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ゴブタさんとリフィルさん

 本日の夕ご飯、お湯に浸せば食べられるインスタントなラーメンのみ。

 うう、カアたんがいないとこんなにも貧相になるとは思ってもいなかったよ。

 ああ、カアたん。あなたは偉大でした。これからはちょっとだけ大切にします。


「はぁー」


 お腹が空いたよー。全然足りないよー。もっと食べたいよー。

 よーし、こうなったら厨房に忍び込んで、何か食べられるものを探してみよう。

 それじゃあ早速厨房へ――


「あら、魔王さま」

「ひゃあ!」


 リフィルさんに声をかけられてすっごい変な声を出しちゃったよ。あー、ビックリした。


「な、何? リフィルさん」

「何って、ただ声をかけただけですよ?」

「だよねー。そうだよねー。アハハ」


 うわ、すっごく怪しんでいる目をしているよ。ちょっと下手に誤魔化しちゃったから余計に怪しんでいるよ。


「魔王さま、もしかしてお夜食を食べようとしているのでは?」


 ギクっ!


「な、何を言っているんですかリフィルさん。私は魔王ですよ? そんな盗み食いみたいなことをする訳ないですよー」

「そうかしら? 前の魔王さまはお腹が空いたらとにかく忍び込んで食べていましたからね。信用なりません」


 前の魔王さまって、どれだけ信用がないんだろう……

 私が若干心配していると、リフィルさんが軽く咳ばらいをしてこんなことを口にした。


「とにかく、盗み食いはいけません。もし欲しいのなら私がお夜食を用意いたしますからね」

「はーい」


 こういわれちゃうと忍び込めないなぁー。今頼んだらそれこそばれちゃうし。

 はぁー、今日は諦めるしかないか。


「あら?」


 諦めて帰ろうとしていると、リフィルさんが何かに気づいて立ち止まった。視線を合わせてみると、中庭で晩酌をしているゴブタさんの姿がある。

 何だかとても寂しそうにお酒を飲んでいる。どうしたんだろう?


「全く、あの人は何をしているんだか」


 リフィルさんはちょっと呆れ気味に言葉を口にしていた。だけどほんのりと微笑んでいて、なんだか懐かしいものを見ているような目をしている。


「仕方ありませんね。魔王さま、すみませんが野暮用を思い出してしまいましたので、お先にお戻りください」


 そういってリフィルさんは近くにあった扉に手をかけた。もしかするとゴブタさんの晩酌に付き合う気なのかもしれない。

 そう思ったら、私はつい声をかけてしまった。


「リフィルさん」

「どうしましたか? 魔王さま」

「私も付き合うよ。人が多いほうが楽しいでしょ?」


 リフィルさんはちょっと困ったような顔をしていた。でもすぐに笑顔になってくれた。


「そうですね。一緒に行きましょう」


 私達は一人で晩酌しているゴブタさんの元へ向かった。

 一人でお酒を啜るゴブタさん。桜の木の下で満月を眺めながら飲んでいる姿はとても哀愁が漂っていて美味しそうだ。


「ゴブタ、一人で飲んで楽しいですか?」

「リフィルか。ん? そっちは?」

「こちらは魔王のマオ様です。あなたが一人で飲んでいるのがかわいそうだってことで来てくれたのですよ」


 馴染みがあるせいか、ちょっと皮肉めいた言葉を言い放つリフィルさん。それにゴブタさんは楽しそうにガハハって笑い声を上げた。


「これはこれは。とてもありがたいことだ。昼間もいたよな、魔王さま?」

「あ、気づいていたんですか?」

「ああ。セバスチャンと魔女だっけ? あいつらと一緒だっただろ?」

「は、はい。あ、そういえば試験で見せたスーパーゴブリンなんですけど、あれっていつ使えるようになったんですか?」

「ああ、あれか。あれはな、リフィルと戦っている時に使えるようになったなぁ」


 ゴブタさんがお酒をグビッと飲みながら話し始める。リフィルさんはというと、空になった器にお酒をすすいでいた。


「お前に会心の一撃を受けた時だったな。もう立ち上がれないほどの致命傷だったが、その時にたまたまリフィルの胸を触って目覚めたって感じだったな」

「あれはひどかったですよ。もう最大の屈辱でした」


 どういった状況だったんだろう?

 私が苦笑いしながらこんなことを訊ねてみる。


「その後、戦ったんですか?」

「ああ。パワーが溢れに溢れていたからな。そのままリフィルを泣かせてやったよ」

「あれはひどかったですね。その後もひどい仕打ちを受けましたし」

「ひどい仕打ち?」

「ええ、もう身体の隅々を嘗め回されましたよ。どんなにやめてって泣いて言ってもやめてくれませんでしたし」

「うわぁ……」

「あれは仕方ないだろ! 俺だった若かったんだし!」


 ジトッとした目を向けるリフィルさん。ゴブタさんはゴブタさんでとても慌てているけど、とても楽しそうだ。

 ああ、いいな。こんな楽しいなんて思ってもいなかった。


「ま、俺もいつまでも若くないしな。そのうち若い奴らに前戦を譲るだろう」

「あなたもそんなことを考えるようになったんですね」

「ああ。俺も歳だ」


 二人の晩酌。私はどこか微笑ましい光景を眺めながら、静かに微笑んだ。

 こうして夜は更けていった。


これで魔王せいかつ3日目が終了です。

次はいよいよ魔王城に勇者が攻め入ってくる話を書こうと思います。


次回の更新は午後3時頃に更新予定です。


追記

申し訳ございません。

少しプライベートでの問題が起きまして執筆ができませんでした。


本日の午後5時までには更新をいたしますので、お待ちくださいませ。

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