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森の中のカッパさん

 ベアッタさんからいろいろと聞いたスライムさん、モグラみたいなウサギさん、そして白い髪をしたムキムキの男の人が森へと向かっていった。

 なんだかどうなるのか気になるんだけど、さすがについていっちゃう訳にはいかないし。


「あら、そんなの彼らのことが気になるの?」

「はい。でもついていっちゃいけないですし」

「なら私がどうにかしてあげるわ」


 そういってウィンディさんは何かを呟き始めた。直後に右の手のひらの上に大きな水晶が現れる。


「これでどうするんですか?」

「もー、いけずね。私を誰だと思っているのよ? 色欲の魔女。水晶さえあればお風呂なんて覗くのもちょちょいのちょいよ」


 すごく恐ろしいことを聞いたんだけど、今は何も聞かなかったことにしよう。


「じゃあ、この水晶でさっきの人達の様子をうかがうことができるんですか?」

「そうよ。魔女だからできるとーっても便利なことなの。こんなのそこらにいる執事なんかにはできないわよー」


 そんなことをウィンディさんがいうと、セバスチャンさんがとてもムッとした顔した。でもすぐに何かをし始める。

 見ているとどこから用意されたかわからない綺麗な椅子とテーブルが用意されていた。


「マオ様、こちらへお座りください」

「あ、ありがとう」


 促されて座る。するとウィンディさんがとてもつまらなそうな顔をしていた。セバスチャンさんはというと、とても勝ち誇ったかのように笑っている。


「それで、私の椅子は?」

「あなたはこちらですよ」


 用意されていたのはボロボロの段ボールを積み上げられただけの椅子だった。これはもう椅子といえるのかわからないなぁ。


「ちょっと! あんまりじゃない!」

「あなたは招かれざる客なんですよ。用意してあげただけでも感謝しなさい」


 とても不満に感じているのか、ウィンディさんはセバスチャンさんを睨んでいた。でも用意してくれたことには変わりないから、文句は言わないで座る。

 うわー、とてもガタガタしているよ。いつ潰れるかわからないなぁ。


「セバスチャンさん、ちゃんとした椅子を用意してあげてよ。さすがにかわいそうすぎるし」

「ダメです。この魔女は人の弱みに付け込みあれこれとする悪魔でもあります。ですから隙を見せてはいけません」


 意地悪と弱みって全然違う気がするんだけど。


「ふん、まあいいわ。セバスチャン、あとで覚えておきなさい」


 ああ、ウィンディさんがへそを曲げちゃったよ。セバスチャンさんはセバスチャンさんでとても勝ち誇っているし。大丈夫かな? この二人。


「さて、そろそろ彼らの様子でも見てみましょうか」


 そういってウィンディさんが念じ始めた。時間的にはたぶん、もう森に入っている頃だと思うなぁー。そういえば森って結構危ないって、前にセバスチャンさんに教えられたよ。でもどうして危ないんだろう?


「見えたわよー」


 私とセバスチャンさんは水晶に顔を覗き込む。するとそこには白い髪の男の人を先頭に歩いているパーティがあった。

 特に何かが起きている訳じゃない。むしろみんなと打ち解けあったのかとても楽しそうに会話をしているように見えた。


「何か話しているみたいだね」

「ついでだから音声も拾っちゃいましょうか。えいっ」


 ウィンディさんが念じると共に会話が聞こえてくる。一体どんなことを話しているんだろ?


『今年は青を主体にしたファッションが流行るらしいわよー』

『え? マジですか! 僕の時代じゃないですか!』

『チッ、また俺は穴倉生活か』


 あれ? この女口調ってさっきの男の人かな? でも見た限りそんな感じがするし。


『ち・な・みに、私のこのブラック、実は来年を先取っているのよ! こう見えても私はファッションリーダーで、みんなから尊敬されているの』

『すごいっす! さすがダーカーさんっす!』

『早すぎて追いつけないぜ』


 大丈夫かな、このパーティ。なんだかとっても心配になってきたんだけど。


「あら、彼らの行く手に何かいるわよ?」


 キャッキャしているパーティの先。そこには私にとってとても恐ろしい存在がいた。

 それは手に鉈を持ち、とても怪しげに笑っている。


『ケッケッケッ、こんな所にいいカモがいるじゃねぇか』


 うわっ、とんでもないタイミングでカアたんが現れたよ! ヤバい、刃物を持っているからすでに戦闘モードだ。

 このままじゃあみんなカアたんの餌食になっちゃうよ!


『あら、何かしら?』


 気づいた。早く逃げて、このままじゃあみんな夕ご飯にされちゃう!


『俺が見てきてやる。待っていろ』


 ダメぇー! ウサギさんは絶対にダメぇー!

 今日の夕ご飯のメインディッシュとして出されちゃうから行っちゃダメだよ!


『頼むわよー』

『危なかったら逃げてねー』

『おぅ、待っていろ』


 ああ、ウサギさん。あなたのことは忘れません。

 ご愁傷様です。


『ん? なんだこのカッパは?』

『いい食材、見っけー!』


 ウサギさんは悲鳴を上げた。でも逃げ切ることができず、そのままカアたんにやられる。

 その光景はとても壮絶なものだった。


「セバスチャン」

「今日はウサギ肉が出ますね」

「食べたくないよー」


 みんな、テンションが下がっていたのは言うまでもない。


ヒャッハー! 今日の晩飯はウサギ肉のソテーだぜ!

カアたん、怖いよぉー(笑)


次回は本日の午後8時頃に更新予定です。

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