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事件かいけつ!

「もう、わかりましたか? マオ様」

「はい……、みんなごめんなさい」


 シィちゃんや村の人達にめいっぱい怒られた私は、正座をさせられていました。

 うう、足が痛いよぉー。なんで私だけこんなことばっかなの?

 全てはセバスチャンさんが悪いのに。私、被害者だよ?


「おい、セバスチャン。危うく俺も死にかけたんだか……」

「これはこれは、失礼しました。ボロボロの勇者様」

「貴様、とても謝っているように見えないんだが気のせいか?」


 セバスチャンさんがヴァンさんを茶化しながら私に近づいてくる。そして落ち込んでいる私の頭に手を置いて、こんなことを言った。


「何にしてもマオ様のおかげで悪い変態魔女を捕まえることができましたよ。ありがとうございます」


 むぅー、そんなことされても全然許せないんだから。

 私が不満だらけで睨みつけていると、セバスチャンさんは朗らかな笑顔を浮かべた。ふと、何気なく捕まった魔女さんに目を向ける。魔女さんはさっきの攻撃で気を失っているのか、ずっと目を回しているようだ。


「さて、ウィンディにはいろいろと聞かないといけないことがありますね。でも簡単には口を割ってくれないでしょう」

「そうだな。こいつの口を割らせるのはとんでもない苦労をするだろう」

「ウィンディが満足すれば問題はないでしょうが。そんなものはありませんし」

「ねぇ、セバスチャンさん」

「なんでしょう、マオ様?」

「その人、危ないんだよね? だったら魔王城に連れていっちゃうのはどうかな?」


 私がそんな提案をするとセバスチャンさんが露骨に嫌な顔をした。


「正気ですか? マオ様?」


 訊ねてくるセバスチャンさん。そりゃ私だってこんな人を魔王城に住まわせるのはどうかと思うけど、このまま放ったらかしにしていたら危ないし。


「うん。この人をこのままにしてたらいけないと思う。それに目の届く場所に置いておけばいろいろと対応できると思うの」

「しかしですね、この方はとんでもない変態ですよ? いつマオ様に毒牙が向くかわかりません」

「大丈夫だよ。お城にはリフィルさんやシィちゃん、あとカアたんにセバスチャンさんもいるんだから。みんなで対応すれば平気だよ」


 とても険しい顔をするセバスチャンさん。やっぱりいけないのかなぁ?

 そんなことを思っているとヴァンさんがセバスチャンさんの肩を叩いた。


「セバスチャン、お前の負けだ」

「負けって。どこをどう負けてしまったのでしょうかね?」

「まず魔王の提案は実に合理的だ。それにこいつは放っておくことはできない。俺一人じゃあまず対応できないうえに、何か起きたら全て後手後手た。それに、魔王の提案を聞けばウィンディは喜んで誘拐した魔物の居場所を教えてくれるんじゃないか?」


 セバスチャンさんは考える。とても険しい顔をしていて、どこか納得していないように見えた。


「オーッホッホッホッ。話は聞かせてもらったわよ!」


 響き渡る高笑い。建物の屋根に目を向けると、そこにはさっきまで目を回していた魔女さんの姿があった。

 縄をどうやって外したのかわからないけど、とても嬉しそうな顔をして私達を見下ろしている。


「なかなかいい提案じゃない。いいわよ、その条件を呑んであげる」

「ウィンディ、まだそうなった訳では――」

「あなたには聞いてないわ、セバスチャン。私はそこのかわいい魔王さまに聞いているのよ? 魔王さま、あなたの素敵な提案に乗ってあげる。でも一つ条件があるわ」

「な、何ですか?」

「一週間に一度、私と一緒にお風呂に入ること。もちろん、二人っきりでね」


 うっ、なんかわからないけど背筋に悪寒が。

 でも呑まないと誘拐された魔物達が返ってこないし。


「いけません、マオ様! そんな条件を呑んでは――」

「わかりました。その条件を承諾します」

「マオ様!」

「誘拐された魔物達を取り戻すためだよ。それに、危なくなったら天使さんが助けてくれるから」


 力いっぱい笑ってセバスチャンさんに顔を向ける。セバスチャンさんはどこかバツの悪そうな顔をして私から目を逸らしてしまった。

 怖いけど、でも呑まなきゃ取り戻せない。だから仕方ないんだ。


「決まりね」


 ニッコリと笑って魔女さんの姿が消えた。と思ったら一瞬にして私の目の前に現れる。そして右手を出して握手を求めてきた。


「これからよろしくね、魔王さま」

「う、うん。よろしく魔女さん」


 こうして私は魔女さんが変なことをしないために魔王城へと連れて帰ることになりました。

 魔女さん、いやウィンディさんはどこか喜んだように私に抱きついてきたけど、すぐにセバスチャンさんに引き離されていた。目をバチバチさせている二人を見て、どこか微笑ましく思っちゃった。


「誘拐した魔物達は近くの泉にある小屋にいるわ。みんな元気よ」


 ウィンディさんはそんなことをスライスさんに言い残して馬車へと乗り込む。セバスチャンさんはとーっても不満げにしていたけど、ひとまず事件は無事に終わった。

 私達はトトカ村のみなさんと別れて魔王城へと戻る。そしてヌルヌルになった身体とボロボロになったお気に入りのお洋服のまま帰ったことによってリフィルさんに驚かれるのだった。

 こうして忙しかった二日目の魔王生活が終わる。

 楽しかったような、大変だったような。そんなことを思いながらぐっすりと寝たのだった。


こうして魔物誘拐事件は解決しました。

よかったよかった。


さて、次は魔王せいかつ3日目に突入!

次回の更新は本日の午後5時頃を予定しています。

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