さいごの試験!
戻ってきたファッションリーダーとスラート君。ベアッタさんに鮭を渡して、喜んでもらう所を見つめていた。
「うーん、合格ぅー」
鮭を届けた二人は当然のように合格した。
よかったよかった。そう思っていると、ゴブタさんが二人に近づいてきた。
「すぐに最終試験を行うぞ」
二人の表情が引き締まる。少しは休ませてあげたほうがいいと思うんだけど、でも二人は文句をいうことなく進んでいく。
「何をするのかな?」
「見ていればわかりますよ」
セバスチャンさんはにこやかにしながら答えた。
むぅー、気になるなぁ。早く始まらないかな。
「よぉーし、ここで止まれー」
ゴブタさんは中庭の中央で止まる。二人も一緒に止まると、ゴブタさんはこんなことを言い始めた。
「これから最終試験を始める。内容は簡単だ。俺に一撃、ただ一撃を与えれば合格だ。どんな方法でもいい。当ててみろ」
どうやら最終試験は純粋な戦闘みたいだ。なら大丈夫なのかもしれない。二人はあのカアたんに勝ったんだし、一撃当てるぐらい平気だと思う。
「おや、なかなか厳しい条件をつけましたね」
「特にスライム君が大変かもね。あの黒い男と同じぐらいの実力があるならともかくなんだけど」
「え? そんなに大変なんですか?」
カアたんに勝った二人だよ? ゴブリンのゴブタさんに一撃を当てるなんて大丈夫なんじゃないかな。
「マオ様、中庭をよく見てください。ここにはメイド達や庭師達がいつも丁寧に整理していますから石ころ一つございません。次にここは真っ平な場所でございます。ですからカアたんのように不意を突くと言ったことはできないんですよ」
「つまりのところ、純粋な実力勝負なの。あのゴブリンさんはカッパより強いみたいだし、苦労すると思うわよ?」
え? ゴブタさんカアたんより強いの?
そこがビックリなんだけど。
「さあて、そろそろ始めるか。ルールはさっき言ったように俺に一撃を与えれば合格だ。わかったか?」
「何度も言わなくてもいいわよ。ちゃんと理解したから」
「絶対に当ててやりますからね!」
張り切る二人。ゴブタさんはどこか感心しているかのように頷いているし、たぶん印象はいいんだろうなぁ。
「それじゃあ始める、ぜ!」
ゴブタさんは突発的に最終試験を始めた。あまりにも突然だったためか、ファッションリーダーのダーカーさんの反応が遅れる。だから身構えることができずに、竹刀を脳天に受けていた。
よろめくダーカーさん。ゴブタさんはその立派な体格を蹴り、ダーカーさんを倒した。
「え?」
何が起きたかわからないスラート君。そんなスラート君にゴブタさんは容赦なく竹刀を薙いだ。途端に左へと吹っ飛ばされ、そのまま転がっていく。
「どうした? お前ら、だらしないぞ?」
強い。普通に強い。もしかしたらリフィルさんより強いかも。
「相変わらずですね。さすがリフィルと競っていただけはあります」
「互角なんですか?」
「いえ、リフィルのほうが強いですね。ただ戦闘勘は未だに現役のキャップのほうがありますので、何とも言えませんが」
なんだかすごい二人だなぁー。
「痛いわね。よくもやってくれたわね、キャップ」
「手ぇ抜いてやっているから当然か。よし来い。また叩きのめしてやるよ」
剣を抜いてダーカーさんは突撃する。懸命に剣を縦、横、って感じに振るけどゴブタさんは全て紙一重で回避していた。そして途中、余裕を見せて剣を持っている右手を受け止める。
それはもう本当に強いとしか言えない。そのくらいの余裕が感じられた。
「どうした? 余計な力が入っているぞ?」
ダーカーさんがゴブタさんを睨みつける。でもその直後にゴブタさんは腕を捻り、そしてそのまま身体を投げ飛ばした。
とっても綺麗な円を描いて地面に落ちていくダーカーさん。背中を打ちつけてとても痛そうだった。
「うわぁ、強いなぁ」
「当然ですよ、キャップですから」
このままじゃあ一撃を当てるのは厳しそう。
そう思っているとダーカーさんがまた立ち上がる。その目は闘志に溢れていて、本当に戦う男みたいに感じられた。
「ガッツだけは認めてやるぜ。だが、それだけじゃあ俺には勝てない」
「ふん、わかっているわよ。だから私が注目を集めているのじゃない」
その言葉に引っかかりを覚える。まさかと思ってゴブタさんは振り返ると、そこには飛びかかってきているスラート君の姿があった。
「おりゃあ!」
スラート君は何かを投げつける。それは砂だとわかった瞬間、ゴブタさんの目に入った。
「いいタイミングよ、スラート!」
スラート君が着地すると共に突撃するダーカーさん。確実な一撃を入れるために、スラート君も少し遅れて突撃する。
「「おおぉおぉぉおおおぉぉぉおおぉぉぉぉぉ!」」
もう勝負は決まった。そう思った瞬間だった。
突然ゴブタさんを中心に竜巻が起きる。その風のせいか、僅かに突撃スピードが緩んでしまった。
そして、その風は弾けて二人を弾き飛ばした。
「なかなかやるじゃねぇか」
そこには金色に染まったゴブタさんがいた。
って、なんで金色になっているの!?
「ほう、ちょっとだけ本気を出しましたね」
「何ですかあれ!?」
「あれは怒りによって目覚めた伝説の戦士、スーパーゴブリンでございます。あの状態のゴブタは本気で戦えばシャーネルドラゴンと同等に戦えると言われておりますよ」
すごく恐ろしいんだけど。
あれ? そういえばリフィルさんってゴブタさんと同等の強さを持っているんだよね? じゃあリフィルさんって、シャーネルドラゴンと同等に戦えるってこと!?
「さあて、やろうぜ。俺をワクワクさせてくれよ」
「そこまでだなぁ、ゴブタ」
ゴブタさんが本気を出して戦おうとした瞬間、ベアッタさんが声をかける。するとゴブタさんは途端につまらない顔をしていた。
「二人共合格だぞ。ゴブタに一撃与えらなかったけんど、本気を引き出させたからなぁ」
「んだと!? まだ試験は終わってないぞ!」
「お前の悪い癖だなぁ。それだからいつまでも魔王軍は俺達二人だけなんだなぁ」
ゴブタさんはさらにつまらない顔をしていた。そして舌打ちをしてどっかに去っていく。
「勝手にしろ」
こうして最終試験は終わりを迎えた。
なんだかすごいことになってたけど、私は敢えて触れることはしなかった。
スーパーゴブリンって何?
私にもわかりません(笑)
次回は明日の午前8時頃に更新予定です。




