの料理に手を付け始めていた。少しは躊躇っていたけど、タイミングを合わせたかのように一緒にパクリと口の中へ放り込んだ。


『うぐっ!』

『むおっ!』


 二人は一斉に口を抑える。頑張って飲み込もうとしているけど、たぶんダメそう。

 そう思っていたらジュリアちゃんが一気に飲み込んだ。


『ヌボォォ!』


 対照的にカアたんは吐血する。そして全身から力が抜け、そのまま膝をついて倒れた。


「あのカッパの敗因はチョコを入れたことね。味は最悪だけど、チョコでコーティングされたデメーキンの攻撃力が下がったのでしょう」


 わからない。わからないよ、ウィンディさん。

 こんなにも置いていかれるとツッコミもできないよ。


『うぶっ、正義は勝つ……』


 こうしてよくわからないお料理対決でカアたんは善戦したけど、勇者ジュリアちゃんに負けてしまったのだった。


カアたん、お料理対決で敗走。

でもこのお料理対決、何か意味があったのかなぁ(笑)


次回は明日の午前7時頃に更新予定です。

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